メインコンテンツへスキップ
見出し画像

時間をかける少女 | ショートショート | アマノ文筆クラブ

    今日は何本にする?

    「うーん、17……。もう恥ずかしいからいい」

    今日は何本にする?

    「サンタさん来てくれる日だから、いらない」

    今日は何本にする?

    「あの子の数だけだよ? 忘れたの?」

    今日は何本にする?

    「お父さんに聞いて。覚えてない」

    今日は何本にする?

    「二本かな。付き合った記念日を忘れたの?
    ずっといたから忘れたっていうの?」


    私は毎日、彼女の好きなパンケーキにろうそくを立てていた。

    毎日ケーキでは、さすがに体に障る。

    一人が二人になり、しばらくして三人になった。
    少女は、時をかけるように大人になった。

    やがて三人は二人になった。
    一人が二人になったから。

    やっと終わったねと二人で話していたら、
    二人の砂時計がおかしくなっていた。

    彼女は、ときどき昔に戻るようになった。

    少女の顔になったり、私と出会った頃の、はじけるような笑顔になったり。

    熱を出した娘を心配そうに見守っていた母親の顔になったり。

    私と一緒にいてくれると約束してくれた、あの頃の顔になったり。

    私は、彼女がどの時間にいても、その時間の彼女を待つことにした。

    ◆

    少女に戻った日に、誕生日ケーキをねだられた。

    小さなショートケーキを用意すると、彼女は目を輝かせた。年齢と同じ数のろうそくを立てると、嬉しそうに吹き消した。

    それが何だか嬉しくて、私はたびたびケーキを用意した。

    だが、さすがに食べ過ぎだと孫を連れた娘に注意された。

    だから最近は、朝食のパンケーキに小さなろうそくを一本だけ立てている。

    彼女は時をかける、少女のように。

    私は、小さい頃から彼女を知っていた。

    幼馴染のバカな少年のまま、
    今日も彼女がくるのを待っている。


    タイトル:時間をかける少女
    応募期限:10月5日 18時00分
    条件:記事にこの記事のリンクを貼ってください。
    #アマノ文筆クラブとハッシュタグをつけてください 。
      ※タイトルの変更はできません


    #アマノ文筆クラブ
    #時間をかける少女

     
     
    主にホラーを書くのが好きですが、ジャンルに縛られてません。ホラー小説を買って読んだのは、鈴木光司さん、貴志祐介さん。お二人の作品は映像が浮かび、日常や人間の怖さに引き込まれます。 はじめた書いた長編ホラーの『廻りもの』という作品を時間のあるときに読んでもらえたら嬉しいです。

    あなたへのおすすめ