
The Beatles Book Monthly1964年2月号を読む ― 前段A tales of four Beatles⑥
1964年2月号の「A tales of four Beatles」は第6巻。ここでは、ビートルズがレコード・デビューを果たし、自分たちの音を掴んでいく過程が、より具体的に描かれています。
物語の中心となるのは、初期録音セッションの試行錯誤です。
デビュー曲 Love Me Do の録音では、メンバーはまだスタジオに慣れておらず、緊張の中でテイクを重ねていました。
John Lennonはハーモニカと歌の両立に苦労し、何度も吹き直した結果、口が痛くなるほどだったといいます。
George Harrisonは新しいギターに苦戦し、硬い弦に指を痛めながら演奏を続けました。
そして大きな問題として語られるのが、ドラムの扱いでした。プロデューサーの George Martin は、より確実な録音を求めてセッション・ドラマーを起用します。そのため Ringo Starr はタンバリンやマラカスを担当する場面もあり、バンドとしての在り方を模索する時期でもありました。
それでも、こうした経験は確実に次へとつながっていきます。録音を重ねる中で、ビートルズは自分たちのサウンドを客観的に捉えられるようになっていきました。
その成果が、次のシングル Please Please Me へと結びついていきます。
ここでバンドは一段階成長し、「自分たちの音」を明確に形にし始めるのです。
一方で、デビュー直後の現実は決して華やかなものではありませんでした。
「Love Me Do」はチャートを上下しながら少しずつ上昇し、全国的なヒットとは言えない状況が続きます。それでもリヴァプールでは圧倒的な支持を受け、ファンはラジオにリクエストを送り続けました。
やがてビートルズはハンブルクへ戻ります。
イギリスで何かが起き始めていることを感じながらも、その渦の外側にいるような不思議な感覚の中で、彼らは演奏を続けました。
そしてある瞬間、ラジオから自分たちの曲が流れます。
そのときの感覚を、メンバーは「壁を越えた」と表現しています。
この第6巻は、「ビートルズがビートルズになっていく過程」を最も生々しく描いた章です。
成功の直前ではなく、その手前にある不安と手応え。その両方が同時に存在している時期が、静かに記録されています。