
AIインフラ株の急落は買い場か?クレイマーが選ぶ「残すテック株」と「非テック株」|Mad Money 2026年7月20日
今回の結論は、AIインフラ株を一律に押し目買いするのではなく、利益を出している高品質銘柄と非テック株を優先する局面だということです。
クレイマーは、中国AIの台頭だけでなく、原油高、金利上昇、巨額設備投資の採算性、IPOや増資による株式供給の増加を警戒。一方、AppleやNVIDIA、Intelの競争力は評価し、急落したNetflixについては少額から段階的に買う余地があるとの見方を示しました。
今回の要点3つ
1.AIインフラ株の下落は中国AIだけが原因ではない
中国のMoonshot AIが公開した「Kimi K3」は売り材料の一つですが、それ以前からAI関連株の調整は始まっていました。
クレイマーは、原油高、長期金利の上昇、AI設備投資の採算性への疑問、IPOや増資による株式供給の急増が重なったと分析しています。
2.テック株を全否定せず、保有銘柄を厳選する
Apple、NVIDIA、Intelなどの長期的な競争力には強気です。
ただし、AI関連株をまとめて買うのではなく、利益、財務力、バリュエーションを確認し、赤字企業や投機的な銘柄はさらに下がるのを待つべきだと述べました。
3.Netflixは「少額から段階的に買う」候補
Netflixの決算と業績見通しは期待外れでしたが、会社そのものが壊れたわけではありません。
クレイマーは、自社株買いとキャッシュ創出力を評価し、最初は小さく買い、さらに下落した場合に段階的に追加する方法を提案しました。
番組全体の流れ
AI株に偏りすぎたポートフォリオへの警告
番組冒頭では、中国のAIモデル、半導体、AIサービスの価格、AI企業のIPO、国家安全保障など、多くの材料が市場へ流れ込んでいる状況が説明されました。
この日の主要指数は、ダウが307ドル安、S&P500が0.19%安、NASDAQが0.05%安。寄り付きは強かったものの、AI関連の不透明感から上値を維持できませんでした。
クレイマーは、テック株を過剰に保有している投資家は、売りが加速したときに大きな損失を受ける可能性があると警告しました。
新規資金については、Goldman Sachs、Wells Fargo、FedEx、Honeywell Aerospace、Boeingなど、事業内容と利益構造を理解しやすい非テック企業へ振り向けたいと述べています。
ただし、これはテック株をすべて売るという話ではありません。
長期保有する高品質テック株と、短期資金が集中した投機的なAI株を分けて考えることが重要です。
Apple、NVIDIA、Intelは保有継続
Appleは、AI対応の遅れやSiriの競争力を批判されています。
それでもクレイマーは、批判している人々も結局はiPhoneを使い続けており、Appleの中核事業は簡単には崩れないと判断しました。
また、Appleが自社で巨額のデータセンター投資を行わず、Alphabetなど外部企業のAI技術を利用している点も評価しています。
NVIDIAについては、顧客企業が独自チップを開発しても、NVIDIA製品を求める需要は簡単には消えないと説明しました。
NVIDIAの強みはGPU単体ではありません。ネットワーク、ソフトウェア、開発環境まで含めた総合的なAI基盤を提供している点にあります。
Intelについては、次の三つを成長機会として挙げました。
AIエージェント向けのCPU
米国内の半導体ファウンドリー
利益率の高い先端パッケージ
クレイマーは、Intelの決算後に株価が下落すれば、むしろ保有比率を増やしたいと述べています。
一方、AMD、Arm、Broadcom、Marvellも優れた企業と認めていますが、半導体株を何社も持つと同じテーマへの集中が強くなります。
ここでのポイントは、優良テック株を売ることではなく、テック株の持ちすぎを避けることです。
GE Aerospaceなど非テック株を評価
クレイマーは、AI株を追加購入するより、FedEx、Honeywell Aerospace、GE Aerospaceなどを選びたいと述べました。
GE Aerospaceが関係するCFM Internationalは、IndiGoとA320neo向けのLEAP-1Aエンジン1,000基超に関する覚書を締結しています。過去最大規模のLEAPエンジン案件です。
それにもかかわらずGE Aerospace株が下落したため、クレイマーは市場の反応を不自然だと指摘しました。
なお、Honeywell Aerospaceは2026年6月に分離を完了し、現在はHONAとしてNASDAQで取引されています。
これらの銘柄にも景気敏感株としてのリスクはありますが、AIモデルの性能や中国企業に関する報道だけで投資判断が変わりにくい点が、テック株との違いです。
AutoZoneは安値で売らない
視聴者から、最高値から約30%下落したAutoZoneを売るべきかという質問がありました。
クレイマーは売却に反対しました。
関税や中国からの仕入れに関する問題は認めつつも、利益予想に対する評価倍率は約19倍で、自社株買いも続いています。
そのため、株価がすでに大きく下落したところで売る必要はないとの判断です。
今後は、関税による部品コスト、既存店売上、在庫回転率、自社株買いの継続が重要になります。
AIインフラ株で何が起きているのか
主要指数以上に大きな下落
クレイマーは、主要指数の下落率だけではAIインフラ株の深刻さが見えないと説明しました。
番組内で示された放送時点の数字では、Roundhill Memory ETF(DRAM)が直近高値から約35%下落。
Micron、SanDisk、Seagate、Western Digitalなどのメモリー・データストレージ関連株も、高値から約30〜41%下落していました。
売りはメモリー株だけにとどまりません。
AMD、Intel、Broadcom、Marvell、Arm
ASML、Applied Materials、KLA、Lam Research
Corning、Astera Labs、Coherent、Lumentum
Hewlett Packard Enterprise、Dell
Vertiv、Modine、Caterpillar、Bloom Energy
Sterling Infrastructure、Quanta Services
CoreWeave、IREN、Nebius
半導体、製造装置、光通信、サーバー、電力設備、建設、ネオクラウドまで、AIデータセンターに関係する幅広い銘柄が下落しました。
クレイマーは、AIインフラの長期需要を否定しているわけではありません。
ただし、急騰後の銘柄、赤字企業、資金調達への依存度が高い企業は、まだ底を付けていない可能性があると判断しています。
Celesticaは優良企業でも利益確定売りに注意
視聴者からCelesticaについて質問がありました。
クレイマーは、Celesticaを優良企業と認めています。一方、AIデータセンター関連として株価が大幅に上昇したため、短期的にはさらに利益確定売りが出る可能性があると述べました。
業績が良い企業でも、株価が先に上がりすぎれば調整は発生します。
「良い会社」と「今すぐ買うべき株」は同じではない、という分かりやすい例です。
AIインフラ株が売られた四つの理由
1.原油高と長期金利の上昇
イラン情勢の悪化で原油価格が上昇し、インフレの再加速とFRBによる利下げの後退が意識されました。
米10年債利回りも再び上昇しています。
将来利益への期待で買われる成長株は、金利上昇によるバリュエーション低下の影響を受けやすくなります。
2.AI設備投資の採算性
データセンター、半導体、電力、建設、人件費が上昇し、AI基盤を整備するコストが膨らんでいます。
問題は、巨額の設備投資に対して誰が十分な利益を得るのかという点です。
半導体メーカーや設備会社だけでなく、AIを利用する企業側でも具体的な利益改善が確認できなければ、投資額の正当化は難しくなります。
3.レバレッジ取引の巻き戻し
クレイマーは、韓国の個人投資家、レバレッジETF、テーマ型ETF、オプション取引が、メモリー株の上昇と下落を増幅させた可能性を指摘しました。
レバレッジで押し上げられた相場は、下落時にも強制的な売却が発生しやすくなります。
そのため、業績だけでは説明できない大幅下落が起こります。
4.IPO・増資による株式供給の増加
2026年はAI関連企業のIPOや既存企業の増資が相次いでいます。
成長テーマが正しくても、市場へ供給される株式が多すぎれば、投資資金が分散して株価は上がりにくくなります。
AlphabetはAI設備投資を支えるため大規模な資金調達を実施しています。2026年の設備投資計画は1,800億〜1,900億ドルに達する見通しです。
クレイマーは、中国AIよりも、この株式の供給過多がAIインフラ株にとって大きな問題になっていると分析しました。
AI株の底打ちを判断する条件
クレイマーの話を整理すると、AIインフラ株の底打ちには次の確認が必要です。
AI関連のIPOや増資が減少する
ハイパースケーラーのクラウド売上が成長を続ける
巨額設備投資に見合う収益が確認される
AIを利用する企業側でも利益改善が見える
原油価格と米長期金利が安定する
レバレッジ取引の強制売却が一巡する
それまでは、利益を出している企業と、赤字の投機的企業を分けて考える必要があります。
クレイマーは、高品質で利益を出し、過去と比べて評価倍率が妥当になった銘柄を優先するよう勧めました。
Chipotleは決算前に4分の1だけ
Chipotleについては、長期的な出店余地とデジタル売上が評価されました。
一方、クレイマーは決算前に一括購入せず、買うとしても予定額の4分の1程度に抑えるよう提案しました。
食材に関する問題や客数の鈍化が、決算へ影響する可能性があるためです。
良い企業でも、決算直前にフルポジションを取る必要はありません。最初は小さく入り、結果を確認してから追加する考え方です。
Netflixは買い場なのか
Netflixは過去12カ月で約44%下落し、決算発表後だけでも約9%下落していました。
売上高は市場予想をやや下回り、EPSは予想並み。フリーキャッシュフローは約15億ドルで、市場予想を大きく下回りました。
第3四半期の売上高と利益見通しも弱く、成長率の鈍化が嫌気されています。
Netflix公式の2026年第2四半期株主書簡では、FCFの低下にはWarner Bros.との取引終了に関連する税負担が影響したと説明されています。
通期FCF予想は約125億ドルです。
Netflixの弱材料
売上成長率が鈍化している
四半期ごとの有料会員数を開示していない
視聴データの開示頻度も減らしている
世界的なヒット作品が不足している
動画配信サービスの競争が激しい
広告、ゲーム、ライブ、スポーツなどへの投資負担がある
利用者はNetflix、Disney+、Apple TV+、Prime Videoなどを簡単に乗り換えられます。
動画配信サービスの差別化が難しくなっていることは、Netflixの評価倍率が以前ほど高くならない理由の一つです。
Netflixの強材料
一方、第2四半期には過去最大となる47億ドルの自社株買いを実施しました。
買い戻し枠も大きく残っており、株価が低迷すれば、同じ金額でより多くの株式を買い戻せます。
広告売上の成長余地や、世界のテレビ視聴時間に占めるNetflixのシェアがまだ低いことも、長期的な成長材料です。
クレイマーはNetflixを、以前のような超成長型の独占企業ではなく、キャッシュフローと自社株買いで一株利益を伸ばす企業へ変化しつつあると見ています。
クレイマーの結論
決算自体は期待外れでしたが、Netflixは壊れた会社ではありません。
クレイマーは、最初に小さなポジションを作り、その後さらに下落した場合に段階的に買い増す方法を提案しました。
ただし、成長率が1桁台まで低下すれば、現在より評価倍率が下がる可能性があります。
押し目買い候補ではありますが、急いで一括購入する必要はないという判断です。
Lightning Round
Fiserv(FISV)
クレイマーの回答: 単独での株価回復には限界があり、他社との統合が必要
判定: 判断保留
補足: フィンテック企業が多すぎるため、業界再編が必要との見方です。
Lyft(LYFT)
クレイマーの回答: 15ドル前後なら買い始めてもよい
判定: やや強気
補足: 経営改善とフリーキャッシュフローを評価しています。
CleanSpark(CLSK)
クレイマーの回答: CleanSparkよりBitcoinを直接買う方が分かりやすい
判定: 慎重
補足: Bitcoin価格に加えて、マイニング企業固有の事業リスクも負うためです。
ZIM Integrated Shipping(ZIM)
クレイマーの回答: 保有を続ける考えに同意
判定: 中立
補足: 現在の買収が成立しなくても、別の買い手が現れる可能性があると述べました。ただし、積極的な推奨ではありません。
First Solar(FSLR)
クレイマーの回答: 株価は割安だが、チャートが非常に悪い
判定: 慎重
補足: 訴訟リスクと明確な下落トレンドを警戒しています。
Cheesecake Factory(CAKE)
クレイマーの回答: この銘柄を避けるのは間違い
判定: やや強気
補足: 幅広いメニューと顧客層を評価しています。
AST SpaceMobile(ASTS)
クレイマーの回答: 現在はリスクが高く、40ドル程度まで下がる可能性がある
判定: 弱気
補足: 赤字が大きく、投機的な成長株が売られやすい市場環境を警戒しています。
放送後に確認された最新状況
番組翌日の7月21日には、General Motorsと3Mが市場予想を上回る決算を発表し、通期見通しを引き上げました。
クレイマーが非テック株への分散を提案していた考えを、短期的には裏付ける結果です。
Charles Schwabも第2四半期に過去最高の売上高と利益を記録しました。
一方、株価は決算日に下落しています。好決算でも事前期待が高ければ売られるため、決算数字だけで判断しないことが重要です。
番組から読み取れる市場テーマ
AI相場は「投資額」から「投資回収」へ
これまでは、AI設備投資の拡大自体が株価材料でした。
今後は、クラウド売上、AIサービスの利益、利用企業の生産性向上など、投資に見合った収益が求められます。
株式の供給増は相場全体の重荷になる
IPOや増資が増えると、市場全体の投資資金が分散します。
企業の成長性が高くても、新しく供給される株式が多すぎれば、株価は上がりにくくなります。
非テック株へのローテーション
クレイマーは、物流、金融、航空宇宙、ヘルスケアなどを分散先として挙げました。
ただし、非テック株なら何でもよいわけではありません。利益、評価倍率、景気への感応度を確認する必要があります。
日本人投資家向けまとめ
今回もっとも重要だったのは、AIの長期成長性と、AI関連株の短期的な供給過多を分けて考えることです。
AI関連株が大きく下がったからといって、一括で買い増すのは慎重に考える必要があります。
AppleやNVIDIAのような高品質企業と、赤字のAIインフラ企業を同じ基準で判断してはいけません。
今後確認したい材料は次のとおりです。
IntelやAlphabetなど主要テック企業の決算
クラウド事業の成長率
AI設備投資の回収状況
AI関連のIPO・増資
米10年債利回り
原油価格とイラン情勢
Netflixは監視候補ですが、成長率の再加速を確認するまでは少額に抑えたい銘柄です。
DRAMやMicronも長期テーマは残るものの、短期的な値動きが極端です。買い増す場合は、決算やメモリー価格を確認しながら分割する方が現実的でしょう。
米国株へ投資する日本人は、企業の業績だけでなく為替リスクも負います。
円高になると、米国株が上昇しても円換算の利益が小さくなる場合があります。ドル建て損益と円建て損益を分けて確認することが大切です。
免責事項
本記事は、公開されている番組内容をもとに情報を整理・解説したものであり、特定の金融商品の売買を推奨するものではありません。記事内の情報は作成時点のものであり、その正確性や完全性を保証するものではありません。投資判断は、ご自身の責任で行ってください。
出典
補足資料: Netflix 2026年第2四半期株主書簡
補足資料: AlphabetのSEC提出資料
補足資料: GE Aerospace公式発表
補足資料: Honeywell公式発表
補足資料: Charles Schwab第2四半期決算資料
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