
説得罪|詩
わたしの宝物を盗むより重い罪
それは説得罪
うつくしい言葉で説得する
目的などない
わたしが西を向いているのに
東に向かせること
わたしが北を目指しているのに
南に行かせること
そのすべてをわたしに触れず
言葉だけで成す
これは
私と私の事件
だった
ビルの谷間の古書店 君とすれ違う
言葉によらず 香りだった
それから説得は愚かになり
毎日の事件はちっぽけで
いつしか僕は
君と君の言葉を介して
美しい世界と対話し始めていた
── 日比野 ラフ