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医療・介護の経営悪化。福祉の理念が邪魔をしている。


    医療や介護の経営が厳しくなっている。

    物価高、人件費の上昇、人材不足、利用者の減少。さまざまな要因が重なり、事業の継続そのものが難しくなっている施設も少なくない。

    実際、東京商工リサーチによると、2025年の介護事業者の倒産は176件、休廃業・解散は653件。いずれも厳しい状況が続いている。

    もちろん、経営悪化の原因を一つに絞ることはできない。

    しかし、私は少し違った角度から考えてみたい。

    もしかすると、福祉の理念そのものが経営判断の邪魔をしていることはないだろうか。

    福祉だから利益を求めてはいけない?

    医療や介護には、他の業界とは異なる価値観がある。

    困っている人を助ける。 誰も取り残さない。 利用者の尊厳を守る。 必要な支援を提供する。

    どれも大切な理念だと思う。

    ただ、こうした理念が強くなりすぎると、経営上の判断にブレーキをかけることがある。

    例えば、採算が合わないサービスをいつまでも続ける。 人員配置に無理があっても、利用者のためにと受け入れを続ける。 職員の負担が増えても、現場の努力で何とかしようとする。 必要な設備投資を後回しにする。

    こうした判断の根底には、福祉としての正しさがあるのかもしれない。

    しかし、それを続けた結果、事業所そのものがなくなってしまったらどうだろう。

    利用者を守るために続けてきたサービスが、利用者の居場所を奪うことにもなりかねない。

    善意だけでは経営できない

    一般企業であれば、利益が出なければ事業を見直す。

    商品が売れなければ価格や販売方法を考えるし、採算が合わなければ撤退も検討する。

    一方、医療や介護では、そう簡単に割り切れない部分がある。

    地域に必要だから。 長年利用してくれているから。 困っている人がいるから。

    こうした理由で、採算が厳しいことを承知で事業を続けることもあるだろう。

    もちろん、それ自体を否定するつもりはない。

    ただし、善意で始めたことを善意だけで維持することはできない。

    職員の生活もある。 建物や設備の維持費もある。 教育や研修にも費用がかかる。

    福祉の理念を守るためにも、お金の計算は必要なのだ。

    経営と現場を切り離してはいけない

    もう一つ気になるのは、経営と現場の距離である。

    経営側は数字を見ている。 現場は利用者を見ている。

    本来はどちらも必要なのに、お互いの視点が共有されていないことがある。

    経営側は現場の負担を知らず、現場は事業所の収支を知らない。

    その結果、現場は経営方針に不満を持ち、経営側は現場のコスト意識を問題視する。

    これでは同じ方向を向くことは難しい。

    現場にも経営感覚が必要だし、経営側にも福祉の現場を理解する姿勢が必要だと思う。

    例えば、毎日使っている設備の維持費はいくらなのか。 一人の利用者を受け入れるために、どれだけの人件費がかかっているのか。 そのサービスは本当に利用者の生活を良くしているのか。

    こうしたことを現場も知る必要がある。

    理念を守るために、利益を出す

    私は、医療や介護が利益を追求すること自体に問題があるとは思わない。

    むしろ、適切な利益を確保できなければ、良いサービスを継続することは難しい。

    大切なのは、利益を出すことを目的にするのではなく、利益を出した先に何を実現するのかを明確にすることだと思う。

    職員の待遇を改善する。 設備を新しくする。 新しいサービスを始める。 地域で必要とされる事業を継続する。

    利益は、こうした取り組みを支えるための原資になる。

    福祉の理念と経営感覚は、決して相反するものではない。

    福祉だから利益を求めないのではなく、福祉だからこそ利益を確保しなければならない。

    善意を消耗品にしてしまう経営から、善意が長く続く仕組みを作る経営へ。

    そろそろ、そんな転換が必要なのではないだろうか。


     
     
    理学療法士、ケアマネジャー、FP2級を持っています。 身体・介護・お金の視点から、これからの暮らしを考える。介護が始まる前から、その先の住まいや家族のことまで。医療・介護の現場で感じたことをもとに、人生の選択肢を広げるヒントを発信します。

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