
美容医療規制、実効性はほぼない〜直美が止まらない本当の理由
4月に入り、美容医療の規制強化を「朗報」と伝えるSNS投稿が増えている。
厚労省が動いた。グレーがついに黒になった。そういう論調だ。
何も変わらない。
規制の中身
直美が止まらない背景として、まず数字を確認しておきたい。厚労省の調査によれば、美容外科の施設数は3年で約4割増加している。内科の増加率が0.9%であることを考えると、この伸びは異常な水準だ。規制の議論が始まる以前から、市場は走り続けていた。
今回整理された主な内容は3つある。
無資格カウンセラーが治療内容を実質的に決める運用は医師法違反になり得ると明確化された。看護師が医師の具体的な指示なしに施術を行うことも同様だ。オンライン診療についてはリアルタイムのやり取りがなければ「診療」と見なされない可能性が示された。
加えて、改正医療法により美容クリニックへの安全管理体制の定期報告義務が設けられることになっている。施行日はまだ政令で定められておらず、詳細も現在も調整中という状態だ。
これを「大きな変化」と呼ぶのは難しい。
執行できない規制
法令上の解釈を整理することと、実際に取り締まることは別の話だ。
保険診療であれば審査支払機関という実質的なコントロール機構がある。請求内容を通じて診療の実態を把握できる。自費診療にはそれがない。立入検査は都道府県の保健所が担うが、全国に乱立する美容クリニックを網羅できる人員も予算もない。保健所は感染症対応・食品衛生・精神保健など多岐にわたる業務を抱えており、コロナ禍でその体制的な限界はすでに露呈している。美容クリニックの立入検査に割けるリソースは、構造的に存在しない。
広告規制についても、個人医師のSNS投稿を「広告」と認定するのは現行法の解釈として相当無理がある。医療法上の「広告」に該当するには、患者の誘引性と特定医療機関の認知性という要件を満たす必要がある。インスタグラムの投稿はフォロワーが自発的に見に来るプル型の情報発信であり、この要件に当てはめようとするとフォロワーの自発的行動という要素が崩す。厚労省自身もSNS発信に対する明確な基準を出せていない以上、投稿が止まることはない。