
美容クリニック閉院ラッシュ 直美の10年後に何が残るか
〜椅子取りゲームの音楽が止まるとき〜
2025年から2026年にかけて、美容クリニックの閉院ラッシュが現実のものになった。東京商工リサーチのデータでは、倒産・休廃業件数が過去最多を更新し続けている。市場規模は3年で約1.5倍に拡大しているのに、です。
拡大と淘汰が同時に進んでいる。前回の記事「直美が止まらない本当の理由」の続きとして、今回はその先を追う。
まだ椅子はある
美容クリニックが潰れても、直美の流れは止まらない。むしろ加速している。
この現象は、今のところ矛盾ではない。業界全体で見れば、医師はまだ足りていないからだ。クリニックが一つ閉じても、別の場所が募集している。直美組はそこへ移るだけで済む。
椅子取りゲームの音楽がまだ鳴っている状態。椅子は減り始めているが、全員が座れる程度には残っている。だから危機感が薄い。
高須幹弥先生は最近の動画で、閉院の実情を詳しく語っていた。大手チェーンの分院閉鎖、個人開業医の破産、フランチャイズ系の撤退。銀座周辺では閉院が新規開院を上回り始めているという。
先生の分析では、今ダメになっているのは「楽して稼ぎたいだけの医者」であり、技術とSNS発信の両方を磨いている医師は生き残れるとしている。その通りだろう。ただ裏を返せば、「楽して稼げるから美容に来た」直美組の多くにとって、前提がすでに崩れ始めているということでもある。
ホストクラブ化する美容外科
今の美容クリニック、特に大手チェーンの構造は、ホストクラブに近い。
SNSで「推しの先生」を作り、指名で来院させ、カウンセリングで追加施術を提案して単価を上げる。医師個人のルックスやキャラクター、発信力が売上に直結する。技術よりも「この先生にやってもらいたい」という感情で消費が動く。
多くのクリニックのホームページを見ると、施術のビフォーアフターより医師自身の写真が前面に出ている。白衣でキメた写真、プライベートの旅行写真、筋トレ写真。医療機関の広告というより、ホストクラブの看板と同じ発想だ。
高須先生も「クリニックで選ぶより医者単位で選ぶ人が多い」と指摘している。大手チェーンの中でも、人気ドクターは予約が取れない一方、そうでない医師は一日中暇にしているという格差が生まれている。
この構造は、加齢に対して残酷だ。
ホストクラブでは、年齢を重ねたホストは現場を退いてオーナー側に回る。美容外科医の場合、開業するにも初期投資が重い。しかも今まさに閉院ラッシュが起きている市場に、技術の引き出しが少ない状態で参入することになる。
ある美容外科医は、自分自身の若さを維持するために整形を繰り返している。ヒアルロン酸、ボトックス、糸リフト。自分が「商品」だとわかっているからこその行動だが、これは終わりのない投資だ。維持コストは年齢とともに増え、それでも加齢には勝てない。50代になって整形で30代に見せようとしても、写真は誤魔化せても対面では限界がある。表情筋が動かない顔は、むしろ逆効果になりかねない。
写真で客を引くビジネスモデルに全振りした直美組にとって、これは10年後に確実に直面する問題だ。