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入院中に出会った、ストイックな患者たち

    事故のあと、急性期病院で手術や治療を受け、私はリハビリ病院へ転院した。
    そこで出会った患者さんたちは、本当にすごかった。
    同じ5人部屋の人たちだけじゃない。
    病棟ですれ違う人も、リハビリ室で毎日顔を合わせる人も、とにかくみんなストイックだった。
    リハビリの時間だけではなく、毎日のように自主練をしていた。
    廊下を何往復も歩く。
    同じ動作を何度も何度も繰り返す。
    昨日できなかったことを、今日もやる。
    今日できなければ、また明日やる。
    中には、最初に見たとき、
    「これはさすがに難しいんじゃないか……」
    と思ってしまうような人もいた。
    それでも諦めずに毎日練習して、本当に成し遂げてしまう。
    そんな姿を何度も見た。
    みんな病気も障害も違う。
    でも目指しているところには、共通するものがあった。
    退院すること。
    そして、
    障害があっても、もう一度自分の生活をつくっていくこと。
    そのために、みんなめちゃくちゃ頑張っていた。

    そして、もう一つ忘れられないことがある。
    みんな、すごく優しかった。
    今振り返れば、私よりずっと重い障害を抱えている人もたくさんいた。
    自分のことで精一杯でもおかしくない。
    それなのに、私のことを気にかけてくれた。
    「大丈夫?」
    「今日どうだった?」
    「少し歩けるようになったね」
    そんなふうに声をかけてくれた。
    私が落ち込んでいると励ましてくれた。
    できるようになったことがあれば、一緒に喜んでくれた。
    自分だって大変なのに。
    自分だってこれからの生活に不安があるはずなのに。
    それでも人に優しくできる。
    私は、その優しさに何度も救われた。

    事故に遭って、足を失った。
    それまで普通にできていたことができなくなった。
    この身体でこれからどうやって生きていくんだろう。
    看護師に戻れるんだろうか。
    そんなことばかり考えていた。
    すぐに、
    「障害を受け入れて前向きに生きよう」
    なんて思えたわけじゃない。
    むしろ、受け入れられなかった。
    でも、リハビリ病院には、
    障害を抱えながら、それでも前を向こうとしている人たちがたくさんいた。
    できないことがあっても練習する。
    昨日より少しでもできることを増やそうとする。
    そして、自分が大変なときにも誰かに優しくする。
    そんな人たちと毎日一緒に過ごしていたら、少しずつ私の考えも変わっていった。
    「私も前を向いてみようかな」
    そう思えるようになった。

    今考えると、
    私が自分の障害を受け入れられるようになったのは、あの患者さんたちのおかげだったのかもしれない。
    誰かに、
    「障害を受け入れなさい」
    と言われたわけじゃない。
    「前向きになりなさい」
    と言われたわけでもない。
    ただ、みんなが生きている姿を毎日見ていた。
    できないことに挑戦する姿。
    悔しくても、また次の日に練習する姿。
    自分も大変なのに、他の患者に優しくする姿。
    その姿そのものが、
    「前を向いて生きていこう」
    と私に教えてくれた。

    私は看護師として20年近く、患者さんのことを理解しているつもりだった。
    でも、自分が患者になって5人部屋で生活し、病棟やリハビリ室でたくさんの患者さんと過ごしてみたら、知らないことだらけだった。
    患者さんの苦悩も。
    努力も。
    優しさも。
    そして、強さも。
    看護師として病室に入っているだけでは見えなかったものが、たくさんあった。
    もちろん、何でも「頑張ればできる」と言いたいわけじゃない。
    病気や障害によって、どうしてもできないことはある。
    私自身にもある。
    でも、
    その人がどこまでできるようになるのかを、周りが最初から決めてはいけない。
    それも、あの人たちから教えてもらった。

    事故に遭ったことも、足を失ったことも、今でも「良かった」なんて思わない。
    できることなら、事故になんて遭いたくなかった。
    それでも。
    あのときリハビリ病院へ行かなければ、私はあの人たちに出会わなかった。
    そして、あの人たちに出会わなければ、
    今のように自分の障害を受け入れるまでには、もっと時間がかかっていたかもしれない。
    私に「前を向こう」と教えてくれたのは、医療者の言葉ではなかった。
    同じように病気や障害を抱えながら、
    毎日必死にリハビリをして、
    自分の生活を取り戻そうとして、
    それでも他人に優しかった、
    あの患者さんたちの姿だった。
    私は看護師として、たくさんの患者さんに関わってきた。
    でもあのリハビリ病院では、
    私の方が、患者さんたちに支えてもらっていた。
    あのとき出会ったみんなへ。
    本当にありがとう。
    みんなが頑張っている姿を見ていたから、
    私もここまで来られた。
    そして今度は看護師として、
    あのときみんなからもらったものを、
    目の前の患者さんに少しずつ返していきたいと思っている。

     
     

    taka

     
     
    🦿義足の看護師|看護師歴20年・主任|医療マネジメント認定士✨ 義足での復職、看護管理、職場のリアルを発信。 できないことがあっても、できることはたくさんある。 「頑張る人が報われる職場」を目指して、管理職として奮闘中🌸

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