
VYLRは買える?SLBのAI成長とNikeの立て直しを考える|Mad Money 2026年10月2日
今回の「Mad Money」は、翌週の決算予定を確認しながら、事業の変化が株価の評価につながるかを考える回です。
石油サービス大手SLBは、データセンターの建設と冷却へ事業を拡大。Cortevaから分離したVylorは、種子・遺伝子技術の競争力が評価されました。一方、AIへの利用意欲と信頼には隔たりがあり、Nikeの再建にも時間が必要だと見ています。
※株価、騰落率、利回り、予想倍率、銘柄判断は、原則として番組放送時点のものです。会社の目標やアナリスト予測は、実績とは区別して記載しています。
今回の要点
1.雇用の減速だけでは、相場の不安は解消しない
弱い雇用統計は利上げへの警戒を和らげましたが、金利と原油価格は引き続き重荷です。翌週の決算では、消費の弱さやコスト上昇への対応を確認します。
2.SLBとVylorは、既存の技術を成長につなげられるか
SLBは複雑な設備を設計・製造する経験をAIインフラへ応用。Vylorは種子の研究開発とライセンス収入が強みです。ただし、事業の魅力だけで、株価や計画実行のリスクがなくなるわけではありません。
3.人気や経営者への信頼を、買い判断と混同しない
AIは利用を増やしたい人が多くても、信頼性や接客には課題が残ります。Nikeでも、クレイマーはCEOを評価しながら、株を買うことには慎重でした。
翌週の注目予定:金利・原油と消費企業の決算
10月2日はダウ平均が約250ドル高、S&P 500が0.73%高、NASDAQが1.19%高でした。
9月の米雇用統計では、非農業部門雇用者数の増加は2万9,000人。クレイマーは、雇用の減速が目先の利上げを急ぐ必要性を弱めると受け止めました。ただし、朝に低下した金利はその後上昇へ転じ、株価の上げ幅を抑えています。
原油については、番組で取り上げた備蓄放出の効果に注目。クレイマーは、価格が80ドル台まで下がれば市場心理が変わりやすいと考えています。それまでは、株価が上がっても売りが出やすいという見方です。
以下の日付は米国現地時間です。放送時点で紹介された予定として整理します。
10月5日(月):原油価格の反応
備蓄放出を受け、原油が継続的に下がるかを確認。単日の下落より、インフレへの懸念が和らぐかが焦点です。10月6日(火):FRB発言、Marvell、Constellation Brands
ニューヨーク連銀のジョン・ウィリアムズ総裁の発言で、雇用と賃金の減速への評価を確認します。Marvell(MRVL)の投資家説明会には、AI向けカスタム半導体と長期需要の説明を期待。取引終了後に決算を発表するConstellation Brands(STZ)は、酒類需要の弱さが課題です。10月7日(水):Levi Strauss(LEVI)
決算で消費者の購買意欲を確認。燃料費や金利が家計を圧迫する環境では、衣料品企業に求められる業績の水準も高いと見ています。10月8日(木):PepsiCo(PEP)
Frito-Layのスナック事業が焦点です。番組では、PEPの年初来約12%安に対し、Coca-Cola(KO)は約22.5%高と紹介。利回り約4.7%でも、米10年国債利回り約5.28%の環境では、配当だけを理由に買う魅力は弱いとしました。10月9日(金):Delta Air Lines(DAL)、ミシガン大学消費者調査
航空需要や経営陣の見通しに加え、消費者のインフレ予想を確認します。Deltaの機内通信を巡る話題にも触れましたが、翌週の相場を考えるうえでは、需要とコストの説明が中心です。
酒類やスナックの弱さについて、クレイマーは健康志向、若年層の嗜好、GLP-1薬の普及なども背景として挙げました。
SLB:石油サービスの技術を、AIデータセンターへ
SLB(SLB)のデータセンター事業担当幹部、Amy Chua氏が出演しました。
SLBは、石油・ガス分野で培った設計、製造、調達の経験をデータセンターへ応用しています。最初の設備納入は2024年だったと説明しました。
工場で作り、現地でつなぐ
同社の方式は、データセンター設備を工場で製造し、現地で組み立てるものです。従来の建物を小さく分割するだけでなく、製造、輸送、据え付けまでを考えて設計します。
接続や品質を工場で確認し、現場での手直しを減らす狙いです。AI向け設備では、完成までの時間も競争力になります。
NVIDIAとの提携では、モジュール式AIデータセンターのDSX参照設計に対応。番組では、カナダ・アルバータ州にあるMetaの1ギガワット規模の計画も取り上げ、SLBが設計、工場での組み立て、現地での設置・稼働準備を担うと説明しました。
冷却技術の買収は、規模拡大への一手
GPUは計算能力と同時に大量の熱を生みます。SLBが取得を発表したKelvionの熱交換技術は、こうした設備の冷却を支えるものです。
公式発表は8月31日で、買収総額は約41億ドル。内訳は現金約34億ドルと、引き受ける債務約7億ドルです。買収完了には承認などの条件があり、発表時点で完了済みという意味ではありません。
SLBは、Kelvionを含むデータセンター事業について、2028年に売上45億~50億ドル、調整後EBITDA7億~8億ドルを目標としています。
クレイマーは、CaterpillarやEatonのように、製造技術をAI設備投資へ広げる企業として評価しました。買収の実行、納期、採算が今後の確認点です。
Vylor:買うなら段階的に。Cortevaは実績待ち
Vylor(VYLR)は10月1日、Corteva(CTVA)から種子・遺伝子事業を分離して独立しました。残るCortevaは、農薬などの作物保護事業が中心です。
分離に伴うCortevaの株価調整は、分配されたVylor株も合わせて見る必要があります。見かけの下落が、そのまま保有資産全体の損失を示すわけではありません。
種子の強みは、研究開発と参入障壁
Vylorは、番組で紹介した売上構成ではトウモロコシが約71%、大豆が約18%。クレイマーは、高性能な種子ではVylorとBayerが強い地位を持つと説明しました。
遺伝子研究、規制上の承認、農家との関係が参入障壁です。特許切れにも、より優れた新品種を開発して対応します。
種子そのものの販売に加え、開発した形質を他社へ提供し、使用料を得る事業もあります。番組で紹介したFirmiumの予測では、このライセンス収入は2027年に約5億ドル、2030年に約7億5,000万ドルへ拡大する見通しです。
経営陣は、今後10年で12の技術プラットフォームを投入する計画を示しています。遺伝子編集による耐病性の改善や、2027年からの初期投入を目指すハイブリッド小麦も、成長の選択肢です。
良い事業でも、すでに高い評価を受けている
番組で紹介したVylorの株価は約67ドル。アナリストの目標株価はFirmiumが75ドル、Morgan Stanleyが85ドルでした。
ただし、予想PERは当年利益で30倍超、翌年利益で25倍超。クレイマーは、希少性と技術力には高い評価がふさわしいとしつつ、急成長企業ではないため、業績が期待を下回った場合の余裕は小さいとしました。
2027~2029年に年約10億ドルの自社株買いを行う構想も紹介されましたが、確定した実施実績ではありません。
Vylor(VYLR):段階的な購入に前向き
技術、顧客関係、ライセンス収入を評価。割高感を認めたうえで、少しずつ保有を増やす判断でした。Corteva(CTVA):当面は見送り
予想PERは当年約21倍、翌年約19倍でも、中国などの後発品との競争が重荷です。会社が掲げる2026~2029年の売上年率約3%成長、EBITDA約6%成長を、新製品と効率化で実現できるかを待ちます。
Cortevaは差別化した製品が売上の約65%まで増えても、旧製品への価格圧力が残ります。
HundredX調査:AIを使いたい人と、信頼する人は同じではない
消費者調査会社HundredXの創業者兼CEO、Rob Pace氏が出演。購入・利用を今後増やす意向などを調べる同社のデータを紹介しました。
番組で紹介された調査では、AIは「利用を増やしたい」という評価が、追跡する101業種のなかで首位。Claudeも同じ指標で約6,000ブランドの首位でした。これは利用者の意向を示す評価で、技術性能や市場シェアの順位ではありません。
一方、調査対象のAI利用者が信頼性の問題を挙げる割合は、以前の約6人に1人から、約5人に1人へ増えたと説明しました。便利さを評価する人にも、誤りへの懸念があるということです。
接客では「AI搭載」より、体験が良くなること
銀行や飲食店の利用体験についてAIの影響を尋ねても、多くの回答者は取り上げませんでした。言及される場合には、良い点より問題として挙げられる傾向があったそうです。
例として挙がったのが、ドライブスルーの注文です。曖昧な言い方や途中の注文変更を扱うには、まだ課題があります。小規模事業者の利用意欲が強くても、顧客対応のすべてを任せられる段階とは限りません。
クレイマーは、こうした現実を踏まえ、ソフトウェアやコンサルティングが一夜で置き換わるという見方に慎重でした。
地域への説明も、成長の条件になる
AI業界は、信頼、社会への姿勢、持続可能性の評価でも課題を抱えています。Pace氏は、Metaが地域への貢献や環境への対応を具体的に伝え、調査上の評価を改善した例を紹介しました。
顧客や地域の人にどんな利点があるかを示すことが必要です。これらの数字はHundredXの調査対象者についての結果です。
視聴者からの質問:半導体設備、銀行、農業関連
Applied Materials(AMAT):保有継続
見た目の予想PERが高くても、利益が予想を上回れば評価は変わります。メモリー不足を解消する設備投資には、同社の装置が必要だとしました。Simon Property Group(SPG):買い増しに前向き
アウトレット運営の質を評価。自身が訪れたイタリアの施設での体験も、事業への信頼を支えています。Goldman Sachs(GS):下落時に段階的な購入
番組で紹介した予想PERは約13倍。底値を言い当てることを前提にせず、下がる過程で少しずつ買う考え方です。Texas Pacific Land(TPL):石油関連ではChevronを選好
TPLへの明確な売買判断は示さず、石油分野の保有候補をChevron(CVX)へ絞る立場でした。資産の地域分散と事業基盤を評価しています。Deere(DE):強気
製品と長期の実績を高く評価。質問にあったトウモロコシ価格の底入れを断定するのではなく、会社自体の質を支持しました。Nutrien(NTR):見送り
肥料供給を巡る地政学的な材料による取引は、すでに一巡したと判断。株価の割高感より、特定の出来事に左右される投資の難しさを理由に慎重でした。
Lightning Round:3銘柄の判断
Quanta Services(PWR):買いに前向き
52週高値から約15%下落しても、インフラ建設需要は続くと判断。選挙を巡る不透明感が薄れれば、建設が進みやすくなると見ています。Planet Labs(PL):買いに前向き
会社とCEOのWill Marshall氏を評価。急騰後の下落は終わりに近いという判断でしたが、これはクレイマーの相場観であり、底値が確認されたという意味ではありません。Duke Energy(DUK):買える水準。ただし価格を意識
下落後は購入可能としつつ、番組で紹介された利回り約3.8%より、4%台での購入を望みました。米5年国債の約5%という利回りが、配当株の競争相手になっていると説明しています。
Nike:CEOを応援しても、株は買わない
Nike(NKE)は10月1日、2027年度第1四半期の決算を発表。公式資料では売上約112億ドル、前年同期比4%減、希薄化後EPSは0.48ドルでした。
クレイマーは、CEOのElliott Hill氏の経験と率直な説明を評価しました。それでも、決算と見通しを踏まえ、株を買うことには否定的です。
中国、スポーツウェア、Jordanの3つの課題
Greater Chinaの売上は為替変動を除いて26%減。スポーツウェアも低い2桁台の減収となり、Jordanでは定番の復刻商品を供給しすぎたことが問題として挙がりました。
クレイマーは、前経営陣の直販重視が卸売先との関係を弱め、New Balance、On、Hoka、Adidasなどに機会を与えたと考えています。関係を修復しても、競争力がすぐに戻るとは限りません。
中国での地元ブランドとの競争や、ライフスタイル分野の過当競争も重荷です。女子バスケットボール、ランニング、サッカーで改善していても、弱い部門の減少を埋め切れていないと見ています。
配当の説明だけでは、再建への不安は消えない
番組では、CFOが配当を守る姿勢を示したことにも触れました。減配が発表されたわけではありません。ただしクレイマーは、成長が安定して戻るまで、市場の疑念は残りやすいと考えています。
11月の投資家説明会に期待があっても、それだけで短期に立て直せるとは判断しません。Nikeの焦点は、有名なブランドや経営者への期待より、中国、主力商品、流通の改善が数字に表れるかです。
日本の投資家が確認したいこと
次の決算では、事業の強みが利益に表れているかと、その利益に対して株価が高すぎないかを確認します。配当株でも、利回りだけでなく、利益の持続性と金利環境を合わせて見ることが手掛かりになります。
※本記事は番組内容と公開資料の要約であり、特定の金融商品の売買を勧めるものではありません。
出典
#米国株 #MadMoney #ジムクレイマー #Vylor #Corteva #SLB #Nike #AI #データセンター #決算 #投資