
量子力学にとって線形性は本質
本を出させていただくことになりました。発売日まで1ヶ月を切りました。今週はようやく最終稿のチェックを終えました。印刷を待つばかりです。
さて、事前の宣伝として各章の内容を少しずつ紹介させていただいているところです。今日は第7章です。これまでの紹介記事のまとめのページも用意してあります。
『量子力学の〈新常識〉-意識・実在・情報が再定義する物理学-』2026年6月25日発売
第1章 波動関数の誤解
第2章 20世紀末に起きたこと
第3章 意識と量子
第4章 不確定性関係の新常識
第5章 奇妙な遠隔作用か、量子もつれか?
第6章 デコヒーレンスと多世界解釈
第7章 量子的な線形重ね合わせの現代的理解 ← 今日はここ!
第8章 古典的に見える現実をどう捉えるか
第9章 量子コンピュータ
シュレーディンガー方程式は線形方程式ですが、これを非線形に拡張して新しい見方を開拓してみようという試みの議論がたまに活発になります。しかし量子力学を情報理論として捉え直してみた場合、基本的な仮定からそのような方向への拡張はあり得ません。線形性は量子力学が本質的に満たすべきものなのです。この章ではその根拠を説明しています。
線形性と言えば波動関数の重ね合わせの原理です。重ね合わせの例として、主に二重スリット問題についての話を取り上げます。粒子を二重スリットに向かって飛ばしたとき、右のスリットを通った可能性と左のスリットを通った可能性との間で干渉が起こり、スクリーンに到達した粒子の位置の記録を多数集めてみると、干渉縞が現れます。
干渉縞が生じるのは波動関数が波のように広がるからです。しかしスクリーンに当たるのはひとつひとつ数えられる粒子なのですから、二つに分かれることは考えにくく、右のスリットか左のスリットか、どちらかを通ったはずだと考えたくなります。よくある「粒子なのか波なのか」という問題です。
実はこの問題は、もはや深刻な問題ではありません。粒子の位置というのは測定によって決まる物理量であり、測定をするまでは存在すらしていない量なのです。また、粒子が実在するかのような古い観念は捨てなければなりません。全ては情報なのです。
粒子の位置を測定すると干渉が消えてしまうのですが、測定によって粒子であるか波であるかが決まるという言い方もいまだによく聞きます。しかし、このイメージも正しくありません。しかも、ただ粒子と測定器が相互作用を起こして粒子の邪魔をしただけでは干渉は消えるとは限りません。どういう条件を満たしたときにどういう理由で干渉が消えるのか、それは第6章で行った議論と非常に似ているのですが、粒子と測定器との量子もつれの具合がその鍵となっています。
第7章はそのあたりの話をじっくり説明する章になっております。新しいイメージでの説明を広めて行きましょう!
これまでの紹介記事のまとめのページはこちらにあります。