
Lululemonは80%安でも買えない?30年債利回り5.3%が株価を支配する理由|Mad Money 2026年9月10日
今回の「Mad Money」は、原油高を受けて米国の長期金利が急上昇し、株式市場へ売りが広がった日の放送です。ダウ平均は316.56ドル安、S&P500は0.6%安、NASDAQ総合は0.7%安。ブレント原油が一時108ドルを超え、30年国債利回りも約5.3%まで上昇しました。
クレイマーが強調したのは、企業の業績だけを見ても株価は説明できないという点です。安全性の高い米国債で5%超の利回りを得られるなら、投資家が割高株や景気敏感株に求めるリターンは高くなります。その環境下で、Lululemonのような再建途上の企業を安さだけで買う危険と、Seneca Foodsのような非AI・低PER銘柄を分散先にする考え方が取り上げられました。
今回の要点
1.株式市場の最大の競争相手は30年国債
30年国債利回りが約5.3%まで上昇すると、株式の相対的な魅力は低下します。住宅ローン金利や企業の借入コストも上がり、住宅、航空、小売など幅広い業種の利益を圧迫します。
2.Lululemonは「安い」だけでは買えない
Lululemonは世界の既存店売上高が9%減少し、通期見通しも大幅に引き下げました。新CEOによる再建余地はありますが、商品力とブランドの回復が数字に表れるまでは待つのがクレイマーの判断です。
3.Seneca FoodsはAI偏重を薄める分散候補
Seneca FoodsはGreen Giantの冷凍食品事業取得とプライベートブランドの成長で、四半期売上高が36%増加しました。景気に左右されにくくPERも低いため、少額で入り、追加の下落時に買い増す戦略が提案されました。
30年国債利回りが株価を決める
クレイマーは、Goldman Sachsの研修時代にDelta Air Lines(DAL)の株価を分析した経験を紹介しました。当時のクレイマーは原油価格、旅客単価、座席当たりコスト、PERを並べましたが、講師から「最も重要なのは30年国債だ」と一蹴されます。
その理由は、国債が株式の比較対象になるからです。米国政府の信用を前提とする債券から約5.3%の利回りを得られるなら、値下がりする可能性がある株式には、それを上回る期待収益が必要になります。特に配当利回りが低く、成長も鈍い企業は評価されにくくなります。
住宅と企業融資への波及
30年固定住宅ローン金利は、Mortgage News Dailyの集計で7.07%に上昇しました。Freddie Macの週次平均では6.76%ですが、いずれも住宅購入者の負担が再び重くなっていることを示しています。
住宅は建材、仲介、法律、配管、電気工事、造園、家具、家電まで裾野が広い分野です。住宅取引が減ればHome Depot(HD)、Lowe’s(LOW)、Best Buy(BBY)、Stanley Black & Decker(SWK)などにも影響します。
航空会社も、原油高による燃料費増加と機体購入のための借入金利上昇を同時に受けます。Deltaの経営が同業他社より優れていても、資本コストが上がれば株価の評価倍率は上がりにくいという説明です。
米財務省は長期債を最大60億ドル買い戻す方針ですが、市場に存在する長期債は約4兆5,000億ドル規模です。クレイマーは、この買い戻しだけで利回りを大きく押し下げるのは難しいと見ています。
なお、米国債の5.3%はドル建てでの利回りです。日本人投資家が購入する場合、円高が進めば利息以上の為替差損が発生する可能性があります。
視聴者質問:半導体・AI関連株の判断
Howmet Aerospace(HWM)
航空機エンジン部品を手掛けるHowmetについて、クレイマーは事業の強さを認めながらも、予想利益の約44倍という評価は高すぎると指摘しました。
顧客による部品製造の内製化より、現在の株価に高い成長期待が織り込まれていることを問題視しています。チャートも下向きであり、現水準では待つ判断です。
Micron Technology(MU)
Micronへ401(k)の資金を集中させ、160万ドルを740万ドルまで増やしたという視聴者が登場しました。本人はPER、PEG、配当、自社株買いまで含めた投資仮説を説明し、クレイマーは分析内容を高く評価しました。
クレイマーの慈善信託もMicronを保有し、積極的に買っていると説明しています。ただし、番組内の成功例は極端な集中投資の結果です。メモリー価格が反転した場合の損失も大きいため、一般的な再現例として受け取るべきではありません。
Arista Networks(ANET)
AristaがCiena(CIEN)のように失速しないかという質問に対し、クレイマーはCEOのジェイシュリー・ウラル氏と会社の競争力を高く評価しました。
株価はすでに大きく上昇していますが、これまでと同様に下落局面は買い場になるという強気姿勢を維持しています。
Lululemonは再建を確認するまで買わない
Lululemon Athletica(LULU)は、2023年末の高値から80%超、2026年初からも50%超下落しました。しかし、クレイマーは「下がったから買う」という判断を否定しています。
2026年度第2四半期の主な数字は次のとおりです。
売上高:24億ドル、前年同期比4%減
世界の既存店売上高:9%減
米州の売上高:8%減
米州の既存店売上高:12%減
希薄化後1株利益:2.92ドル
通期売上高予想:103億5,000万~105億ドル、5~7%減
通期1株利益予想:9.48~9.73ドル
1株利益には、関税還付と関連利息による0.86ドルの押し上げが含まれています。本業の改善だけで市場予想を上回ったわけではありません。第3四半期も売上高10~11%減、1株利益0.93~0.98ドルという厳しい見通しです。
問題は一時的な減速ではなくブランド力
コロナ禍で拡大したアスレジャー需要が落ち着き、若い顧客の好みは体に密着するレギンスから、ゆったりしたパンツへ移っています。Alo Yoga、Vuori、Athletaなどとの競争も激しく、値下げ品の増加が業界全体の利益率を圧迫しています。
中国では、万里の長城で実施したイベントをめぐる批判も集客へ影響しました。これまで成長源だった海外事業まで減速したため、北米だけを直せばよい状況ではありません。
さらに、前CEOの退任から新CEO就任まで約8カ月間、恒久的な経営トップが不在でした。Nike出身のハイディ・オニール氏は9月8日に就任したばかりであり、今回の決算は悪材料をまとめて計上する「キッチンシンク決算」だった可能性があります。
株価は通期利益予想の中央値に対して約10倍まで低下しました。反転すれば上昇余地は大きいため空売りにも向きませんが、業績予想の引き下げが続けば現在のPERも割安ではなくなります。クレイマーの結論は「売りでも買いでもなく、再建を確認するまで近づかない」です。
Seneca Foodsは非AIの分散候補
Seneca Foods(SENEA、SENEB)は、Green Giant、Libby’s、Aunt Nellie’sなどのブランド商品に加え、小売各社のプライベートブランド向けにも缶詰・冷凍野菜を供給しています。
消費者が有名ブランドから安価なPB商品へ切り替えても、Senecaが両方を製造していれば販売機会を失いにくい点が強みです。外食や高額商品を控える局面でも、家庭で食べる食品需要は残ります。
2027年度第1四半期の売上高は4億520万ドルで、前年同期の2億9,750万ドルから36.2%増加しました。希薄化後1株利益も2.14ドルから2.85ドルへ伸びています。
成長を支えたのは、2026年3月に取得したGreen Giantの米国冷凍食品事業、PB商品の販売増、受託生産の時期要因です。2024年の不作で生じた高コスト在庫の消化が進み、既存事業の採算も改善しています。
割安でも一度に買わない理由
番組放送時点の株価は約186ドルで、翌年度予想利益の13倍未満でした。株価は3年間で約256%、年初から約70%上昇していますが、利益も伸びているため極端な割高ではありません。
一方、農産物加工には固有のリスクがあります。
不作になると工場固定費を吸収できる生産量が減る
上位10社が年間売上高の56%を占める
缶に使うブリキ鋼板の価格と関税が利益を圧迫する
買収後の成長率は比較対象が高くなると鈍化しやすい
そのためクレイマーは、小さなポジションを作り、市場全体の下落や追加の調整があれば買い増す方法を勧めました。AI・データセンターへの偏りを薄める候補ですが、急騰後に一括購入する銘柄ではありません。
WalmartとSoFiへの回答
Walmart(WMT)
Walmartは物価高によるコストを顧客へ完全には転嫁せず、利益率を一部犠牲にして市場シェアと信頼を獲得していると評価しました。
ただし、予想利益の約36倍という株価は短期業績に対して高いため、106~105ドルで少額を買い、95ドルまで下落した場合に追加する分割購入を提案しています。短期は慎重、インフレ沈静化後を見据えれば長期強気です。
SoFi Technologies(SOFI)
クレイマーはSoFiの会社と経営陣を評価し、長期保有を容認しました。ただし、同業の金融会社よりPERが高く、利益成長が評価倍率に追いつくまでは株価が横ばいになりやすいとしています。
Lightning Round
Procter & Gamble(PG)
クレイマーの回答:売却後は振り返らない
判定:慎重/売却寄り
理由:配当利回り約3%はあるものの、現在求める売上・利益成長が不足しています。
KALA BIO(KALA)
クレイマーの回答:投機枠としてなら保有可
判定:投機
理由:新薬が成功すれば株価が数倍になる可能性がある一方、失敗時の損失も大きい銘柄です。保有するなら、ほかの投機株を増やさないことを条件としました。
Tractor Supply(TSCO)
クレイマーの回答:現時点では買わない
判定:慎重/見送り
理由:良い会社ではあるものの、株価を押し上げる新しい材料がなく、52週安値圏でも反発力が見えません。
Texas Pacific Land(TPL)
クレイマーの回答:素晴らしい銘柄
判定:強気
理由:石油・ガス開発からロイヤルティーや水関連収入を得る資産性の高い事業で、今後の上昇を期待しています。
Ondas Holdings(ONDS)
クレイマーの回答:悪くはないが、優良株とは言いにくい
判定:中立/投機
理由:無線通信、ドローン、自律システムという人気テーマを持つ一方、値動きは業績以上に投資家心理へ左右される「ミーム株」と評価しました。
TJXで学ぶ「良い小売株」の難しさ
番組最後では、クレイマーが自身の慈善信託で長期保有するTJX Companies(TJX)への不満を説明しました。
主力のMarmaxx部門は、TJ MaxxとMarshallsの販売が期待を下回りました。会社は商品構成や店舗への在庫配分という「自ら招いた問題」であり、すでに修正したと説明しています。しかし、競争上の理由から問題の詳細と修正方法を開示しなかったため、クレイマーは強い不信感を示しました。
TJX全体では売上・利益が伸び、通期利益予想も引き上げています。それでも主力部門の既存店売上高は1%増に減速し、Ross Stores(ROST)やBurlington(BURL)との競争も続きます。
小売株は店舗が混雑しているだけでは判断できません。客数、購入点数、値引き率、商品構成、在庫配分の小さな変化が利益を大きく動かします。クレイマーはTJXの長期的な強さを否定していませんが、問題の説明が数字で確認できるまでは慎重に見る姿勢です。
銘柄別の投資判断
Lululemon(LULU)
判断:見送り
監視ポイント:既存店売上、北米の客数、中国売上、値引き率
見直し条件:新CEOの施策によって既存店売上と通期予想の引き下げが止まること
Seneca Foods(SENEA)
判断:やや強気、少額から分割購入
監視ポイント:収穫量、Green Giant冷凍事業の採算、粗利益率、負債
見直し条件:不作や原材料高で利益が減少し、買収効果も失速する場合
Micron Technology(MU)
判断:強気
監視ポイント:DRAM・NAND価格、HBM需要、設備投資、自社株買い
見直し条件:メモリー価格の下落と在庫増加が同時に進む場合
Arista Networks(ANET)
判断:長期強気、下落時に買う
監視ポイント:クラウド大手の設備投資、AIネットワーク売上、顧客集中
見直し条件:主要顧客の内製化で受注成長が継続的に鈍化する場合
Walmart(WMT)
判断:長期強気、短期は分割購入
監視ポイント:粗利益率、既存店売上、EC利益、客数
見直し条件:価格投資を続けても市場シェアと客数が伸びない場合
TJX Companies(TJX)
判断:保有継続だが慎重
監視ポイント:Marmaxxの既存店売上、購入点数、在庫配分、競合との差
見直し条件:会社が修正済みとする問題が次の決算でも改善しない場合
日本人投資家向けまとめ
長期金利が上がる局面では、良い会社かどうかだけでなく、国債利回りに対して株価が十分な成長を織り込めるかを確認する必要があります。
Lululemonのような業績下方修正中の銘柄は、低PERだけを理由に買わず、売上と経営陣の施策が改善してから判断したいところです。
AI関連へ偏ったポートフォリオの分散では、単に異業種を買うのではなく、Seneca Foodsのように需要の安定性と割安さを両方持つ企業が候補になります。
30年米国債の5%超は魅力的ですが、日本人投資家には為替リスクがあります。円高時の損失を含め、株式との比較は円換算で行う必要があります。
個別株への集中で大きな利益を得た事例は、同じだけ大きな損失の可能性も含みます。強気銘柄でも購入時期と資金を分散することが重要です。
免責事項
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