中国では「請求書」があっても税金を控除できない?――SAP担当者が知るべき「発票」と2026年増値税法
中国でビジネスをする日本企業にとって、避けて通れないのが「発票(ファーピャオ/Fapiao)」という制度である。
日本の経理担当者なら、請求書を受け取って仕訳を計上し、必要に応じて消費税の仕入税額控除を行うという流れを思い浮かべるだろう。
ところが、中国では事情が異なる。
例えば、中国現地法人が部品を購入したとする。
購買発注書はある。部品も納品された。仕入先から請求書が届き、代金も支払った。
それでも、適切な「発票」がなければ、増値税の仕入税額控除が認められない場合がある。
なぜ、このような制度になっているのだろうか。
さらに中国では、2024年12月から「全面デジタル電子発票」の全国展開が始まり、2026年1月には新しい増値税法が施行された。
これらの改革は、中国でSAPを導入・運用している企業にも大きく関係する。
今回は、中国語の国家税務総局・財政部の資料と、英語のSAP公式ドキュメントをもとに、中国会計準則(CAS)、増値税、発票、電子税務局、SAPの購買・販売連携について解説する。
1.そもそも中国の「発票」とは何か?
中国語の「発票(发票)」は、英語ではFapiao、あるいはTax Invoiceと表現される。
日本語では「請求書」と訳されることもあるが、正確には中国の税務制度に基づいて発行・管理される法定の取引証憑である。
通常のCommercial Invoiceとは役割が異なる。
中国の発票には、主に3つの重要な役割がある。
第一に、増値税の仕入税額控除の根拠となることである。
第二に、企業所得税における損金算入の証憑となることである。
第三に、税務当局が取引の内容や税額を確認するための重要な情報源になることである。
ここで、日本の請求書と大きく異なる点が見えてくる。
日本のインボイス制度では、適格請求書発行事業者が法令に従って適格請求書を発行する。
中国でも企業が発票を発行するが、その管理は税務当局のシステムと深く結びついている。
特に全面デジタル電子発票では、税務当局のプラットフォームが発票番号を付与し、発行情報を管理する。
つまり、中国の発票は単なる企業間の請求文書ではなく、税務行政のインフラの一部なのである。