メインコンテンツへスキップ
見出し画像

「作家を拾う」(四百字のスケッチ)


     小さな作家を拾った。飼い方を調べ、中古のタイプライターを与えると、喜んでそこで生活し始めた。

    「作家は生涯で数百の作品を書き、それが数千年読み継がれることもあります。しかしほとんどの作家は一作も書くことなく、ある日突然行方をくらませます」
     そんな説明文を読みながら、小さな作家の生態を眺めていた。思い悩んだり、白紙のままの原稿を丸めたりしていた。

     小さな作家愛好家たちの集いに参加してみた。仲良くタイプライターの上によじ登ったり、互いの原稿を読み合ったりしていた。しかし解散して一人になると、集まる前よりずっと寂しそうにしていた。以後集いには参加していない。

    「何も書けなくてもいいから、突然いなくならないでよ」
     小さな作家は頷きながら私の爪をかりかりと噛んだりした。

     それでもやっぱり多数の小さな作家と同じように、いなくなってしまった。残された原稿には一言「完」とだけ記されていた。
    「始まってへんがな」
     以来小さな作家を見つけても、連れて帰っていない。


     
     
    ドロベ・ゴロウ。二児の父。脳脊髄液減少症。何かしら書いてます。旧名「名無しさ」「村野」「楢山孝介」「新都社モラトリアム新書」「山下チンイツ」など。「みんなのフォトギャラリー」で画像を使用していただいた記事にスキをつけることがあります。見知らぬ人からのスキだと怖がらないでください。

    あなたへのおすすめ