
半導体集中を戒め、3M・決済株・生活必需品へ分散|Mad Money 2026年7月21日
今回の「Mad Money」でジム・クレイマーが強調したのは、テクノロジー株を手放すことではなく、半導体やメモリー株への集中を避けることでした。AI関連株が反発する一方、3M、Kimberly-Clark、クレジットカード大手などにも投資機会があると指摘。日本人投資家にとっても、上昇銘柄を追いかける前にポートフォリオ全体の偏りを点検したい内容です。
今回の要点3つ
1.半導体株の反発局面こそ分散を考える
メモリー株やAI関連株が大きく反発しましたが、クレイマーは半導体への集中リスクを繰り返し警告しました。テクノロジー株そのものには強気でありながら、利益が出ている局面で一部を他業種へ移すことを勧めています。
2.分散先として生活必需品、決済、産業株を評価
Kimberly-Clark、Visa、Mastercard、American Express、3Mなどが紹介されました。これらは一見するとAI相場とは無関係に見えますが、安定収益、技術力、株主還元など、それぞれ異なる強みを持っています。
3.AI時代でも「ハードウェア」と「ソフトウェア」には明暗
半導体やデータセンター関連が買い戻される一方、Salesforce、Adobe、Workday、ServiceNowなどのソフトウェア株は低迷しています。企業の質が悪いというより、成長率の鈍化とAIによる競争環境の変化が、評価を難しくしているとの見方です。
番組全体の流れ
半導体株が急反発、それでも集中投資には注意
何が語られたか
7月21日の米国市場では、ダウ平均が385ドル高、S&P500が0.89%高、ナスダック総合指数が1.29%高となりました。半導体株の反発が相場をけん引し、Micron TechnologyやSanDiskなどのメモリー関連が大きく上昇しました。
クレイマーは、SanDisk、Micron、Seagate Technology、Dell Technologies、Western Digitalなどが年初から大幅に上昇してきたことを紹介しました。一方、直近では急落する日もあり、特に借入金を使った投資では致命的な損失につながり得ると警告しています。
クレイマーの見方
クレイマーは「テクノロジー株に弱気なのではない」と明言しています。実際、AppleとNvidiaは自身が運用に関わる信託の主要保有銘柄です。
ただし、メモリー、GPU、CPU、サーバーなど、同じテーマに属する銘柄をいくつも保有すると、見かけ以上に集中度が高くなります。半導体が上昇した日は、利益確定や分散を検討しやすい機会だと述べました。
具体的には、次のような選び方を示しています。
メモリー半導体ならMicron Technology(MU)
GPUならNvidia(NVDA)またはAMD(AMD)
CPUならIntel(INTC)
サーバーならDell Technologies(DELL)
すべてを同時に買うのではなく、カテゴリーごとに有力企業を絞る考え方です。
背景解説
半導体株は、AI向け設備投資やデータセンター需要という共通材料で動きやすい銘柄群です。企業が異なっても、AI投資への期待が後退すると同時に売られる可能性があります。
また、信用取引やレバレッジを利用すると、長期的な成長性が崩れていなくても、短期的な急落で強制的に売却させられることがあります。
投資家が見るべきポイント
半導体関連が資産全体に占める割合
同じAI設備投資テーマへの重複
各社の中国向け事業と輸出規制
メモリー価格の持続性
借入金や信用取引を使っていないか
日本人投資家の場合、株価変動にドル円相場も加わります。米国株が上昇しても円高になれば、円換算の利益が小さくなる点には注意が必要です。
テクノロジー以外にも「技術を持つ会社」はある
何が語られたか
クレイマーは、テクノロジーへの投資を半導体やソフトウェアだけに限定すべきではないと説明しました。
Johnson & Johnson(JNJ)は医薬品開発、3M(MMM)は素材科学、CVS Health(CVS)は薬局と医療保険、Goldman Sachs(GS)、Wells Fargo(WFC)、BNY(BK)は金融システムという形で、それぞれ高度な技術を事業に活用しています。
クレイマーの見方
これらの企業は、代表的なAI・半導体株より低い評価で取引されることが多く、ポートフォリオの分散先になり得るとの見方です。
特にクレイマーは、半導体株だけを保有して大きな下落に巻き込まれ、市場そのものから退場してしまうことを懸念していました。
背景解説
株式の分散では、銘柄数よりも収益源の違いが重要です。半導体メーカーを5社保有しても、AI設備投資という同じ要因に左右されるなら、十分に分散されているとは限りません。
医薬品、銀行、生活必需品、物流、産業材などを組み合わせることで、特定テーマの失速による影響を抑えやすくなります。
投資家が見るべきポイント
銘柄数ではなく、業種と収益源が分かれているか
高成長株と安定収益株のバランス
金利、景気、原材料価格への感応度
配当だけでなく、フリーキャッシュフローが安定しているか
FedExは年末商戦と事業分離に期待
視聴者からFedEx(FDX)について質問がありました。
クレイマーは短期的な株価の荒さを認めつつ、ラジ・スブラマニアムCEOの経営を評価。年末商戦に向けてFedExを保有したいとの考えを示しました。
また、貨物部門FedEx Freightの分離についても前向きです。独立することでコスト管理と事業運営の焦点が明確になり、価値が表面化する可能性があると見ています。
日本人投資家が確認したいのは、輸送量だけではありません。利益率、燃料費、人件費、コスト削減計画、分離後の資本構成も重要です。
Kimberly-Clark(KMB)とKenvue(KVUE)
どのような会社か
Kimberly-Clarkは、Huggies、Kleenex、Cottonelleなどを展開する生活必需品メーカーです。
買収対象のKenvueはJohnson & Johnsonから分離した消費者向けヘルスケア企業で、Tylenol、Neutrogena、Listerine、Band-Aidなどのブランドを持っています。
番組内で語られた内容
Kimberly-ClarkはKenvueを現金と株式の組み合わせで買収する計画です。取引完了後は、現在のKimberly-Clark株主が統合会社の約54%、Kenvue株主が約46%を保有する見込みです。
両社は、コスト削減と売上拡大を合わせた大規模なシナジーを想定しています。Kimberly-Clarkの製造・流通・小売企業との関係に、Kenvueの医療関係者との接点やヘルスケアブランドを組み合わせる戦略です。
株主投票はすでに承認され、取引は必要な規制当局の承認などを前提に2026年後半の完了が見込まれています。
クレイマーの評価
クレイマーはKimberly-Clarkに強気です。
約4.7%の配当利回り、割安な株価、生活必需品という守りの強さに加え、Kenvue買収によって成長率と利益率を改善できる可能性を評価しました。
ただし、次回決算がすぐに株価上昇のきっかけになるとは考えていません。むしろ決算後に売られれば、長期投資家にとって買いやすい機会になる可能性があると述べています。
成長材料
両社のサプライチェーン統合によるコスト削減
Kenvueブランドの成長立て直し
中国、メキシコ、韓国、インドネシアなどでの販路拡大
Kimberly-Clark製品のインド、西欧での成長
ヘルスケア・ウェルネス市場への事業拡張
主なリスク
最大のリスクは統合作業です。大企業同士の買収では、システム、製造、物流、組織をまとめるために時間と費用がかかります。
さらに、株式発行による既存株主の持ち分希薄化、追加債務、当面の自社株買い抑制も注意点です。Kenvueの医薬品ブランドを取り込むことで、製品訴訟や規制リスクも増加します。
日本人投資家が注意すべき点
高配当だけを理由に飛びつくのではなく、買収完了と統合後の進捗を確認したい銘柄です。
米国株の配当には米国と日本で課税されるため、確定申告による外国税額控除を検討できる場合があります。また、円高局面では配当金の円換算額も減少します。
現時点では、一括購入よりも、決算や買収手続きの進展を確認しながら長期の監視候補とする考え方が現実的です。
Visa・Mastercard・American Express
番組では、テクニカルアナリストのボブ・ラング氏によるチャート分析が紹介されました。
Visa(V)
Visaは株価が高値と安値を切り上げ、MACDと呼ばれる勢いを測る指標も強気の形を示していると分析されました。出来高を反映するOBVも上昇し、機関投資家からの買いが入っている可能性が指摘されています。
Visaは主に決済ネットワークを提供する企業で、American Expressとは異なり、原則としてカード利用者への貸し付けを自社で抱えません。そのため、貸し倒れリスクが比較的小さいことが強みです。
クレイマーとラング氏はともに前向きですが、決算前までに株価が上昇しているため、好決算でも利益確定売りが出る可能性があります。
Mastercard(MA)
Mastercardについても、株価の上昇トレンド、MACDの買いシグナル、出来高の増加が確認されました。
クレイマーはMastercardを「銀行の服を着たテクノロジー企業」と表現。半導体とは異なる形で技術を活用し、世界のキャッシュレス化から恩恵を受ける分散先として評価しています。
注目点は、決済額の伸び、海外取引、営業利益率、自社株買いと増配です。Visaと同様、優良企業でも決算前の株価水準には注意が必要です。
American Express(AXP)
American Expressは、富裕層や出張・旅行需要への強さを持っています。会員から年会費を受け取る独自のビジネスモデルも魅力です。
一方で、VisaやMastercardと異なり、貸し付けに伴う信用リスクを負います。景気が悪化した場合には、延滞率や貸倒引当金の増加が業績を圧迫する可能性があります。
クレイマーはAmerican Expressを高く評価していますが、同社株は好決算でも発表直後に売られ、その後持ち直すことがあると指摘しました。決算直前に追いかけず、発表後の反応を見て検討する姿勢が適しています。
PayPal(PYPL)
視聴者からの質問に対し、クレイマーはPayPalのリスクとリターンの関係が改善したとの見方を示しました。
割安な利益倍率、新経営陣による立て直し、買収候補になり得る可能性が材料です。ただし「非常に魅力的」ではなく、「良好なリスク・リターン」という控えめな評価でした。
また、PayPalよりVisa、Mastercard、American Expressを優先したいと述べています。
買収観測については番組内で触れられたものの、確定した事実ではありません。投資判断では、決済取扱高、アクティブ口座数、利益率、ブランド決済事業の成長を確認する必要があります。
3M(MMM)CEOインタビュー
どのような会社か
3Mは、接着剤、研磨材、工業用安全用品、電子材料、消費者向け製品などを手掛ける複合企業です。強みは素材科学と、幅広い産業へ技術を展開できる研究開発力にあります。
2026年第2四半期決算
3Mのウィリアム・ブラウン会長兼CEOが出演しました。
番組と同日に発表された決算では、調整後売上高が65億ドル、調整後オーガニック売上高が前年同期比5.4%増となりました。調整後1株利益は2.40ドルで11%増加し、調整後営業利益率は24.9%でした。
会社は2026年の調整後1株利益見通しを8.80~8.95ドルへ引き上げています。
クレイマーの評価
クレイマーは3Mに強気です。
以前の3Mは訴訟問題や成長停滞が投資家の関心を占めていましたが、ブラウンCEOの下で、製品開発、利益率、顧客対応が改善していると評価しました。
インタビュー後には、3Mは単に復活しただけでなく、今後さらに良くなるとの期待を示しています。
新製品と研究開発
3Mの新製品投入数は2023年に約125まで減少しましたが、2026年には350以上を計画しています。
売上高に占める新製品の比率を示す指標も改善しており、会社は将来的に25%を超える水準への回復を目指しています。
これは単なるコスト削減ではなく、再び成長企業へ戻れるかを測る重要な指標です。
Microsoftとのデータセンター事業
3MとMicrosoftは、AIデータセンター向け光接続技術で提携しています。
Microsoft Azureが採用する予定の「Expanded Beam Optics」は、従来の光コネクターより汚れに強く、設置や保守の負担を軽減できる技術です。ブラウンCEOによると、一部の環境では設置時間を大幅に短縮できる可能性があります。
データセンターでは小さな接続障害でも高額な停止損失につながります。3Mは半導体メーカーではありませんが、AIインフラを支える素材・接続技術を提供する企業として恩恵を受ける可能性があります。
主なリスク
PFASを含む過去の環境・製品訴訟
自動車や製造業の景気変動
新製品が計画どおり売上につながらない可能性
データセンター事業がまだ小規模であること
決算後の株価上昇を追いかけるリスク
3MはAI関連の成長性と産業株としての分散効果を併せ持つ監視候補です。ただし、決算後に株価が上昇しているため、購入価格には注意したいところです。
Lightning Round
Truist Financial(TFC)
クレイマーの回答:Truistを評価している
判定:やや強気
理由:割安な利益倍率と約4%の配当が魅力
補足:回答の後半ではKeyCorpにも好意的に言及しましたが、TruistよりKeyCorpを優先するという明確な比較ではありませんでした。
KeyCorp(KEY)
クレイマーの回答:直近の否定的な見方に対して株価が大きく崩れなかった点を評価
判定:やや強気
理由:悪材料への株価の耐性を前向きに見ている
注意点:地方銀行は金利、預金コスト、商業用不動産向け融資の影響を受けます。
Archer Aviation(ACHR)
クレイマーの回答:少額なら投機枠として保有可能
判定:慎重・投機的
理由:大きく下落しているため上昇余地はあるが、損失リスクも高い
補足:ポートフォリオの中で投機銘柄は1つに限定するという従来の方針を改めて示しました。
Ollie’s Bargain Outlet(OLLI)
クレイマーの回答:Ollie’sよりTJXを選びたい
判定:弱気
理由:決算で期待を下回る状態が続き、ディスカウント小売ではTJXの競争力が強い
補足:店舗体験にも以前ほどの勢いを感じていないと述べました。
TJX Companies(TJX)
クレイマーの回答:ディスカウント小売ならTJX
判定:やや強気
理由:同分野での競争力を評価
注意点:消費環境が悪化すると強みを発揮しやすい一方、仕入れ環境や人件費も確認が必要です。
ソフトウェア株はいつ復活するのか
番組の最後には、AIハードウェア株とソフトウェア株の格差が取り上げられました。
Salesforce(CRM)とAdobe(ADBE)は高値から大幅に下落し、Workday(WDAY)、ServiceNow(NOW)、Wix.com(WIX)、Intuit(INTU)などにも厳しい売りが続いています。
Adobe(ADBE)
AdobeはCanvaやFigmaとの競争に加え、生成AIサービスが既存製品の一部を代替するとの懸念を抱えています。
さらに番組放送時点では、CEOとCFOの後任人事が重要な不透明要因です。クレイマーは、大手企業が経営トップと財務責任者を同時に探している状況を厳しく批判しました。
株価が下がっただけで割安と判断せず、新経営陣とAI戦略を確認する必要があります。
ServiceNow(NOW)
クレイマーはビル・マクダーモットCEOの経営力と、AIを事業へ統合する取り組みを評価しています。
しかし、前回の好決算でも株価への効果は限定的でした。問題は業績そのものより、良い数字を出しても投資家が買いたいと思うかどうかです。
次回決算では、契約残高、サブスクリプション売上高、AI製品の契約拡大が注目点です。
Salesforce(CRM)
クレイマーは長年Salesforceを支持しており、AIエージェント製品「Agentforce」の可能性にも前向きです。
一方、AI事業が伸びても、既存事業全体の成長鈍化を補えるかはまだ明確ではありません。大規模な自社株買いだけでは、企業向けソフトウェアに対する市場の見方を変えられない可能性も指摘しました。
ソフトウェア株全体への評価
クレイマーは、これらを悪い会社とは評価していません。問題は、過去のような高成長が見込めず、株式市場がAIハードウェアばかりを評価している点です。
日本人投資家としては、値下がり率だけを見た逆張りを避けたいところです。
AIが既存製品の成長を促進しているか
AI機能の利用が売上につながっているか
顧客維持率が低下していないか
経営陣が競争環境を説明できているか
好決算に対して株価が反応するようになったか
これらを確認してからでも遅くありません。
番組から読み取れる市場テーマ
AI関連でも「集中」と「分散」は別問題
番組内でクレイマーはAIとテクノロジーに引き続き強気でした。ただし、AI関連株を何社も持つことと、資産が分散されていることは同じではありません。
日本人投資家の視点では、S&P500やナスダック連動型の投資信託を保有しながら、NvidiaやMicronを追加購入すると、意図せず半導体比率が高くなることがあります。
データセンター投資の恩恵は半導体以外にも広がる
3Mの光接続技術は、AIインフラ投資の恩恵が素材、通信部品、電力、冷却設備、建設へ広がることを示しています。
半導体株の値動きが大きすぎると感じる投資家は、周辺企業から監視候補を探す方法もあります。
生活必需品と決済株の再評価
Kimberly-Clarkは高配当と買収による成長、VisaやMastercardはキャッシュレス化、American Expressは富裕層消費という異なる投資材料を持っています。
高成長株だけでなく、安定した現金収入を持つ企業を組み合わせることが、今回の中心的なメッセージでした。
ソフトウェア株は「安い」だけでは反転しない
ソフトウェア株の復活には、AIへの懸念が和らぐだけでなく、実際の成長率が安定し、好決算に株価が反応する必要があります。
底値を正確に当てようとするより、業績と株価反応の改善を確認する姿勢が現実的です。
日本人投資家向けまとめ
今回もっとも重要だったのは、テクノロジー株を否定せず、それでも半導体への集中を避けるという考え方です。
Apple、Nvidia、Micronなどには引き続き成長余地があります。ただし、大幅上昇後の銘柄を信用取引で追いかけることは、企業の将来性とは別のリスクを生みます。
今後確認したい材料は次のとおりです。
半導体株の反発が一時的か、業績を伴っているか
Kimberly-ClarkとKenvueの買収承認・統合進捗
Visa、Mastercard、American Expressの決算と決算後の株価反応
3Mの新製品比率とデータセンター事業の売上拡大
ServiceNowやSalesforceのAI関連契約
Adobeの次期CEO・CFO人事
原油高と金利上昇が消費や企業投資へ与える影響
すぐに売買するより、まず保有資産の業種別比率を確認したいところです。半導体が多すぎる場合は、生活必需品、決済、産業株などを監視候補に加える方法があります。
一方、高配当株にも買収や債務のリスクがあり、下落したソフトウェア株が自動的に割安とは限りません。決算確認後に検討する、押し目を待つ、長期目線で経過を見るといった慎重な対応が適しています。
免責事項
本記事は、公開されている番組内容をもとに情報を整理・解説したものであり、特定の金融商品の売買を推奨するものではありません。記事内の情報は作成時点のものであり、その正確性や完全性を保証するものではありません。投資判断は、ご自身の責任で行ってください。
出典
元動画:YouTube「Mad Money 07/21/26 | Audio Only」
補足資料
#米国株
#MadMoney
#ジムクレイマー
#半導体株
#AI投資
#3M
#高配当株
#クレジットカード
#資産分散