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Photo byithem_noramoyo

掌編小説「夏の音」丨#風まかせ文芸部

    カキーン。

    四角い液晶画面から聞こえて来たのは、白球を叩く金属バットの音。

    夏といわれて思い浮かべる音は多々ある。

    遠く青空に響く蝉の声や、毎年隣町で催される夏祭りの、夜空を彩る花火の音。

    どれも捨てがたいが、私にとって夏の音と言われれば、この心地良い、高い打球音だった。

    この音を聞くと、ああ、夏だなと実感する。

    白球を追う球児たちの一夏。

    そこでは様々なドラマが繰り広げられ、観ている私の心を毎年昂らせてくれる。

    とはいうものの、私自身野球の経験があったわけではない。

    そもそもスポーツとは縁遠い人生を送ってきた部類だ。

    なので、応援する際も、贔屓の学校があるわけではなかった。

    じゃあ何故かという話なのだが、そこには変な地元意識というか、地域代表の高校を応援するのがどこか通例となっていて、そんな私もご多分に漏れず画面の向こうで応援をしていたのだ。

    決して、休日に横になりつつテレビを観るという、怠惰な時間を過ごす為の免罪符にしているわけではない。

    そう、決して。

    頭の中で自己弁護をしているうちに、応援している側の学校が負けそうになっている。

    ここはオカルトに頼るわけではないが、部屋の掃除でも始めてみようか。

    「野球ばかり見てないで、部屋でも片付けたら」

    丁度、妻に尻を叩かれた。

    「はいはい」

    適当に返事をしつつ、私の思考は完全にストライクゾーンから外れていた。

    はたして私の尻を叩く音に効果音をつけるとしたらどんな音になるだろう。

    鈍い打撃音か、乾いた破裂音か、それとも。

    ともかく、それも私にとって大切な、夏の音のうちの一つだ。

    これからも毎年聴くことができるのなら、それもいいだろう。


    ↑今回もこちらの企画に参加させて頂きます。
     今回はこんな物語が出来ました。
     お題に感謝します。
     よろしくお願い致します。

     
     
    生きてます。胃がん→双極→入院中 抱えているものほど、おもくなく 日々をかるく、ゆるく綴れたら。

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