
【海外の農業ビジネス】農産物は収穫して終わりではない――中国の「食べ頃キウイ」に学ぶ農業ビジネス
私はこれまで中国ビジネスに長く携わり、中国への留学も経験してきました。そのため、中国の食品市場や農業分野で起きている変化には、今でも強い関心を持っています。
最近、特に興味深いと感じたのが、購入後すぐにおいしく食べられる「即食キウイ(即食猕猴桃)」という商品です。
キウイは購入したときには硬く、食べ頃になるまで待たなければならないことがあります。うまく追熟できればおいしく食べられますが、気づいたときには柔らかくなりすぎていた、という経験をした方もいるのではないでしょうか。
中国では、こうした消費者の不便を、新たなビジネスチャンスに変えようとしています。
「食べ頃」を商品価値に変える
中国のアリババは、産地と連携し、即食キウイの商品化を進めてきました。
特徴は、単に追熟技術を導入することではありません。収穫時期の判断から、品質検査、選果、追熟、保管、配送までを一体的に管理し、消費者が購入後すぐに食べられる状態で届けるサプライチェーンを構築している点です。
また、生鮮EC企業の叮咚買菜(Dingdong Maicai)も、専用の追熟施設を整備し、温度や湿度などを管理しながら、販売需要に合わせて食べ頃の商品を供給しています。
2023年の報道によると、叮咚買菜が販売する国産キウイのうち、即食商品の比率は販売数量ベースで55%に達したとされています。
これは中国市場全体の数字ではなく、同社における販売実績ですが、消費者が「すぐにおいしく食べられる」という価値を選んでいることを示す興味深い事例だと思います。
私が注目するのは、追熟技術ではなく発想の転換
今回の取り組みで、私が最も興味深いと感じたのは、追熟技術そのものではありません。
「収穫した農産物をどう売るか」ではなく、「消費者が最もおいしく食べられる状態でどう届けるか」という視点から、生産と流通を設計し直していることです。
従来の農産物流通では、生産者が収穫したものを選別し、流通を通じて販売するという流れが基本です。
しかし、消費者が求めているのは、単に新鮮な農産物だけではありません。おいしさ、食べやすさ、購入後の手間の少なさも、大切な商品価値だと思います。
その価値を実現するために、生産、品質管理、物流、販売の仕組みを組み直す。
中国の食品ビジネスを見ていると、消費者のニーズを起点に、既存の仕組みを大胆に変えていく取り組みに出会います。今回の即食キウイも、その一つだと感じています。
日本の農業にも、まだ大きな事業機会がある
日本の農産物は品質が高く、生産者の栽培技術にも優れたものがあります。
一方で、私は、農産物の付加価値を高める方法は、品種改良やブランド化だけではないと思っています。
例えば、桃や柿などの果物でも、収穫後の品質管理や食べ頃の調整、販売タイミングの工夫によって、消費者の満足度をさらに高められる可能性があります。
もちろん、追熟施設や保管設備には投資が必要です。追加コストに見合う販売価格を実現できるのか、廃棄ロスをどの程度削減できるのか、採算性の検証は欠かせません。
それでも、農業生産者だけでなく、食品卸、小売企業、加工企業が連携して、消費者に届ける商品価値を設計することには、大きな事業機会があると考えています。
また、こうした取り組みを地域単位で進めることができれば、農産物の高付加価値化だけでなく、地域の食品産業や流通企業の成長にもつながるのではないでしょうか。
農業を「何を、どれだけ生産するか」という視点だけでなく、「消費者にどのような価値を届けるか」という視点から考える。
中国の即食キウイは、その重要性を改めて感じさせる事例でした。
農産物の価値は、収穫した時点で決まるわけではありません。
私は、消費者が実際に食べる瞬間までを見据えて商品価値を設計することが、日本の農業にとっても新たな成長機会になると考えています。
中国企業の具体的な取り組みについては、SUGARBIRD JAPAN株式会社のHPインサイトでも紹介しています。
https://sugarbirdcf-japan.com/china-ready-to-eat-kiwi/
参考資料
北京日報(2022年10月12日)「淘菜菜即食猕猴桃科技助农路」
中国食品安全網(2023年11月13日)「“即食”成国产猕猴桃消费新趋势」
四川科技成果庫(2026年8月26日)「优质特色猕猴桃采后商品化精准处理关键技术与应用」