
CoreWeaveは買い場か?AI株の反発と金利リスクをどう読む|Mad Money 2026年10月19日
AI関連株が急落後に反発しても、それだけで安心できるわけではない。10月19日の『Mad Money』でジム・クレイマーが考えたのは、足元の売りが企業の業績を反映しているのか、それとも借入を使って投資していた資金の撤退によるものなのか、という問題だった。
番組の中心はCoreWeaveを起点とするAIインフラ株の動揺と、買い戻しを強める前に確認したい4つの条件。Paychexの経営者インタビューでは、AIを使った人事・税務サービスが、顧客にどのような価値を提供するかが語られた。以下、銘柄への評価は番組時点のクレイマーの見方として整理する。
今回の要点3つ
AI株の急落には、企業業績以外の売買要因も考えられる。 クレイマーは、借入の多いファンドによる強制的な売却の可能性を指摘した。ただし、特定ファンドの破綻を確認したという話ではなく、反発だけで底打ちを断定してもいない。
AIインフラの成長を左右するのは、需要に加えて資金調達条件。 CoreWeaveの事業を評価しながらも、長期金利や社債利回りの上昇を警戒した。AI需要が強くても、設備投資を賄う資金が高くなれば利益や拡張計画に影響する。
Paychexでは、人事業務の外部委託とAIによる実務支援に注目。 顧客が単体の給与・人事システムから、専門家を含む包括的なサービスへ移る動きを評価。新しい税務ペナルティ保護サービスも、その具体例として取り上げられた。
反発の理由を、企業の変化と投資家の事情に分けて考える
この日は1987年のブラックマンデーから39年。クレイマーは当時の経験を振り返り、売り手が資金繰りや借入の返済に追われると、企業の中身とは別の理由で株が売られることを説明した。
先週のAI関連株の下落についても、借入を使って大きなポジションを持っていたファンドが売却を迫られた可能性を挙げた。もし売りが一巡すれば、悪材料が新しく解消しなくても株価は戻り得る。企業への評価だけを読んでいては、短期の大きな値動きを説明できない場合がある、という見方だ。
ただし、この説明は番組内の仮説である。強制売却が原因だったと確定したわけではなく、月曜日の反発がその証明になるわけでもない。クレイマー自身も、AI関連全体にすぐ強気へ転じる姿勢は示さなかった。
その理由は、売買の偏りが解消しても、金利や資金調達の問題までは消えないからだ。ファンドの売却が止まることと、データセンター事業の収益性が改善することは、それぞれ確認する必要がある。
売りはクラウドからメモリー、光通信、製造装置へ広がった
今回の調整でクレイマーが強調したのは、AI関連の中でも下落の広がりが大きかったことだ。GPUを備えた計算基盤を貸す新興クラウド企業だけでなく、メモリー、ストレージ、光通信、半導体製造装置にも売りが及んだ。
CoreWeave、IREN、Applied Digitalなどは、設備を先に整備して将来のサービス収入を得る事業として、資金調達への不安を強く受けた。一方、MicronやSK hynixのようなメモリー企業にも売りが波及したことから、個社の材料を超えてAI投資全体への警戒が広がったと捉えている。
光通信ではLumentumやCoherent、製造装置ではApplied Materials、Lam Research、ASMLなどにも言及。好決算が出ても株価が上がらない状況は、投資家が今期の数字だけでなく、その後の投資サイクルや資金の流れを心配していることを示す、という説明だった。
対照的に、既存の大きな事業基盤を持つAlphabet、Microsoft、Amazon、Metaは、同じAI投資に関わっていても値動きが一様ではなかった。Amazonの反発にはアナリストの評価引き上げも触れ、Appleについては相対的な底堅さを取り上げた。
Micron Technology(MU):事業には引き続き強気
クレイマーの慈善信託でも保有する銘柄として支持した。株価が売られていることと、メモリー事業への評価を分けており、今回の下落によって企業への見方を全面的に変えたわけではない。Apple(AAPL):相対的な底堅さを評価
AI設備投資への不安が強い相場で、株価が比較的しっかりしている点を評価した。AI関連の急落を説明する場面での比較であり、具体的な新規購入価格を提示した話ではない。
AI株への買いを強める前に確認したい4つの条件
クレイマーは、反発した日に慌てて追いかけるよりも、次の材料を確認したいと述べた。短期のチャート、企業の収益化、政治、上場による資金の移動を組み合わせた見方である。
1.チャートが改善し、高値と安値を切り上げること
半導体ETFのSMHや、メモリー関連に投資するRoundhill Memory ETF(DRAM)について、天井を2回つける「ダブルトップ」などを警戒した。ほかにも下落を示唆する形が目立つとし、1日の大幅反発だけでは十分と考えていない。
見たいのは、株価が高値と安値を順に切り上げ、Nasdaq総合指数やNasdaq100が50日移動平均線を回復するような動きだ。7月の安値が支えになっている点は評価したが、それだけで上昇トレンドの再開を宣言する姿勢ではなかった。
これらはクレイマーのテクニカル面の判断であり、形が整えば必ず上がるという予測ではない。DRAMはメモリー関連企業を対象とするETFで、半導体全体を見るSMHと、確認している事業範囲が異なる点も押さえたい。
2.巨大IT企業が、設備投資と収益化の両方を説明すること
次に注目したのは、AI設備投資を担う大手企業の決算だった。投資計画を維持するだけでなく、その投資がクラウド売上や顧客の支払いにつながっているかを確認したい、という立場だ。
番組ではSpaceX、Meta、Alphabet、Microsoft、Amazonの決算に言及。SpaceXは公式IRでも、10月20日に第3四半期決算の説明を予定していることが確認できる。市場が心配するのは設備の発注額だけではなく、その先で現金を生み出せるかどうかである。
クレイマーは、2027年にAI投資の成果を回収できるという、より明確な説明を企業側に求めた。これは彼が決算で聞きたい内容であり、各社がすでに2027年の利益や売上を保証した、という意味ではない。
設備投資が増えるという発表は、供給側の企業にとって支援材料になる。ただし、利用企業の売上や生産性がそれに見合う形で伸びなければ、将来の投資継続への疑問は残る。支出の大きさと投資成果を一緒に見ることが、この条件の中心だった。
3.中間選挙を通過し、データセンター建設の政治的な不透明感が薄れること
11月3日の中間選挙も確認材料に挙げた。データセンター建設を巡っては、地域社会との調整や政治的な反対が投資計画に影響するため、選挙前の環境では見通しを立てにくいと考えている。
選挙後は企業と地元側の交渉が進みやすくなる、というのがクレイマーの期待だ。ただし、11月4日になれば建設が一斉に進む、あるいは株価が底を打つという確定的な日程を示したわけではない。政治的な節目を通過した後の実際の動きが重要になる。
4.AnthropicのIPOが、需要と市場の資金余力を確認する機会になること
AnthropicのIPOも、AI関連株を見る上で大きな材料として取り上げた。上場が実現し、投資家の需要が強ければ、AI事業への評価を確かめる機会になる。一方、大型の新規上場へ資金を回すため、既存のAI関連株が売られる可能性にも注意した。
クレイマーが望むのは、上場を巡る不確実性を通過することだ。番組内で触れた上場時期は確定した公式日程として扱えず、IPOが成功すればAI関連企業すべての利益が保証されるわけでもない。新しい銘柄の人気と、既存企業の業績は別に評価する必要がある。
CoreWeaveの焦点は、AI需要を賄う資金を確保できるか
番組の締めで再び取り上げたのがCoreWeaveだった。クレイマーは同社をAIインフラ構築の有力企業として評価し、GPUの将来的な価値よりも、足元では金利と資金調達環境を心配していた。
CoreWeave(CRWV):事業を評価しつつ、金利面では慎重
AI需要の強さを否定せず、同業の中での実行力を評価した。一方、大規模な設備投資を続けるには資金が必要であり、社債市場が要求する利回りの上昇は軽視できないとした。
番組で示した米30年国債利回りは約5.47%。これが6%を超えるようなら、AIインフラの資金調達に一段と強い圧力がかかると警告した。この6%はクレイマーの警戒水準であり、CoreWeaveの契約上の財務制限や、直ちに債務不履行となる条件ではない。
また、CoreWeaveの社債利回りが約15%になっているとの説明もあった。ここでの利回りは市場で取引される債券の価格を反映したもので、同社が既存借入のすべてに15%の利息を支払っている、という意味ではない。固定金利の既発債なら、市場利回りの上昇で契約上の利払いが自動的に変わるわけではない。
問題になるのは、新たに借りるときや借り換えるときの条件だ。金利が高くなれば、新しい設備から得る収入が増えても、その一部が資金調達費用に吸収される。株式発行に頼れば、既存株主の持ち分が薄まる可能性もある。需要の伸びだけでは、株主が受け取る利益まで判断できない。
補足として、CoreWeaveの公式第2四半期決算では、売上高25.75億ドルに対し、純支払利息は6.40億ドル、純損失は6.26億ドルだった。6月末の受注残は約1,040億ドルだが、サービスの提供・利用可能性などの条件を満たして将来売上になるもので、手元現金とは異なる。需要と財務負担を併せて読む必要があることは、決算からも分かる。
クレイマーはNebiusやIRENについて、CoreWeaveより心配しているとも述べた。ただし、これは彼の相対的な評価であり、各社の債務条件を同一基準で精査した比較結果として示されたものではない。新興クラウド企業をひとまとめにして、同じ借入コストや信用力と考えることは避けたい。
Paychex:人事の外部委託と、AIが引き受ける実務の価値
Paychexのジョン・ギブソンCEOとの対談では、中小企業が人事・労務の複雑さにどう対応するかが中心となった。給与計算などを個別に導入する顧客から、助言や実務支援をまとめて求める顧客への移行が進んでいるという説明だ。
特に、専門家による支援や、従業員関連業務を包括的に受託するPEOへの需要を強調した。CEOはこうしたサービスへの移行が想定を上回ったと述べ、単にソフトウエアの機能を増やすだけでなく、経営者が抱える実務を引き受けることに価値があると説明した。
公式の2027年度第1四半期決算は、売上高が前年同期比6%増の16.305億ドル、PEO・保険サービス売上高が12%増だった。調整後EPSは10%増の1.34ドル。番組で触れた42%の営業利益率は調整後の数字で、GAAPベースは38%である。通期のPEO・保険サービス売上成長率見通しは、従来の6〜7%から7〜8%へ引き上げられた。
AIでは独自基盤「WISE」、採用支援、Microsoft製品との連携を取り上げた。蓄積した業務データと専門家の知識を組み合わせ、経営者が普段使う環境から必要な支援を受けやすくする構想だ。
10月19日に発表した「Tax Penalty Protection Service」も具体例となった。税務上の問題を調査し、税務当局への訂正や減免の働きかけなどを行い、それでも解決できない場合に対象となるペナルティや利息を負担する仕組みである。Paychex Flexの顧客向けで、適用条件や上限がある。
Paychex(PAYX):事業の強さとAI活用に前向き
人事業務への専門性と、AIによる実務支援を評価した。利用者への回答にとどまらず、問題解決や一定の金銭的な保護まで提供するサービスとして注目。具体的な買い値を示す推奨ではなく、事業モデルへの肯定的な評価だった。
視聴者相談・ライトニングラウンドの銘柄判断
SoFi Technologies(SOFI):銀行株全体の回復待ち
市場では銀行として取引され、他の銀行より高い評価を受けている点を指摘。銀行株全体が弱い間は、単独で力強く上昇することを期待しにくいとした。積極的な買い増しを促す回答ではなかった。Allstate(ALL):追加購入は決算待ち
割安さを認めながらも、すでに株価が戻った点を重視。評価倍率が少し上がる期待だけで追いかけず、決算を確認してから判断したいという姿勢だった。CrowdStrike(CRWD):一部利益確定後の残り保有を支持
大きな含み益があり、すでに一部を売却した視聴者に対し、残りを持ち続けることに肯定的だった。取得価格より今後の会社の見通しを重視する回答であり、残った株の値下がりリスクがなくなるという話ではない。AppLovin(APP):見送り
Alphabet傘下のGoogleとの競争を警戒した。株価の安さより、強い競争相手が事業に及ぼす影響を重く見た回答だった。Vale(VALE):肯定的
鉱山会社として支持した。視聴者は銅に注目して質問したが、同社を銅だけの専業企業として捉えるのは適切ではない。MFA Financial(MFA):強い見送り
保有する住宅ローン関連資産を評価する難しさと、投資成果への不満を示した。これはクレイマーの投資判断であり、会社に不正があると確認した発言ではない。Kratos Defense & Security Solutions(KTOS):慎重
防衛関連株への市場の評価が厳しいことを理由に、現時点では手を出したくないとした。事業の長期見通しを詳しく論じた回答ではなく、足元の相場環境を重視している。Twilio(TWLO):中立・適正評価
現在の評価に大きな割安感を見いださず、強い買い材料も売り材料も挙げなかった。急な株価下落には注意を向けたが、積極的な購入には踏み込んでいない。新薬承認を期待する小型バイオ:慎重
承認への期待だけで判断せず、大手製薬企業との競争も考えるべきだとした。治験や承認の先行きに依存する銘柄への、慎重な回答だった。Cintas(CTAS):事業は高評価、購入は押し目待ち
会社そのものには好意的だったが、株価上昇後の水準を追いかけることには慎重。値下がりした場面で買いたいという姿勢を示した。
※本記事は番組内容の要約と一次資料による補足であり、特定銘柄の売買を勧めるものではありません。相場への評価は2026年10月19日の放送時点です。