
非エンジニアがAIと歩んだ1年半――ChatGPTからClaude Code、そしてDocument-First開発へ
技術開発シリーズ 番外編
この記事は、Farm Eolicaの技術開発シリーズの番外編として、「AI活用の変遷」をテーマにお届けします。以前の記事で「AIをフル活用してシステム開発に取り組んでいる」とお伝えしましたが、今回はその裏側を深掘りしてみたいと思います。
どのようにAIと向き合い、どんな失敗を重ね、どんな変遷を経て現在の開発体制に至ったのか。
はじめに
こんにちは。福島県浪江町でトルコギキョウを中心とした施設園芸に取り組んでいる、Farm Eolicaの関口です。
「農家なんだから、栽培に集中すればいいのでは?」
そう思われた方もいるかもしれません。正直、僕自身もそう思うことがあります。でも、今こうしてキーボードを叩きながら思うんです。 非エンジニアの自分が、AIをパートナーにして、ここまでシステムを構築できるようになった ――この経験は、きっと誰かの背中を押せるんじゃないかって。
この記事では、ChatGPTとの衝撃的な出会いから、Claude Chat、Claude Code、そしてAntigravityへと移行していった過程を、時系列で振り返ります。
失敗だらけの日々。でも、不思議と楽しかった日々でもありました。
私のバックグラウンド――非エンジニア、でも機械は好きだった
まず、僕自身のバックグラウンドについて、少し長めに話させてください。
プログラミング経験はゼロ。
C言語を大学でちょっとかじってみて、「…なんか難しいな」で終わった程度です。「Hello, World」が表示された時の感動すら、もう覚えていません。
ただ、パソコンは大好きでした。
中学時代、ネットゲームにどハマりしたのがきっかけです。当時のオンラインゲームって、動作が重くて。「もっとサクサク動かしたい」「もっと強いパソコンが欲しい」――そんな欲求から、パーツのスペックを調べ始め、気づけば高校では自作PCを組み立てるようになっていました。
CPUはIntelかAMDか。グラボのVRAMは何GB必要か。電源は何W積めばいいのか。
そういうことを調べて、ショップでパーツを買い集めて、組み立てる。今でもメインPCは自作です。
それと、Excelで数式を組むのがなぜか楽しかった。IF関数を入れ子にして、データを自動集計できた時の「おお、動いた!」という感覚。あれは今思うと、システム開発の原体験だったのかもしれません。
大学は 新潟大学の理系 に進学しました。データ分析や統計に触れる機会があり、「数字を元に物事を考える」ことには慣れていました。だから、農業を始めるにあたっても漠然と思っていたんです。
勘や経験だけに頼るんじゃなくて、データをしっかり見ながら経営していきたい。
それと、もともとアナログにノートを取るのが苦手でした。手書きのメモって、後から見返しにくいし、どこに書いたか忘れるし。だから営農を始める前から、「できるだけデジタルで、強いて言えばクラウド上にデータや知見を集約したい」という思いがあったんです。
実際、事業を開始してからは Notion をフル活用しています。作付け計画、肥料や農薬の情報、勉強したこと、栽培に関するナレッジ――全部Notionに記録しています。NotionはAPI経由で外部ツールと連携が取れるので、今では作付けに関するマスターデータや栽培情報の集約先として、システムの重要な外部リソースになっています。
センサーを設置してデータを集めたり、自動化をDIYで進めたい――そんな構想は就農前から持っていました。データベースを作って、栽培情報を集約して、経営判断に活かす。そういう未来図を、ぼんやりと描いていたんです。
ただ、実現するとしても「営農して3年後くらいにゆっくり…」と思っていました。
まずは栽培技術を身につけて、花を売れるようになってから。システムなんて、その後でいい。
ところが、生成AIの登場が、そのタイムラインを大きく前倒しすることになりました。

第1章:ChatGPTとの衝撃的な出会い(2024年夏)
きっかけ:農研機構「通い農業支援システム」
生成AIに本格的に目を向けるきっかけとなったのは、 農研機構の「通い農業支援システム」 でした。
このシステムは、圃場にセンサーを設置して、新規就農者とベテラン農家がデータを共有することで、栽培技術の継承を目指すオープンソースの実証試験プロジェクトです。
僕も就農1年目から浪江町の実地試験に声をかけていただき、参加することになりました。圃場にセンサー類を設置してもらい、スマホ上で他の農家さんの情報を見られるようになる。最初の作付けでは、いわゆる「スマート農業っぽいもの」は、農研機構さんが設置してくれたセンサー類だけでした。
設置作業に立ち会い、オープンソースで公開されている技術情報を眺め、わからないことを質問して答えてもらう。そんなやり取りを重ねるうちに、ふと思ったんです。
「これ、自分でもできるんじゃないか?」
もともと、将来的には自前でセンサー類を設置して、データを取得・閲覧できるようにしたいという構想はありました。農研機構のシステムを参考にすれば、独学でもスタートできるかもしれない。
そう思い始めたのが、就農して初めての作付けを終えた2024年の夏頃。初収穫が終わって、「とりあえず花を育てて売ることができた。よし、これからどんどん頑張っていくぞ」というタイミングでした。
「できるよ」の衝撃
農研機構のマニュアルを見ながら独学で始めようとしていた頃、ちょうど世間で「ChatGPTがすごい」という話を耳にし始めました。2024年の夏頃といえば、生成AIがだんだんと実用性を持って台頭し始めた時期です。
試しに、何気なく聞いてみたんです。本当に率直な疑問として。
私: 「圃場にセンサーを設置して、データを自宅のサーバーに保存して、スマホからいつでも見られるようなシステムを作りたいんだけど、自分でできる?」
すると、ChatGPTはこう答えました。
ChatGPT: 「できます。可能ですよ。」
その一言だけでも驚いたんですが、続けてこう言われました。
「実現するにはこういう構成が必要です。費用はこのくらいかかりますが、無料の範囲でもここまではできます。Raspberry Piを使って、こういうスクリプトを書いて…」
整然と、論理立てて、実現可能なレベルで提示してくれた。
しかもその場で、必要なPythonスクリプトまで自動生成してくれて、「これをコピーして、こう貼り付けて、こうやって実行するんです」と手順まで教えてくれたんです。
…本当に衝撃でした。
自分の知らない世界を、自分でも実現可能な形で示してくれる。何を質問しても、丁寧に答えが返ってくる。まるで、すごく優秀な先生がいつでもそばにいてくれるような感覚でした。
「これなら、本当にできるかもしれない」
そう思った瞬間から、僕のAI活用開発の日々が始まりました。
試行錯誤の日々
とはいえ、最初から順風満帆だったわけではありません。というか、むしろ 失敗だらけ でした。
初期のChatGPT(無料版)を使っていた頃は、まだAIの性能も今ほど高くありませんでした。
言われた通りにパーツを買ったのに、「…あれ、適合しない?」
スクリプトを打ち込んだら、「…全然動かないんだけど?」
「できる」と言われて始めたのに、「あ、別のツールが必要でした」と後から言われる
保存したはずのデータが突然消えた
こんなトラブルは日常茶飯事でした。
無料版には利用制限があるので、毎日制限内でコツコツ相談を重ね、夜な夜なコピペしたコードを試し、うまくいかなければチャット履歴を遡って原因を探り…。チャットの履歴をいくつも作っては掘り返し、を繰り返していました。
今考えると 非効率極まりない のですが、それでも楽しかったんです。
自分の知らない世界を、少しずつ理解していく感覚。昨日動かなかったコードが、今日は動いた時の達成感。夜中に一人でガッツポーズしたことも、一度や二度じゃありません。
最初の成功体験
そうして試行錯誤を重ねた末、ついに完成しました。
全ハウスにセンサーを取り付け、Raspberry Pi上のデータベース(MySQL)にデータを保存し、自作のWebアプリでスマホから確認できるシステム。
プログラミング経験ゼロだった自分が、これを作れた。
正直、信じられない気持ちでした。動いているシステムを見ながら、「え、本当に自分が作ったの、これ?」と何度も思いました。
この成功体験が、その後のAI活用を加速させる大きな原動力となりました。
「もっとできるんじゃないか」「次はあれを作りたい」――そんな欲が、どんどん湧いてきたんです。

第2章:Claude Chatへの移行――アーティファクトという革命(2024年秋)
ChatGPTの限界
ChatGPTで開発を進めていくうちに、いくつかの不便さを感じるようになりました。
一番の問題は、 スクリプトがチャット内に埋もれてしまうこと でした。
長いコードが会話の中にベタっと貼られていて、「あのコード、どこだっけ?」とスクロールして探し回る。見つけたらコピーして、テキストエディタに貼り付けて、ファイルに保存して…。この作業が、地味にストレスでした。
複数のチャット履歴を行き来するのも大変でした。「あの機能のコード、どのチャットで教えてもらったっけ?」と、履歴を掘り返す時間がどんどん増えていったんです。
そんな時、「Claude Chatならアーティファクト機能がある」という情報を耳にしました。
Claudeとの出会い
Claude Chatに移行してみると、 アーティファクト機能 が革命的でした。
コードがチャット内にベタ貼りされるのではなく、 別ウィンドウに整然と表示され、ワンクリックでコピー可能 。たったこれだけのことなんですが、開発効率が段違いに向上しました。
「あ、これはもう戻れないな」
そう思って、この頃から 月額20ドル(約3,000円)のProプランに課金 を開始しました。月3,000円でこれだけのものを使い倒せるなら、安いものです。
プロジェクトナレッジの活用
Claudeには 「プロジェクトナレッジ」 という機能があります。事前に事業情報や構想をインプットしておくことで、より文脈に沿った提案をしてもらえるんです。
このタイミングで、「どういう考えで事業をやっているのか」「今何ができていて、今後何を実装したいのか」といった情報をまとめ始めました。
AIを「先生」ではなく、「秘書」「エージェント」のように使う。
この考え方が芽生えたのは、この時期でした。AIに質問して答えをもらうだけじゃなくて、自分のプロジェクトのことを理解してもらった上で、一緒に考えてもらう。そういうパートナーシップの形が、少しずつ見えてきたんです。
第3章:エオリカシステムの誕生――AIと作り上げたIoT環境制御
換気自動制御への挑戦
Claude Chatと並走しながら、次に着手したのが 「換気の自動制御システム(エオリカシステム)」 の開発でした。
施設園芸では、ハウスの換気管理が非常に重要です。でも、これを手動でやると本当に大変なんです。
毎朝毎晩、全ハウスを回って窓を開け閉めする
天候が変わるたびに圃場に駆けつける
急な雨や強風でも、即座に対応しなければならない
夏場には、コンビニに行くことすらできない日がありました。
「ちょっと買い物に…」と思っても、天気が急変して出かけてすぐにハウスに戻る。常に圃場のことが頭から離れず、外出もままならない。精神的にも、かなり消耗する要因となっていました。
「これを遠隔操作、あわよくば自動化できれば、劇的に楽になる」
そう考え、Claudeに相談しながら実装を進めました。
開発の苦労
当時はまだ、 スクリプトを手動でコピペして、WinSCP経由でRaspberry Piに転送 していました。
Claudeがコードを生成
アーティファクトからコピー
ローカルのファイルに貼り付け
WinSCPを開いて、Raspberry Piに接続
ファイルをドラッグ&ドロップで転送
SSH接続して、コマンドで実行
…今書いていても、「よくこれでやってたな」と思います。
さらに、AIが生成するコードも完璧ではありませんでした。
ネットワークエラー頻発
センサー取得ミス
予期しない誤動作
夜通しバグ修正することも珍しくありませんでした。
朝4時まで原因を探って、やっと直して、寝て、起きたらまた別のエラーが出てる。ラズパイも気づいたらダウンしていて、手動で再起動する必要もしばしば。動作させたはずがモーターが動かず、自宅と圃場を何度も往復。想定外への対応を幾度も重ね、「…マジかよ」と何度つぶやいたことか。
それでも、諦めませんでした。 安全性を確保しながら、人をサポートする自動化 というコンセプトを軸に設計を進め、ついに 全5棟のハウスで遠隔・自動換気制御が可能 になったんです。
あの時の達成感は、今でも忘れられません。
第4章:Claude Code & GitHubの導入――開発が一気に加速(2025年秋)
転機の到来
エオリカシステムが形になった2025年秋、開発環境に 大きな転機 が訪れました。
それが、 Claude Code と GitHub の導入です。
Claude Codeとの出会い
Claude Codeはターミナル特化型のAIコーディング支援エージェントです。当初、Claude Codeは月額数万円の最上位プランでしか使えませんでした。そのため、「さすがに手が出ないな…」と思っていたんですが、Proプランでも使えるようになったタイミングで試してみることに。
これが、革命的でした。
従来のチャットベースでは、
Claudeがコードを生成
手動でコピー
ローカルファイルに貼り付け
WinSCP経由でRaspberry Piに転送
動作確認
…という流れでしたが、Claude Codeでは AI自身がファイルを編集し、実行環境まで整えてくれる んです。
「ここを修正して」と言えば、AIが直接ファイルを開いて、コードを書き換えてくれる。
最初は「え、本当にそんなことできるの?」と半信半疑でした。エンジニア向けと聞いていたので、何かと専門知識がないと使い始めで挫折するんじゃないかと。でもせっかくプラン内で使えるんだし、元々少しだけ使っていたVS Codeの拡張機能としてインストールして触ってた。実際に使ってみると、あまりの便利さに笑ってしまいました。「今までの苦労は何だったんだ…」と。
GitHubによる統合管理
さらに、 GitHub を導入することで、開発フローが劇的に変わりました。
ローカルフォルダとクラウドでバージョン管理
Raspberry Piと自動連携(デプロイ自動化)
複数AIツールとの横断的な協力
特に重要だったのが、 メインブランチ(本番環境)とdevelopブランチ(開発環境)を分ける ことです。
開発環境で修正・テストして、問題なければ本番環境にマージする。この 安全な開発フロー が確立できたことで、「うっかり本番環境を壊してしまった」という事故がなくなりました。
またRaspberry Piへのデプロイも、Githubを経由して可能になりました。もはやWinSCPで手動転送する必要はなく、GitHubにプッシュすれば自動でRaspberry Piに反映。
開発スピードが、文字通り飛躍的に向上しました。
n8nによる自動化ワークフローの構築
Claude CodeとGitHubの併用を始めたことで、事業仕様の集約と開発ソースの一元化および統合管理がより高いレベルで可能になりました。そうなると、「もっといろんなツールを連携させたい」という欲が出てきます。
ここで活きたのが、 ローカルサーバー(Raspberry Pi)を持っている という強みでした。
n8n というオープンソースの自動化ツールがあります。ノーコードでワークフローを構築できるツールで、様々な外部サービスと連携が可能。しかも、セルフホストすれば 完全無料 で使えるんです。
「これ、自宅のRaspberry Piで動かせるじゃん」
そう思って導入を始めました。
最初は苦労しました。ノードの設定方法が独特で、仕様変更に悪戦苦闘したことも。でも、試行錯誤を重ねるうちに、 n8nのワークフローをAIに構築させる自作プロンプト を作り上げることができました。
今では、ワークフローごとにGitHubに設定JSONファイルを作成してもらって、かなりスムーズにAIと連携しながら外部ツールを活用した自動化を進められています。
Claude Code + GitHub + n8n。
この三位一体が確立したあたりから、開発スピードが格段に上がりました。アイデアがあれば、すぐに形にできる。そんな感覚が芽生えてきたんです。
第5章:Antigravityの登場――複数AIツールの使い分け(2025年冬〜)
利用制限との戦い
Claude Codeは強力でしたが、 利用制限(トークン数制限) という壁がありました。
大規模なプロジェクトでは、5時間以内にすぐ上限に達してしまうことがあるんです。「あ、また制限かかった…」と、作業が中断されるのは結構なストレスでした。
そこで、 Antigravity(IDE Agent) を導入し、 複数AIツールを使い分ける体制 を構築しました。
現在のAI活用体制(2026年1月時点)
| Claude Code | メイン開発担当 | リポジトリ編集、仕様書作成から実装まで幅広く対応 |
| Antigravity | サポート・バックアップ | Claude Code制限時の代打、仕様書構造化、複雑タスクの並行処理 |
| ChatGPT | 軽微な質問・情報整理 | ファクトチェック、簡単な壁打ち |
| Gemini | 深い企画掘り下げ | アイデアの深掘り、戦略立案の壁打ち |
| Perplexity | 情報調査 | ソース付き検索、信頼性の高い情報収集 |
| Notebook LM | ナレッジ管理 | 信頼できるソースでの情報集約・コンテンツ生成 |
それぞれのAIの得意分野を活かし、状況に応じて使い分ける。
これが、現在の僕の開発スタイルです。AIを一つだけ使うんじゃなくて、複数のAIを「チーム」として運用する感覚。それぞれに得意不得意があるので、タスクに応じて適材適所で使い分けています。
第6章:仕様書ファースト――Document-Driven Development
GitHub×仕様書管理の哲学
現在、Farm Eolicaプロジェクトでは 「farm-eolica-docs」リポジトリ に全ての情報を集約しています。
farm-eolica-docs/
├── _index/ # インデックス、ロードマップ
├── 01_strategy/ # 事業戦略・年間計画
├── 03_system/ # システム仕様書
│ ├── eolica_iot/ # エオリカシステム仕様
│ ├── market/ # 市況データ収集システム
│ ├── farm_management/ # 販売管理システム
│ └── ai_development/ # AI運用ガイド
└── 98_log/ # 日付別変更ログ仕様書、戦略ドキュメント、変更ログ、全てがここに集約されています。※上記は簡略化したリポジトリ構造の例です
AIに守らせるルール――Document-First
重要なのは、 AIにこのルールを徹底させていること です。
修正前: 関連する仕様書を必ず確認する
修正後: 対応する仕様書も必ず更新する
作業後: 必ず日付別ログや他関連ファイルに記録する(`98_log/log_YYYYMMDD.md`)
これにより、 「仕様書と実装の乖離」 を防いでいます。
AIが勝手にコードを書いて、仕様書は放置…なんてことになると、後で「あれ、これなんでこうなってるんだっけ?」と混乱します。だから、「コードを直したら仕様書も直す」「仕様書を見てからコードを書く」というルールを、AIに徹底して守らせています。
インデックスファイルによる検索性向上
特に重要なのが `_index/file_index.md` と `_index/roadmap_skill_tree.md` です。
file_index.md: 全ファイルのマッピング。AIがどこに何があるか迷わない
roadmap_skill_tree.md: 進捗管理。タスクの状態を一元管理
AIがこれらを参照することで、膨大なドキュメントの中から 必要な情報を正確に見つけ出し、適切に更新 できるようになっています。
人間の記憶に頼らない。システムに記録する。
タスク管理やアイデアの整理が苦手な僕だからこそ、とても利用価値のある開発哲学となっています。
第7章:アイデアを形にする習慣――AIが秘書になる
音声入力で「忘れない」仕組み
Claude Code + GitHub + n8nの三位一体が確立してから、開発のスピードは飛躍的に上がりました。でも、もう一つ大きく変わったことがあります。
アイデアを「忘れない」仕組みが整った んです。
僕は正直、忘れっぽいです。「あ、これいいアイデアだ」と思っても、3分後には忘れている。そういう特性があります。
この弱点を克服するために、 音声入力を徹底的に活用 するようになりました。
外出先: Notta(文字起こしアプリ)でメモ
自宅: 音声入力で直接AIに投げ込む
音声入力も進化してきました。最初はWindows標準の音声入力を使っていたんですが、精度に限界を感じて、今は Whisper.cpp を導入しています。オフラインで高精度な文字起こしができるので、専門用語辞書と組み合わせて、かなり使いやすくなりました。
全てのアイデアをAIと精査する
今では、仕事のアイデアや気になったことは、とりあえずAIに投げ込むようにしています。
「こういうこと思いついたんだけど、どう思う?」
「これって実現可能かな?」
「ちょっと整理してもらっていい?」
そうやって投げ込んだアイデアを、AIと一緒に精査して、広げていく。良さそうなら仕様書に落とし込んで、GitHubに保存。いつでも取り出せる状態にしておく。
忘れっぽいという僕の弱点を、AIが完全にカバーしてくれている。
優秀な秘書が24時間そばにいてくれるような感覚です。アイデアを忘れる前にキャッチしてもらえるし、後から「あの時のアイデア、どうだったっけ?」と聞けば、ちゃんと答えてくれる。
この仕組みが整ったことで、「思いついたら形にする」サイクルがどんどん速くなりました。
第8章:現在の技術スタック――非エンジニアが扱うシステムの全貌
ここで、現在Farm Eolicaでシステム開発に使用している技術スタックを簡単にご紹介します。
特に珍しかったり高額になるようなパーツやツールはありません。あくまで一部の紹介ですが、おおよその全体像の参考にまでなれば。
開発環境
| 機器 | 役割 | 主な仕様 |
|:---|:---|:---|
| Main PC(自作) | メイン開発・データ保管 | RAM 32GB、GPU搭載 |
| Surface Pro 7 | モバイル開発・仕様策定 | MicroSD 512GBにリポジトリ格納 |
| Raspberry Pi 4 | IoTゲートウェイ・サーバー | 自宅設置、VPN接続 |
システム構成(一部紹介)
エオリカシステム(IoT環境制御)
ハードウェア: ESP32マイコン、各種センサー(温湿度・土壌など)
通信: MQTT(AWS IoT Core経由)
制御: 換気窓・カーテンの自動/遠隔制御(モーターなどはAmazonなどで購入)
バックエンド: Python(Flask)、AWS Lambda、GCP Cloud Runなど
デプロイ: GitHub Actions → 自宅Raspberry Pi自動デプロイ
データ分析・可視化
BigQuery: 収穫・出荷・販売・環境そのほか営農データの統合管理
Looker Studio: ダッシュボードによるデータ可視化
n8n: ワークフロー自動化(Notion連携、データ収集)
業務自動化
音声入力: Whisper + 専門用語辞書(自動変換)
Slack自動レポート: 朝刊・週次・月次レポート自動生成
SNS投稿作成: Instagramやnoteなどの投稿文章自動作成
市況データ: Cloud Run定期実行、約200万件蓄積
開発フロー
1. Surface/Main PC: VS Code + Claude Code/Antigravityで開発
↓
2. GitHub push (develop → main) → n8nワークフロー他
↓
3. GitHub Actions実行
↓
4. Raspberry Pi: 自動git pull & デプロイ
↓
5. システム更新完了すべてAIと対話しながら、非エンジニアが構築・運用しています。
おわりに――AI時代の農業経営者として
就農1年目の夏、ChatGPTに「できる?」と聞いた時から、わずか1年半。
今では、
5棟のハウスの環境を24時間遠隔監視・制御
収穫・出荷・販売・環境データをBigQueryで一元管理
音声入力で作業記録の自動化に挑戦
AIを活用した仕様書駆動開発
こうしたシステムを、 完全に一人で構築・運用 しています。
ただし、AIは魔法の杖じゃない
ここまで読むと、「AIがあれば誰でも簡単にシステム開発できる」と思われるかもしれません。
しかし、それは誤解です。
AIが生成するコードにはバグがあるし、提案内容が現実と合わないこともある。「これでできます」と言われてやってみたら動かない。「こうすれば直ります」と言われてやったら、別のところが壊れる。夜中に「なんでだよ…」とパソコンに向かって独り言をつぶやいたことも、一度や二度じゃありません。
だからこそ僕は、AIを「先生」ではなく「パートナー」として扱い、答えを鵜呑みにしない。仕様書を整備してAIに正確な情報を渡す。複数AIを使い分けてセカンドオピニオンを得る。必ずテスト環境で検証してから本番に投入する。そうしたプロセスを経て、初めて「AIと共に作る」ことが可能になるんです。
正直に言うと、かなりの時間を投資した
ここで正直に言っておきたいことがあります。
ここまで来るのに、この1年半でおそらく1,000~2,000時間くらいはシステム開発に時間を費やしました。
ほぼ毎日、平均4時間くらいは何かしらの形で企画を考え、アイデアを練り、AIと壁打ちし、実装を行っていました。もちろん農家としての基本的な仕事と並行しながらなので、農繁期は開発なんかできない時期もありました。でも、それ以外の時間は、かなりの比率をシステム開発に充てていたと思います。根気が必要です。
僕より効率よくできる人はたくさんいると思うし、僕は横道にそれて本題ではない開発や勉強もしていたので、より時間がかかったのかもしれません。
でも、それでもやり続ければ、仕事で使える武器にまで自作システムを昇華させられる。
それを身を持って体感しました。非エンジニアでもここまでできる。でもそれは、「簡単にできる」という意味じゃない。時間と熱意を投資した結果として、ここまで来れたんだと思います。
変化に適応しながら、走り続ける
AIの進歩は早いし、取り巻く状況もどんどん変わっています。
今実装しているこのやり方も、100%の正解ではないと思っています。もっといい方法はあると思うし、AIの進化で全く違うアプローチが可能になるかもしれない。
現に今この記事を執筆しながらも、まだまだ改善の余地があるなと考えています。だから、どんどんやり方は変えていくつもりです。
実装したいシステムはまだまだたくさんあるし、アイデアは尽きません。できることも増えていくだろうし、やり方は変化する。
流れに適応しながらも、やれるうちに猛ダッシュでこれからも自分の人生を突き進んでいきたい。
そう思っています。
それでも、楽しい
農業も、開発も、まだ道半ば(というかスタートしたばかり)です。実装したい機能はたくさんあるし、改善すべき点も、本当に山積みです。毎日のように「ここ、もっとこうしたい」「あれ、なんか動きがおかしい」と格闘しています。
でも、不思議と嫌じゃないんです。
むしろ、楽しい。好きなゲームのレベル上げに没頭している感覚に近い。
生成AIがなければ、エオリカシステムの完成は3年後、データ分析基盤の構築は5年後、ここまでのシステム統合はそもそも不可能だったと断言できます。
AIと共に歩めば、非エンジニアでもここまでできる。
そして、 農業×テクノロジーの可能性は、まだまだ広がっている。
この記事の続き
今回の記事では、「今どんなAIを使って、どんなふうに仕事をしているのか」に着目しました。熱意を持って開発を進めていることは、伝わったんじゃないかと思います。
じゃあ、実際にどんなシステムを作っているのか。
それは、また近いうちに記事にするつもりです。本連載の開発シリーズにも関わっていくと思います。メインのシステム以外にも、結構サブシステム(メインじゃないけどちょっと便利な機能)とかも次々と作っているので、そのうち紹介したいですね。
ちなみに、このnote記事の執筆もAIと一緒に行っています。更新頻度をより上げるためのフローも現在構築中。お楽しみに。
この記事が、同じように「データ駆動型農業」を目指す方、あるいは「AIを活用してシステム開発に挑戦したい」と考えている方の参考になれば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
Farm Eolica 関口
福島県浪江町で、トルコギキョウを中心とした施設園芸に取り組んでいます。「農業×テクノロジー」で、データに基づいた持続可能な農業経営を目指しています。生成AI・IoT・クラウドを活用した独自のスマート農業システムを構築・運用中。
Homepage: https://farmeolica.com
Instagram: @farm_eolica
X (Twitter): @FarmEolica
note: https://note.com/farm_eolica