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客観的に見てピラティスは長州2:50のセクシーコマンドーだった【ギャグエッセイ】


     自分を客観視することは、社会を生き抜く上で非常に大事な視点である。

     だから私も自らを顧みて考えるのである。太った。昔より。と言っても私はあまり体重が大きく増減するタイプではないので、年に1キロくらいの健康で文化的な最低限度のペースで太っている。このままでは100歳になった時に何キロになってるんだろう? 100キロか? 私は計算が苦手である。

     加えて生来の怠惰によって、見事なまでの運動不足。このままでは、歳をとった時にきっと人様に介護で迷惑をかけてしまう。周囲を顧みることができる大人な私は、ついに一念発起した。

     ピラティス。元はリハビリが起源という、インナーマッスルを鍛えることができる女性に人気のエクササイズ。

     私は以前からピラティスに興味があった。何でも、ピラティスは姿勢の矯正や身体の歪みに効くらしい。身体の歪みは心の歪みだ。幼少期から歪んだ価値観で世界を見てきた自負がある私は、身体も心も歪みしかない自信がある。うん、やるしかない。私は重い腰を上げ、とあるピラティススタジオに入会した。

     レッスン当日。私はドキドキしながらスタジオの戸を開いた。初めて入るスタジオには「リフォーマー」と呼ばれる機材がズラッと並んでいる。そして壁一面の大きな鏡に大きなモニター。慣れた様子で着替えを済ませ、リフォーマーの上に居並ぶお姉様たち。

     私はぶっちゃけ、その時点で思いっきり面食らってしまった。

     私はこれまで、ジムだのヨガだの、こういった類の経験は一度もしたことがない。だからこの歳にしてこういう施設を見るのも初体験。女性専用スタジオだから、そこにいるのはピラティス猛者のお姉様だらけ。私は情けないことに、足が竦んだ。どうしようどうしよう、我輩ここに入るんですか……?

     しかしそうも言っていられない。私も今日からそんなピラティス猛者のお姉様の一員になるのだから。さっき見たベテラン猛者たちだって、みんなはじめははじめてだったんだ。そうやって心の中の進次郎にエールを送られながら、私は更衣スペースへと向かった。

     ピラティス用のウェアは、いわゆる姿勢矯正効果があり、かなりキツキツである。慣れない更衣室の中で、慣れた様子の猛者たちに囲まれながら、慣れないウェアに着替えるだけで、私はドキドキが止まらなかった。今からこんなんで大丈夫だろうか。落ち着け自分、冷静になれ。そうだ、そんな時こそ客観視だ。ドキドキしているのは意識が自分の中に向きすぎているのだ。そうだ、自分を客観的に見るんだ。今の私を客観的に見ると……?

     ──うん、モジモジくんだな。これはどこからどう見てもモジモジくんだ。

     全身真っ黒ピチピチパツパツウェアに着替えた私は、見事にモジモジくんに変身した。もはやさっきまで颯爽とスカートを履いて街を闊歩していた私はどこにもいない。完全無欠のモジモジくんとなって生まれ変わったのだ。

     モジモジくん、意を決して先ほど覗いたスタジオに向かう。そこにはもうすでに、準備万端スタンバイ完了のピラティス猛者のお姉様方。その自信満々な佇まいに、早速気押される私。こんな中でモジモジくんがちゃんとレッスンできるんだろうか……?

     いや、慌てるな、そんな時こそ冷静に、客観的にだ。いくらピラティス猛者のお姉様たちだって同じ人間。落ち着いて、じっくりお姉様たちを観察してみよう。

     ──うん、長州2:50だな。

     周囲をよく見てみると、私のようなド素人丸出しのモジモジファッションは少数派。ベテラン猛者と思われるお姉様方を見ると、上半身は長州小力、下半身はモジモジくんもとい江頭2:50の、要は長州2:50スタイルの方が多いようだ。しかも意外に黒は少ない。薄紫や薄ピンク、淡いベージュなどの、いわゆるくすみカラーがお姉様方に大人気。つまりは「くすみ長州2:50」スタイルが、ベテラン猛者たちの定番のようだ。

     なぁんだ、よく見たらただのくすみ長州2:50じゃないか。そんなお茶目なファッションしちゃうなんて、お姉様たち結構可愛いとこあるじゃん。

     何よりくすみ2:50のお姉様方、揃いも揃ってセクシーである。衣装もさることながら、ピンと伸びた背筋にプリっとしたケツ。きっとこれがピラティスの効果なのだ。ピラティスすごい。モジモジくん感動。

     そうこうしている間にいよいよレッスンの時間が始まった。リフォーマーと呼ばれる台に乗り、指示された動きを繰り返す。私は初めてなのでまったくついていけない。えっ待ってくれ、呼吸が何だって? 吸うの? 吐くの? えっどっちで足下ろすんだっけ???

     再び三たび、私はパニクった。そもそもなんだ、あの動き。リフォーマーの上に寝転がって腕をぴょこぴょこ、箱の上で四つん這いになって足をフリフリ。そしてこの人たち、よく分からないことを何でみんなで一斉にやってるんだろう? いい歳の大人たちが、普通に考えておかしくないか? おかしくない? 私の頭がおかしいのか???

     私はパニクった。しかしいつまでもパニクっていても仕方がない。パニックになっているということは、今の状況を客観視できていないということだ。そうだ、そんな時こそ客観視。落ち着け、冷静になれ。今のこの状況を冷静に客観視すると──?

     ……うん、セクシーコマンドーだわ。これこそ伝説のセクシーコマンドーだわ。多分。

     冷静になって見てみてほしい。このスタジオ内、プリケツセクシーなくすみ長州2:50お姉様方が、いっせいによくわからない動きを繰り返している姿。これはもう、令和に蘇ったセクシーコマンドー以外の何なのか。セクシーコマンドーが分からない方はセクシーコマンドーで検索してほしい。そう心の中の進次郎が言っている。

     よくわからない動きで相手の隙を作るセクシーコマンドー。いっせいに動くプリケツセクシーくすみ長州2:50お姉様たち。それを見ながらモジモジしているモジモジくん。その間にも次々と繰り出されるセクシーコマンドー。ついていけないモジモジくんを尻目に、セクシーメイツは淡々と己のプリケツを鍛え上げていく。

     ……こうして私は50分のレッスンを終えた。疲れた。それは動きに疲れたというか、この状況に疲れてしまった。何せ世界観が大渋滞だ。冷静に見れば見るほど、セクシーコマンドーな長州2:50は、私にとっては別世界の住人だった。

     残念だが、私はピラティススタジオ会員を退会することにした。さらば入会金。こんにちは違約金。節約節制・質実剛健を旨とする私には痛い出費だったが、私はどうしてもこのプリケツセクシーくすみ長州2:50お姉様方とセクシーコマンドー部を続けられる自信がなかった。私はマサルさんよりジャガーさん派なのだ。

     退会する意思をプリケツセクシースタッフさんに伝えると、申し訳なそうに理由を聞かれた。私は素直に「プリケツセクシーくすみ長州2:50お姉様方とセクシーコマンドー部を続ける自信がないです」と言うわけにもいかず、こう言った。

    「普通に酔ったからです」

     ……ピラティス、合わない人は酔うらしい。私は乗り物酔いがひどい方なので、ピラティスでもガッツリ酔ってしまった。

     ということで、皆さんもピラティスを始める際には、プリケツセクシーくすみ長州2:50お姉様方とのセクシーコマンドー活動と、乗り物酔いに気を付けてね!




    【どぶ色牧場🐑007/ピラティス】

     
     
    どぶ色牧場へようこそ🐑しょうもないエッセイを書いて毎週放牧しています🐑役立つ話や共感できる話は皆無ですが、ごゆっくりお楽しみください🐑🌱新作羊は毎週月曜朝8時ごろに放牧予定🌱その他気まぐれに脱走羊を臨時放牧したり牧場主が呟いたりします🌱

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