
【掌編小説】 借りた本 #シロクマ文芸部
『借りた本』
「こんな本、持っていたかな?」
ふと気になり、本棚から取りだしてパラパラとページをめくる。
一冊の本には一定期間「読者」が必要で、読者こそが本から選ばれ、図書館から貸し出された側だった。そして返却日が来ると、その本に関する記憶は消える。ある本に気に入られた主人公が、借りては忘れを繰り返す。そんな内容の話だった。
「なんなんだ……これ」
SFでもなく、ファンタジーでも、まして純文でもない。なんかもう少し何とかならなかったのかな?設定自体は悪くはないのだけど・・・。
「まぁ、こんな本はその辺に置いといて。明日のコンパ代のために、古本屋に漫画売りに行かないと。」
散らばっている漫画をかき集め、もう読まないものを選別する。
「これじゃあ交通費ぐらいかな。今日は、売ったお金で買って帰るのは我慢しないとな」
リュックに詰めて自転車に乗り、古本屋に漕ぎ出す。
漫画の合間に挟まった『借りた本』とともに。