
エッセイ|気まぐれなねこ~お歳暮は、モグラでした~|拝啓文芸部
ヘッドライトの中を走り抜ける三毛猫の姿。
そう今夜もやってきたらしい。
名前はちゃっちゃん。
スーパーハンターの異名を持つ女の子である。

彼女との出会いはかれこれ8年前にまで遡る。
我が家には、すでに4匹のネコ様が同居していたのだが、お外にも一匹ご飯を食べにやって来るネコがいた。
それがシオちゃん。
白猫のオスで、なんとも気のいいおじいちゃんネコだった。
とにかく毎年冬を目前にした季節になると、なぜか子猫を伴って現れる。
ニャーと鳴く声を翻訳すれば
「この子も養ってやってくれ。寒い冬にこんな小さな子を放置などできないだろう。俺様には無理だ。きっとあんたの良心も。なぁ?」
こうして毎年、子猫がシオちゃんに伴われてやって来た。
我が家で提供するのは、ごはんと、冬の間の防寒を施したネコハウス(わたしのDIY製)
そんな冬の間の一時滞在ハウスを開始して3年目のこと、シオちゃんが連れてきたのがちゃっちゃんだった。
例年連れて来ていたのは男の子だったのに、ちゃっちゃんは女の子。
まだ体が小さい。
とはいえ、お玉さんがしっかりしていたシオちゃんと一緒にいることは、いくらおじいちゃん然としているシオちゃんでもマズイ。
「これは捕まえて避妊手術しないといけないね」
そんなことを家族で話していた時だった。
庭先にやってきたちゃっちゃんの後ろを、二匹の子猫が歩いているではないか!
しかもそのうちの一匹は、明らかにシオちゃんのお子様だと分かる、白猫。
「シオじいちゃん、自分の奥さんと子どもを頼むって連れてきたのかい!?」
こうして、我が家にはこの時の子猫、プーチンとグレートンが仲間入り。
合計6匹の大猫軍団を抱えることになった。


今回のテーマのきまぐれなネコ。
まさにちゃっちゃんを表す言葉である!
毎晩、わたしが帰宅する時間を狙って、絶対に見過ごされないようにとヘッドライトをスポットライト代わりにしてやって来る。
盛んにあげる鳴き声は、ネコ愛好家でなくとも翻訳できる。
「さっさとチュールを献上せよ!!」
ちゃっちゃんは天性の天才ハンターなので、よくネズミを食べている姿を見かける。カラスの巣も、電線よりも高いところにあるのに、毎日襲って全滅させた。
そんな、フレッシュなお肉を自分で調達できる日々を過ごしながらも、チュールは別腹らしい。
毎晩現れる。
そしてわたしは、ちゃっちゃんの命令に従って、喜んでチュールを差し出す。
「かわいいねぇ。今日のハンティングの成果はいかほどで?」
「ウニャウニャウニャウニャ」
「ほう、そうですか。ちゃっちゃんもなかなか苦労なされていますねぇ」
チュールを食べる時は、ご機嫌に走り寄って来るちゃっちゃん。
ところが、チュールが終わった途端、一歩バックステップを踏むと同時に、炸裂するネコパンチ。
「わたしに気安く触るんじゃないわよ!! シャーーーー!!」
そうなのだ。
わたしはかれこれちゃっちゃん様に、チュールを捧げること8年。
それなのに、一度も抱っこさせてもらったことはおろか、頭ひとつ撫でさせてもらったこともない。
「なんでよ! 毎日チュール食べてるのに、人間様にはご褒美ないの?」
でも手を伸ばせど頂けるのは、鋭いパンチと血のにじむ引っかき傷だけ。
なんともツンツン猫。
でもね、ちゃっちゃんは、仁義に厚い猫でもある。
なぜって、年に二回の贈り物は欠かさないから。
お中元とお歳暮。
朝起きて玄関を開けると、思わず悲鳴を上げそうになる。
歴代の玄関マットの上に横たわる贈り物は、ネズミ、ハト、モグラ。
首についた一噛みの傷以外は、汚れ一つない上等の獲物。
「今年もちゃっちゃんから届いたね」
気持ちだけは有難く受け取って、これらの贈り物は丁重にお墓に埋められる。
贈り物よりも、ちょっと愛想よく足元でもすり寄ってくれたら、人間は満足しちゃうのになぁ。
ねぇ、ちゃっちゃん。
本日もちゃっちゃんのハンティングの旅は続いている。
今年もお歳暮がおそろしい季節が近づいている……。
こちらの企画に参加しています。