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Photo byfmw894

英語環境で働くITエンジニアの1日と、日々のインプット術

    6:47

    アラームを止めて、スマートフォンを手に取る。

    最初に開くのはSlackだ。日本時間の深夜から朝にかけて、アメリカのチームからメッセージが積み上がっている。ざっと流し見する。blocking のついたメッセージがないかだけ確認する。なければ閉じる。

    次にGitHubの通知を見る。夜中にマージされたPRが2本。コメントが3件。重要そうなものだけ開いて、残りは後回しにする。

    全部で3分もかかっていない。「英語を読んだ」という意識はほとんどない。ただ情報を確認した、という感覚だ。

    これが当たり前になるまで、2年かかった。

    7:15

    電車に乗る。Kindleを開く。

    今読んでいるのは The Innovators(Walter Isaacson)だ。コンピューターの歴史を人物伝として描いた本で、昨日はエイダ・ラブレスの章を読んでいた。今日の続きを開く。

    通勤中に読む本は、仕事と関係あってもなくてもいい、と決めている。「役に立つかどうか」で選ぶと、疲れているときに読む気がなくなる。面白いから読む——それだけでいい。

    今朝の電車は25分。だいたい15〜20ページ進む。

    9:04

    席に着く。コーヒーを淹れながら、メールとSlackを本格的に読む。

    海外チームとのやりとりは英語、国内チームとのやりとりは日本語、という二重構造の中で1日が始まる。英語と日本語を切り替えながら読むことに、特別な負荷は感じなくなった。でも最初の1年は、英語のメールを読むたびに少しだけ身構えていた。

    今日は設計レビューのフィードバックが来ていた。The proposed approach seems reasonable, but I'm concerned about the latency implications under high load. Could we discuss the trade-offs in tomorrow's sync?

    「latency implications under high load」——この表現をそのまま議論で使えるかどうか、頭の片隅でメモする。

    10:30

    週次のアーキテクチャレビュー会議。参加者はアメリカ2人、インド1人、日本2人。全員英語。

    会議が終わったあと、議事録に目を通す。自分が発言した内容が、ネイティブの書いた英語でどう要約されているかを確認するのが習慣になっている。自分の英語が「こういう意味として受け取られた」というフィードバックループだ。

    ずれていることが、たまにある。そのずれが、次に直す箇所を教えてくれる。

    12:15

    昼休み。今日は外に出た。

    コンビニのイートインで、スマートフォンのブラウザを開く。Martin Fowler のブログを読む。今日の記事は StranglerFigApplication のパターン解説で、午前の会議でちょうど話題に出たアーキテクチャだった。

    会議中に出てきた英語の表現が、別の文脈で出てきたとき——そのときに語彙が定着する。英語学習における「偶然の再会」は、意図して作れる。

    13:00〜17:30

    実装と、英語ドキュメントの往復。

    今日はAWSのドキュメントを何度か開いた。Lambda の同時実行数の制御に関するページで、reserved concurrency と provisioned concurrency の違いを読んだ。知っていた概念だが、英語の定義を改めて読むと「あの議論はこういう意味だったのか」という発見があった。

    英語の公式ドキュメントを辞書代わりにするのと、英語の公式ドキュメントを「読むもの」として扱うのは、少し違う。前者は答えを探している。後者は文脈を理解しようとしている。この違いが、技術英語を読む速度の差になっていく。

    19:45

    帰りの電車。

    行きより疲れているので、技術書は読まない。続きの The Innovators を開こうとして、今日はそんな気分でもないと思い、Project Hail Mary(Andy Weir)に切り替えた。

    読みたいものを読む。それだけだ。

    22:00

    風呂から出て、少しだけ本を読む。今日は15分くらいで眠くなった。

    Kindleを閉じる前に、今日読んだページ数をメモする。Notionに作った「多読ログ」に一行だけ書く。タイトル、ページ数、一言感想。今日の一言は「Ada Lovelace の章が予想より面白かった」だった。

    英語を勉強した記録ではない。本を読んだ記録だ。

    この1日に、英語の「勉強」はどこにもない。

    でも英語に触れた時間は、合計すれば2時間を超えている。朝の通勤、昼休みのブログ、午後のドキュメント、夜の読書——それぞれは短いが、毎日積み重なると大きな量になる。

    英語力は、学習時間ではなく接触時間で決まる。そう実感している。

    この記事はこんな人向け

    • 英語環境のIT仕事を始めた、あるいはこれから始める

    • 英語の「勉強」と仕事を両立させようとして疲弊している

    • 日々のインプットをどう設計すればいいかわからない

    • 英語に毎日触れている人が、実際どう動いているのかを知りたい

     
     

    Davide

     
     
    国内外で10年超のキャリアを持つITエンジニア有志による読書ユニット。全員が多読を通じTOEIC 950超や駐在を経験。「IT×教養」を軸に、技術書からノンフィクションまで、各メンバーが専門視点で厳選した洋書をレビューします。エンジニアが英語を武器にするための知見を共同発信中。

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