
リアルフィッシング詐欺|||シン小説 no.127
なんとか逮捕することができた。
WFPの幹部たちを。
発足して二十年が過ぎ、そろそろ汚職が蔓延(はびこ)っていてもいい頃合いだった。
とはいえ、准察官として赴任したときには、まさか、そこまで腐っているとは思いもしなかった。
私は、准察官の余恵。
『よけい』ではありませんから。
『あまりめぐみ』ですから。
おっと、失礼。
准察官とは、警察官に准ずる。
犯罪組織に『潜伏』するのが、潜入捜査官。
そうではない、まともだとされる組織に『派遣』されるのが、准察官。
従業員などになり、身分を隠して捜査する。
テロやトクリュウ、サイバー犯罪など、犯罪が多様化していく日々。
民事不介入とばかり言ってられない、と、試験的に運用が始まった。
申請があり認められた組織に派遣される。
本来の目的は、組織を犯罪から護ること。
「今回の派遣先な、そのうちノーベル賞とか獲っちゃうかもしれない組織だからさ」
「はい、はい、わかってますよ。
『余計なことはするな』ですよね」
WFP、ワールド・フィッシャリー・プランネーション。
世界的に、漁獲を、均す。
気候変動によって、海水温が変わり、海流も変わった。
すると、エリアごとに漁れていた魚も変わる。
もともと、漁をしていなかったエリアに移動してしまう場合もあった。
権利が整理されてなかったり、その魚に適した水揚げが可能な港や、工場などの設備が整ってなかったり。
みんなでなんとかしよう!
そして、発足。
加盟国の人口によって、出していい船の数を制限した。
船の数とは言っても、巨大な船もある。
そのあたりも、船のサイズで調整する念の入りよう。
魚がいなくなったり、漁れなくなったりしている国は多かった。
というより、ほとんど。
気候変動は、あまりにも予測不能。
世界各国にとって、朗報だったのである。
背に腹は代えられない。
この場合は『背びれ』か。
いずれにせよ、加盟国は、しっかりと増えた。
そもそも、海に国境はなかった。
加盟すれば、世界中の魚のいる海を教えてもらえる。
なにより、そこで漁ができる。
加盟しない手はない。
素晴らしい活動内容。
「ノーベル賞ものの組織って、本当でした」
「そうだろ、そうだろ。
そのまま穏便によろしくな」
「はい!」
興味が湧いたので、実際の仕組みについても知りたくなった。
(だから、それが余計なんだってば)
一瞬、上司の声が聴こえたような気がしたが、まぁ、気のせい気のせい。
AIの導入。
加盟国協力による探査技術の向上。
その探査能力は、漁をするだけではなく。
魚の『漁りすぎ』を防ぐためにも機能している……はずだった。
ところが、海に『魚がいなくなっていた』のだ。
そのデータは、隠蔽も改竄もされていなかった。
AIによる自動運用になってしまっていたシステム。
そこに、堂々と表示されていたのである。
それに、誰も気がついていなかった。
というより、誰も視ていなかった。
私は、たまたま『そのデータ』を視てしまった。
そう、たまたま。
大事なことなので、もう一回言いますね。
たまたま。
でも、ついつい、捜査してしまう。
結局、私は、また。
余計なことをしてしまいました。
裏で、幹部たちが手をまわし、乱獲していたんです。
正確には『結果として乱獲になってしまっていた』のですが。
幹部それぞれが、それぞれ勝手かつ秘密裏に動く。
世界中の海で漁ができる、万遍なく。
その組織力と技術力は、あまりに万遍なさすぎて。
「魚がいなくなったことくらい、わからなかったんですか?」
「いやぁ……」
「なんです?」
「システムからのお知らせはさ、もう、そのまま密漁してるヤツらに流してたんだよ」
「見てないってことですか?」
「見てもわからなかったしね……」
せめて、何人かでも、幹部同士が力を合わせて不正をしてくれていたら。
こんなにも早く魚がいなくならなかったかも……もしかしたら、間に合っていたかも……。
いまとなっては、なにを言ってもタラレバだ。
まさか、漁らずに、盗っていたなんて。
魚の組織なのに、腐ってるなんて。
幹部たちは、逃げられなかった。
密漁集団も、逃さなかった。
逃した魚は、大きかった。
私は、上司の説教から逃げられるだろうか。
