英語習得における「感嘆文」の有用性 & 中学学習指導要領からの削除による弊害
中学英語の学習指導要領から、感嘆文が消えた時期がある。very を使えば、用は足りるという発想だったらしい。
中学段階で what と how の使い方を体得するのに、感嘆文の学習は大いに役立っていたのだが。
その結果、大学入試の英語において、what と how の使い分けが弱い受験生が多いことに気づいた大学側は、弁別力の高い問題、つまり合否を分ける問題として、what と how の使い分けや、感嘆文そのものを問う出題をするようになった。
2021年からの現行学習指導要領では、「感嘆文のうち基本的なもの」が復活した。
しかし、授業コマ数が変わらないため、直近の学力調査が示すように英語学力は低下し、習得には至っていないという現実がある。
文部科学省の過失は、すべて、学習者に降りかかる。
「用は足りる(意味は伝わる)」という利便性やコミュニケーション重視の観点から文法項目を削った結果、英語の核心にある構造的・語彙的な感覚(what=名詞を修飾/how=形容詞・副詞を修飾)を定着させる絶好の機会が奪われてしまったという構造は、教育現場や指導者が直面してきた大きな課題といえる。
学習指導要領の改定がもたらした影響と、大学入試における揺り戻しについて、見てみよう。
1.what と how の本質的な識別力を養う教材だった
感嘆文は単なる感情表現のバリエーションにとどまらず、英語における修飾関係の基本原理を体得するための非常に優れた構文。
What a [形容詞] [名詞] [主語] [動詞]!
→ what は「名詞のまとまり」にかかるため、名詞を伴う。
What a beautiful song it is!
How [形容詞・副詞] [主語] [動詞]!
→ how は「状態・程度」にかかるため、形容詞や副詞を直接修飾する。
How beautiful this song is!
これを中学段階で体得しておくことで、後に学ぶ「感嘆文」以外の文法構文(関係代名詞・関係副詞の選択、間接疑問文における what と how の使い分け、so... that と such... that の識別など)にもスムーズに応用が利いていた。
2.「実用性」の名のもとに削られた文法と現場の歪み
「very を使えば通じるから不要」という発想は、表現の多様性や文法理解の深さを軽視した形式的な「効率化」の側面が否めない。
しかし、英語の論理構造を正しく把握するためには、語形変化や修飾関係のルールを身体化するプロセスが不可欠。
基本段階でそのトレーニングを省略してしまった結果、高校進学後に文法的な「理屈」が噛み合わなくなり、曖昧な感覚のまま英語を読んだり書いたりする受験生が増加することになった。
3.入試での「弁別力」としての復活と受験生の負担
大学入試を作る側(出題者)は、受験生がどの文法概念でつまずきやすいかを客観的なデータから見抜く。
指導要領から外れた、あるいは扱いが軽くなった項目ほど
「高校でしっかり補強できているか」
「感覚頼みではなく構造を理解しているか」
を測定するための格好の題材(=差がつく問題)になる。
結果として、中学で自然に身につけておくべきだった文法事項を、高校受験や大学受験の段階で慌てて「例外」や「発展事項」のように捉え直して暗記し直さなければならず、その負担がすべて学習者である生徒に跳ね返るという悪循環が生まれた。
制度変更や指導要領の揺れによって一番の打撃を受けるのは、常にその世代の学生たちである。
言葉の「使い分けの感覚」を単なる暗記ではなく、文法構造の美しさや合理性とともに教えることの大切さを改めて痛感させられる事例と言える。