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1年間休業しても大丈夫?!オリエンタルランドが”異例の”融資枠の申請もまだ余裕のわけ

    先日ディズニーリゾートを運営するオリエンタルランドが2,000億円の融資枠の要請をしたというニュースがありました。

    不測の事態に備えて手元資金を厚くすることが目的とされていますが、実態はどうなのか、今回はオリエンタルランドの財務状況を見てみたいと思います。

    固定資産を多く抱える企業とは思えないほど”盤石な財務基盤”

    オリエンタルランドはご存じのとおり、ディズニーランドやディズニーシーのほかにホテルの運営を主たる事業としているほか、イクスピアリやモノレール事業を展開しており、設備投資が前提のビジネスモデルなので、固定資産を多く抱えている会社です。

    ただ、大きな特徴は、”多額の設備投資を基本的に自己資本(返さなくていいお金)で賄っている”という点です。

    BSを見ると固定資産の多さは当然ですが、視覚的にも負債が非常に少ないことがわかります。

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    【安全性の指標の簡単な説明】
    ・流動比率=流動資産÷流動負債×100(%)
    流動資産や現預金や1年内で回収見込みの短期債権等の合計。流動負債は1年内に支払いが必要な債務等。短期的な支払い能力を示し、高ければ高いほど安全性が高い。一般的な業種では100%を下回ると良くなく、200%を超えると優秀。
    ・固定比率=固定資産÷自己資本×100(%)
    固定資産の取得のための資金が、返済不要な自己資本でどの程度賄っているかを示す指標。低ければ低いほど安全性は高く、100%が1つのベンチマーク。
    ・自己資本比率=自己資本÷総資本(=総資産)×100(%)
    必要な資金を、返済義務のない自己資本でどれくらい賄っているかの指標。高ければ高いほど安全性が高い。低い場合は、返さなけいけないお金で必要資金を賄っている比率が高いことを意味する。

    会社の安全性の指標としてよく使われる流動比率、固定比率、自己資本比率を見るとそれぞれ理想とされるベンチマークを大幅に上回っています。

    約300~500億円毎年設備投資をしているにもかかわらず、ここまで健全な財務基盤を持つ会社はそうそうないでしょう。

    ちなみに、オリエンタルランドは、2021年以降の方針の一環で、2,500億円の「大規模拡張プロジェクト」を実施予定ですが、これも(計画時点では)資金調達をする予定はなく手元のキャッシュで実施する予定だったようです。

    新たに開発する 8 番目のテーマポートは、「魔法の泉が導くディズニーファンタジーの世界」をテーマとし、ディズニー映画『アナと雪の女王』『塔の上のラプンツェル』『ピーター・パン』の世界を、本プロジェクトのために新たに開発する 4 つのアトラクションなどで再現した 3つのエリアと、パーク内に位置し、最上級ランクの部屋を有するディズニーホテルで構成されます。
    この「東京ディズニーシー大規模拡張プロジェクト」では、既存施設への追加投資として過去最高となる約 2,500 億円をかけ、東京ディズニーシー開業以来最大の面積を拡張し、2022年度中(後に2023年度に変更)の開業を目指します。
    (株式会社オリエンタルランド ニュースリリースより抜粋)

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    (株式会社オリエンタルランド HP より抜粋)

    また、コロナの影響でオープンが伸びていますが、「美女と野獣”魔法のものがたり”」という大型アトラクション等にも直近で約750億円の投資をしています。

    USJが社運をかけて投資した「ハリー・ポッター」エリア(約450億)、直近でオープン予定の「任天堂エリア」(約500億円)と比較しても規模の大きさは際立っています。

    「ディスニーランドは永遠に完成しない」というウォルト・ディズニーの言葉のとおり、常に新しい夢とアイディアでパークを改良し続けていっています。

    そして、この継続的に怒涛の設備投資をするオリエンタルランドの盤石な財務体質を支えるのが安定して右肩上がりの売上高と圧倒的な利益率です。

    オリエンタルランドの営業利益率は驚異の20%超、EBITDAマージンは30%超

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    EBITDA=営業利益+減価償却費
    固定資産の大きいオリエンタルランドではEBITDAも重要な指標です。

    オリエンタルランドの売上高は文字通り右肩上がりに増加し続けています。圧倒的なブランド力は言うまでもなく、企業努力やキャストの方々のたゆまぬ努力によって、年々少しずつ増加しているチケット料金をはるかに上回る満足感が人を呼び続けているのでしょう。

    ”夢の国”の数字を話すのは野暮な感じはしますが笑、心を無にして数字だけ見ると営業利益率は非常に高く、安定して20%を超えており、EBITDAマージンに至っては30%を超えています。

    そして、営業活動から得られるキャッシュはなんと年間で1,200億円程度あります。上述のとおり通常年でも常に設備投資を年300~500億円実施していますが、それでも手元には500~800億円程度のキャッシュが残ります。(直近では多額の設備投資をしていることや、一部定期預金等に預けている関係もありフリーキャッシュフローはこれよりも小さい数字になっていますが、2012-18年までのフリーCFの平均は約660億円です)

    2,500億円の投資は大規模ですが、基本的に資金調達は不要であることも頷けます。

    (参考:USJは上場企業ではないため、直近の決算情報がすぐにわからず、また少し古いデータですが、以下のUSJの数字を見ると売上高、営業利益ともに、業界のガリバーであるTDRとは開きがあることがわかります。)

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    (「安全問題浮上のUSJ、9年連続値上げの通信簿」2018年 東洋経済記事より抜粋)

    ”業界のガリバー”の事業リスクは地震、テロ、そして感染症

    少し脱線しますが、オリエンタルランドの事業リスクを見ると大きく3つ挙げています。

    ■事業等のリスク
    (1) 東京ディズニーリゾートのブランド低下に関するリスク
     ① ハード面(施設・サービスなど)のクオリティ
     ② ソフト面(キャストのホスピタリティなど)のクオリティ
    (2) オペレーションに関するリスク
     ① 製品の不具合
     ② 法令違反
     ③ 情報セキュリティ
    (3) 外部環境に関するリスク
     ① 天候
     ② 災害
     ③ テロ・感染症
     ④ 景気変動
     ⑤ 法規制など
    (「株式会社オリエンタルランド 有価証券報告書」2019年3月期より抜粋)

    このうち(1)と(2)はある意味自分との戦いです。大体の企業は競合企業との競争環境等も事業リスクとしてあげますが、USJをV字回復に導いた森岡毅氏も東京ディズニーリゾートとUSJには「3万円の川」があると述べているように、テーマパークで唯一ちゃんと競合しうるUSJとの間にも、競合のリスクは低いのでしょう。

    参考:「3万円の川」の話
    「そもそも、USJとTDR(東京ディズニーリゾート)の間には激しい集客競合がほとんどないのです。その証拠に、この数年間で急激な2桁成長を続けるUSJですが、TDRはその煽りを受けるどころか、ちゃんと集客をのばしていますよね?
    その理由は、東京と大阪の間には交通費という「3万円の川」が流れているからです。両方のマーケットは分断されているのです。」
    (「USJのジェットコースターはなぜ後ろ向きに走ったのか?V字回復をもたらしたヒットの法則」2014 森岡毅)

    そんな”業界に敵なし”のオリエンタルランドがコントロールできない最大の事業リスクが、「災害、テロ、感染症」等の外部環境です。

    オリエンタルランドはこうした、不測のアンコントローラブルなリスクに対して、財務面では地震に備えたファイナンスを実施するなど、備えてきていましたが、今回のコロナはまさに未曾有の事態です。1ヵ月(それも1年の最繁忙期の3月)丸々休業となった2020年3月期 第4四半期(1-3月期)は東日本大震災以来9年ぶりの四半期営業赤字(△41億円)となりました。

    では、実際オリエンタルランドの手元の資金余裕はどれくらいあるのでしょうか?

    1年間休業していても固定費を賄える程度のキャッシュが手元にある?!

    オリエンタルランドの直近の四半期の数字をもとに、変動費率(売上高のうち何%が変動費か)と固定費、及び損益分岐点売上高を計算すると以下のようになりました(簡便的に計算しているため、実際と乖離がある可能性がありますがご容赦ください)。

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    ■変動比率、固定費、損益分岐点売上高の出し方が気になる方へ(省略可)
    ・変動比率(売上高のうち何%が変動費か)と固定費
    便宜上変動費は売上高と完全に連動して増減するとします。2020年3Q→4Qで売上高は47.6%減少しているため、変動費も47.6%減少しているはずです。一方で固定は3Qと4Qで一定とします。そうすると後は算数です。
    101,678-78,421=16,357 →これが変動費が47.6%減少分のはずなので、
    3Qの変動費は16,357÷47.6%=34,340になります。
    34,340÷141,777=24.22%なので変動費率は約24%となります。
    また、固定費は101,678-34,340=67,338となり、約670億円となります。
    ・損益分岐点売上高
    損益分岐点売上高=固定費÷(1-変動比率)で計算できます。
    当てはめると、67,338÷(1-24.22%)=88,861となり、約890億円となり、
    便宜的な計算上、四半期で890億円以上の売上になれば黒字になることになります。

    固定費が四半期で約670億円程度あることから、休業中の1ヵ月のキャッシュアウトは約200億円程度と推測できます。
    (固定費には、キャッシュアウトの伴わない減価償却費が含まれています。減価償却費は直近で年間で380億円程度もありますが、一方で、大規模拡張を除いても最低限設備投資に300~500億円程度かけてきていることから、今年も減価償却費程度の設備投資は行うと仮定します。)

    一方で、手元のキャッシュが約2,600億円なので、単純計算で、1年間休業していても固定費を賄える分程度のキャッシュが手元にあることになります。

    圧倒的な集客力と利益率の高さゆえ、来場者を多少制限してもなんとかなる?!

    緊急事態宣言は早ければ5月25日にも解除されるという話もありますが、コロナがいつ収束するかもまだ読めず、開業後もどれくらい受け入れられるかわからない状況です。少なくとも当面はこれまでのような混雑状況になるまで受け入れるのは難しいでしょう。

    ただ、オリエンタルランドは利益率が高いこともあり、損益分岐点売上約890億円のハードルがそこまで高くないように思います。

    具体的には、2019年の四半期売上高の約70%程度なので、去年と比較して、30%の来場者の入りを減らしてもトントンです。2020年4月からはチケット料金が上がるため、客単価も上がる見込みであることから昨年比50~60%程度の来場者に制限しても、少しの赤字でしのげる可能性があります。

    もちろん、未曾有の事態で予断を許さない状況ではありますが、圧倒的な財務基盤を持つオリエンタルランドがゆえに、まだ資金には余裕がありそうです。

    さらなる成長へ

    オリエンタルランドは、この未曾有の状況下においても、2,500億円もの大規模拡張プロジェクトへの投資方針を変えていません。今回の融資”枠”2,000億円は、この大規模拡張プロジェクトへの投資も踏まえ、ワーストシナリオに備え、あくまで手元資金を厚くするためのものです。実際に借りる必要がでたらいつでも借りられるように準備するということです。

    ディズニーランドは「この世界に想像力が残っている限り、成長し続け」人々を幸せにする使命があります。

    コロナの影響で世界的に暗い話題が多いですが、少しでも世の中に幸せな時間が増えるように、永遠に完成しない”夢の国”がこれからも成長をし続けてくれることを願います。

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    今回の記事は以上です。
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    ■参考記事

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    Hayato Yana|公認会計士|LayerX PdM<-フリーランス←海外スタートアップCFO←国内上場企業執行役員←大手監査法人 ■記事の内容:ビジネスモデル(SaaSなど)の分析、決算書の分析など ■数字に強くなりたい!と思っている方に役に立つようなnoteを目指します

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