
技術書は原著で読もう。ITエンジニアが洋書多読で最新技術をキャッチアップするメリット
Garbage In, Garbage Out という言葉がある。
コンピューターサイエンスの格言で、「入力が粗悪なら出力も粗悪だ」という意味だ。データ品質の話として使われることが多いが、これは翻訳書にも当てはまる。
翻訳書を読むとき、私たちが受け取っているのは著者の言葉ではない。翻訳者が解釈した著者の言葉だ。翻訳者が技術を正確に理解していれば問題ない。でも技術書の翻訳は難しい。概念の理解と英語力と日本語力を同時に高いレベルで持つ翻訳者は、多くない。
結果として、翻訳書には「読めるが、なぜかわかりにくい」箇所が生まれる。
たとえば idempotent(冪等性)という概念がある。APIやデータベース操作でよく出てくる。英語では An operation is idempotent if applying it multiple times produces the same result as applying it once. という定義が標準的だ。シンプルで明快だ。
翻訳書では「冪等性」と訳されることが多い。数学的な正確さはあるが、「冪等」という漢字を初めて見たエンジニアには直感的に意味が入ってこない。英語の idempotent のほうが、むしろ「idem(同じ)+ potent(力)」という語源から意味が滲み出てくる。
翻訳が正確でも、言語の特性上、原著にある「意味の手触り」は失われる。
もう一つ、翻訳書には構造的な問題がある。鮮度だ。
技術書が英語で出版されてから日本語版が出るまで、平均して1〜2年かかる。クラウドアーキテクチャ、機械学習、セキュリティ——技術の変化が速い領域では、翻訳書が出たころには内容が一部陳腐化していることがある。
原著を英語で読む習慣を持っているエンジニアは、この時差から解放される。新しい本が出た週に読み始めることができる。技術の「今」にアクセスできる。
「でも、英語で技術書を読むのは難しい」という声が聞こえる。
それは本当のことだが、想像しているほど難しくはない。技術書の英語は文学小説より読みやすい。理由が3つある。
まず、構造が予測できる。技術書はProblem→Solution→Implementationという型で書かれることが多い。次に何が来るか予測しながら読めるため、知らない単語が出てきても文脈で補いやすい。
次に、図とコードが英語の負荷を下げてくれる。コードは言語を問わない。図を見て概念を掴めば、英語テキストの理解が助けられる。
そして、技術語彙は日本語でも英語でもほぼ同じだ。container、orchestration、microservices——これらはカタカナのまま技術英語として使われている。語彙の「知らなさ」は、思ったより少ない。
この記事はこんな人向け
技術書を翻訳版で読んでいるが、原著を読んでみたいと思っている
英語で技術書を読もうとして挫折した経験がある
最新技術のキャッチアップが翻訳書のペースでは間に合わないと感じている
技術英語を読む速度を上げたい