
美容クリニックが直美を雇い続ける経営上の理由
直美問題の議論は、ほぼ全て医師側の視点で語られてきた。収入格差、やりがい搾取、診療報酬の歪み。それはそれで正しい。
ただ、雇う側の論理がほとんど語られていない。なぜ経営者は直美を雇うのか。なぜ形成外科専門医でなくてもいいのか。利益率2.6%の業界で、なぜ医師に高額報酬を払い続けるのか。そこを整理する。
直美の年収は初年度1,000〜2,000万円程度(クリニック規模で差がある)だが、形成外科専門医の研修期間中は500〜800万円程度が続く。雇う側から見れば、専門医は「高くて遅い」、直美は「安くて即戦力」という非対称性がある。この非対称性が、経営判断の出発点になっている。
医師は「集客装置」として雇われている
美容クリニックの収益構造を分解すると、医師の役割が見えてくる。
施術単価×成約数が売上を決める。成約を生むのはカウンセリングだ。患者が来院してから契約に至るまでの導線で、医師の仕事の大半が完結する。手術の腕より、高単価コースへの誘導力の方が評価される業界だ。
加えて、SNSフォロワーを持つ医師は広告代わりになる。インフルエンサー医師を採用することは、月数百万円のリスティング広告を打つことと経済的に等価だ。若くてSNSに強い直美は、この文脈で形成外科専門医より「使える」ケースがある。大手チェーンが「研修医応募可」「見学可」と求人に書くのは、医師を育てる意図ではなく、広告効果を持つ若い顔を早期に確保する意図だ。SNSに上がる「研修中の先生」コンテンツ自体が集客コンテンツになる。
集客装置として見たとき、資格の有無は二次的な問題になる。