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守られるのは名前のある声だけ

    「ツダケンの声がする」。生成AIで津田健次郎の低音を模したナレーションをつけた動画が、TikTokに188本投稿されていた。投稿主は氏名不詳。再生数に応じた収益は、月に50万から75万円に上ったとされる。

    津田側がこのアカウントの発信者情報開示を求めたのが2025年。だが開示された接続記録は保存期間を過ぎていて、投稿者の特定に至らなかった。そこで2025年11月、運営会社そのものに動画削除を求めて提訴する。声の無断利用を争う訴訟は、国内で初めてとみられる。この件が広く報じられ、一般に知られたのは2026年に入ってからだ。

    守る守らないを論じる前に、引っかかる点がある。守られる側に、最初から線が引かれている。

    声は最初から外にある

    著作権法は、声そのものに権利を認めていない。

    だから声を守る武器は、別のところから借りてくることになる。著名人の財産価値を守るパブリシティ権。個人の肖像権。あるいは民法709条の不法行為。津田側も、不正競争防止法違反とパブリシティ権侵害の二本立てで争っている。どれも声のために作られた法ではない。

    経産省は2025年、不正競争防止法でAI音声の無断利用が違法になり得ると例示した。法務省は2026年4月、生成AIによる声や肖像の無断利用が不法行為に当たるかを整理する有識者検討会を設置し、24日に初会合を開いている。経産省の不競法と、法務省の不法行為・人格権の解釈。別の層で、二つが並走している。検討会は7月まで議論し、指針をまとめる。ただしこの指針に法的拘束力はない。法務省自身が「立法を前提としたものではない」と明言している。

    声を守る専用の法はない。借り物の武器で、拘束力のない目安を作る。それが今の段階だ。

     
     
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