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立冬 — 暦の上で冬がはじまる


    はじめに

    暦の上では、いよいよ冬。二十四節気でいう“立冬”を迎えるこの頃。

    木々の葉が色を落とし、風にひんやりとした冷たさが混じりはじめます。「冬が立つ」と書くこの日から、暦はゆっくりと、寒い季節へ歩みを進めます。

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    冬が立つ日

    立冬は二十四節気の十九番目。
    毎年十一月七日ごろから、次の小雪の前日まで続きます。(2026年は11月7日から11月21日です。)

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    「立」の字は、季節がここから始まることを表します。立春・立夏・立秋とあわせて四立(しりゅう)と呼ばれ、春分・秋分・夏至・冬至の四つと組み合わせると、一年を八つに分ける八節になります。二十四節気のなかでも、節目のなかの節目にあたる日です。

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    江戸時代の暦の解説書『暦便覧』は、立冬を、冬の気配が立ちはじめていよいよ冷えてくる頃だと説明しています。暦のうえの冬は、この立冬から立春の前日まで。そのちょうどまんなかにあたるのが冬至です。体感ではまだ晩秋でも、暦はもう冬を告げています。


    山茶花が咲き、水仙が香る

    立冬のはじめ、十一月七日ごろから十一日ごろまでを、七十二候では「山茶始開(つばきはじめてひらく)」と呼びます。読みは「つばき」ですが、指しているのは山茶花(さざんか)。ほかの花が少なくなる頃に、そっと咲きはじめます。

    次の候が「地始凍(ちはじめてこおる)」、十二日ごろから十六日ごろまで。大地が凍りはじめ、霜柱が立つ頃です。

    末候は「金盞香(きんせんかさく)」、十七日ごろから二十一日ごろまで。金盞とは黄金の盃のことで、花の内側の黄色い部分をそう見立てた名です。字面はキンセンカのようですが、指しているのは水仙のほうです。

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    おもしろいのは、同じ時期を中国の七十二候が違う言葉で呼んでいることです。初候は「水始氷」——水が凍りはじめる。末候は「野雉入大水為蜃」——雉が海に入って大蛤になる。もともと中国から伝わった七十二候を、日本の気候に合うように改めてきた結果で、水が凍る景色と雉の変身譚が、こちらでは山茶花と水仙になっています。

    立冬の三つの候のうち、二つまでが花の名前。冬のはじまりを、日本の暦は花で数えています。

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    しぐれの季節

    この頃に降る、ひとしきり降ってはやみ、また降りだす小雨を「時雨(しぐれ)」といいます。『万葉集』の頃は秋にも冬にも詠まれていましたが、平安の中頃から、冬の景物として定まっていきます。

    その年に初めての時雨は「初時雨」。冬の訪れを告げる言葉として、長く詠まれてきました。

    初しぐれ 猿も小蓑を ほしげ也 ――松尾芭蕉

    初冬のしぐれに濡れた猿が、小さな蓑(みの)を欲しがっているように見える——。降ったかと思えば止む冷たい雨が、この頃から繰り返し通り過ぎます。

    猿までが雨具を欲しがって見えるほど、初時雨は冷たい。夏の夕立とも秋の長雨とも違う、季節の変わり目を知らせる雨です。


    冬を迎えにいく

    日が短くなり、夜がぐっと長くなる季節。寒さを厭うだけでなく、その分だけ深まる家のなかの時間を楽しみたいものです。

    火を入れるのも、この頃からでした。旧暦十月の最初の亥(い)の日を「亥の子」といいます。旧暦の月と十二支の巡りの両方で決まるので、新暦では毎年動きます。たとえば2026年は十一月九日にあたります。

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    近世には、この日から炉を開き、こたつを出し、火鉢を使いはじめる習わしがありました。猪は火の神とされる摩利支天(まりしてん)の使いで、火の道具を出すのに縁起がよいと考えられたからだといいます。武家は最初の亥の日に、町家は十二日後の二の亥から火を入れたそうです。茶の湯の炉開きも十月の終わりから十一月のはじめにかけてで、いまも亥の子に合わせる家があります。

    立冬を過ぎると、時候の挨拶は「初冬の候」「向寒の候」へ。向寒とは、寒さに向かうということ。挨拶の言葉そのものが、これから冷えていく相手の暮らしを気にかけています。年末の慌ただしさが始まる前の、いちばん静かな時期です。


    おわりに

    立冬を過ぎれば、暦は小雪へ。やがて木々は葉を落としきり、初雪の便りも聞こえてきます。

    寒さに向かう季節を、身をすくめて過ごすのではなく、迎えにいく。そう思えたら、長い冬も少しあたたかく感じられそうです。

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    お花と、暦と、季節の習わし。 日本の四季の移ろいを、毎週土曜に。 お花の写真をデザインにあしらった紙製品ブランド 「Fragsphere(フラグスフィア)」が運営しています。 #花のお手紙 #花のポスター

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