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「アルテミオ・クルスの死」 カルロス・フェンテス

    朚村抮䞀 蚳  新朮文庫・珟代䞖界の文孊
    岩波文庫に同蚳が埩刊

    人称ず時制

    この小説の特城であるものの䞀぀ずしお人称がころころ倉わるずいうのがある。クルス自身の意識である䞀人称、語り手の䞉人称はたあわかるが、問題は二人称「お前は」。ただその盎前のクルス自身の意識の郚分に、自分が分裂しおいるみたいな蚘述があったので、なんかその片方がしゃべっおいるのだろうず今のずころは思っおいる。

    それより奇劙なのは、この二人称の郚分で語りの時制を未来圢昚日のこずなのにでしおいるこず。今のずころなんでそうなのかよくわからない。二人称ならビュトヌルずか他の䟋もあるが 

    なんか人称も時制も他のもろもろなものも、ここで党郚たずめおしたえ、ずいうような感じがするが どうでしょう。
     

    極端な正論

     極端なものはすべおその反察物を、぀たり残酷さはやさしさを、臆病さは勇気を、生呜は死を内にはらんでいるこずをお前はよく知っおいる。
    

    「お前は」なので、二人称でしかも未来圢の語りなのだが それはずもかく、なるほどず心底からはただわからないたでも、なんずなくその通りなのではないか、ず感じる。ここで、アルテミオ・クルスの分身が語っおいるのは、本人に察しおだけでなく、メキシコ党䜓に察しおの語りかけでもあるだろう。

    昚日の日蚘では人称ず時制のごたたぜに぀いお曞いたが、それだけでなく堎面も半ペヌゞごずに移り倉わる。クルスず母嚘の堎面が亀互に代わる䞉人称の語りが終わったら、死に盎面しおいるクルスの䞀人称、そしお二人称。語りの集積によっお䞖界を蚘述しようずしおいるのか。

    䞀人称のずころにたびたび出おくるテヌプレコヌダヌは䜕の意味なのだろうか。筋的にはなんらかのキヌになるのではないかず思うけど 
     

    メキシコ革呜埌、死んだ仲間の家に乗り蟌むずころ。効が目的みたいだが、そのベルナル家みたいな旧来の地䞻階玚ず、野心持ったこれから成り䞊がるクルスずの察比がこれから繰り広げられる のかな
    日ペヌゞくらいしか進んでない 
     

    远憶ずは

     目蓋を閉じた時、お前は知るだろう。小さくお䞍完党な感光板の奥たで射蟌んでくる光の匷さによっお、お前自身の意志や身䜓の調子ずかかわりなくさたざたな感情が生たれおくるずいうこずを。
    

    今朝読んだずころはそんなに倚くはないけれど、この小説の成り立ちなぜ二人称で䞀人の人間が分裂しおいるのかをある皋床説明しおくれるずころでもあるだろう。

    続いお、

     過去ぞ過去ぞず思い出の糞をたぐっおゆくこずで、お前は自ら望むものを手に入れるだろう。
     远憶ずは満たされた欲望にほかならない、
    

    ここも小説の成り立ち説明郚分でもある。现かいけど「思い出」っおのはも少しよい語はなかったのかな原著でどうなっおいるのかはわかりたせんが。あず、「自ら望む」のは誰なのかなクルスのうちどちらかあるいはその統䞀䜓远憶ずいうのは欲望ず密接な関わりのある、䞍断の営みなのかもしれない。
     

    昚日から今朝にかけお読んだずころは、前の堎面より曎に前、メキシコ革呜の戊乱。クルスは戊堎から逃げたずいう認識を抱き、突然倜に敵の包囲を䞀人で砎っお逃走する。この逃げたずいう認識ずいうず、自分はすぐ「ロヌド・ゞム」思い出したすが、ゞムずクルスの認識はどう違うのか。少なくずも圌ら二人の埌生芋るずたるで正反察のような気がする 
     

    銙の䞭の時間

     神が存圚しないのであれば、䟮蟱するにもしようがない。これからは䜕を蚀われおも反論するたい。反論するずいうのは、盞手の蚀い分を認めるずいうこずだからな。
    

    結局、最初の呜題もそれに察する反論も議論する堎は同じこずを認めないず議論すらできない。それを解決しようずしたのが䟋の正ヌ反ヌ合の匁蚌法なのだろうけれど、人間はそんなに悠長に考えられずに衚面だけ芋お賛成か反察かを決めおしたう。元の文から離れおいっおいるような気もするが・・・

     銙の匂いの䞭には時間がこめられおいお、さたざたなこずを語りかける、
    

    こっちは、もう䜕も蚀わないで、この文の詩的な味わいを愉しもう。この䜜品のタむトル「銙の䞭の時間」でもよかったのかも
     

    波ず足跡ず時間

     さお、「アルテミオ・クルスの死」はやっず真ん䞭くらい。

     打ち寄せる波が足跡を次々ず消しおいった。螏み出した足跡だけが぀かの間の唯䞀の足跡なのだずいうこずにも気づかず、自分の足跡を芋぀めたたた 。
    

    解説拟い読みによるず、この小説の䞀぀のテヌマは「時間」らしい いたを顧みず、未来ぞ未来ぞず志向する粟神を批刀しおいる ずすれば、ここなどもその䞀぀の箇所。ぜ぀ぜ぀ず過去の䞀堎面が䞀芋バラバラに提瀺されるずいうこの小説構造は、波忘华に消されるこずがなかった、或いは波が匕いおも残っおいた数少ない足跡をたどっおいる ずいうこずかも。
     

    想起ず回垰

    埌半に入り、いよいよ物語の栞心に入っおきたした。

    メキシコ革呜の戊乱時、埌のクルスの劻の兄ず地䞋牢に入っおいた時、凊刑堎はどうなっおいるず聞いた瞬間に、今たでは振り返りもしなかった過去出身のベラクルスの蟲園などが脳裏に浮かんだずころ
    。

    䞀人称の箇所で、䞀切のものを投げうち、䞀切のものを獲埗するのはなんずいうのだ、ずいうずころ
    。

    それから二人称の箇所で、今たでクルスに語りかけおいたような感じだったのが、生呜のたた人類の発達の過去に遡っおいく語りかけになるのはなんでだろう
    。
     

    少なくずも人の二人称

    今日は久しぶりの平日䌑みだったので、午前䞭ゆっくり「アルテミオ・クルスの死」をペヌゞほど読んだ。前から「銬」がどうたらずかいうセリフが断片的に出おきお気にはなっおいたが、ここでもう䞀぀の筋の栞心、クルスの息子ロレン゜の物語が想起される。
    ロレン゜はアルテミオによっお母から切り離されおクルスの生たれ故郷であるベラクルス州の蟲園でも育おられおいく。先の「銬」のセリフはこうした父子の䌚話で出おきたもの。そうした䞭、ロレン゜は父芪が果たすこずのなかった䞀぀の可胜性の物語を生きるたたは死ぬこずになる。スペむン垂民戊争に矩勇軍ずしお志願し、そしお敗れピレネヌ山䞭からフランスぞ逃れる途䞭でナチスの爆撃機によっお殺されおしたう。
    ここでの䞉人称堎面の䞻人公はアルテミオではなくロレン゜。アルテミオは果たせなかった自分の物語䜜䞭では「鏡」ずも呌ばれたすをこの想起実際にはロレン゜の仲間が送っおきた圌の手玙でそうした戊況ず死を知るのだがしおいる。

    ここで二人称郚分の語りに着目しおみるず、この局はいろんな語り手が混圚しおいるように思える。アルテミオ自身の分身、前に曞いた人類の進化を芋届けおいる者、そしおアルテミオの分身が問題になるのならそこに圓然このロレン゜も加わっおくるようにも思える。
    衚面的には前ず倉わらない語りかけだずしおも、そこにはその声が䌝わっおくる。ずなれば、他にもいろいろな声が響き枡っおいるずいう可胜性も。

    もう䞀぀、ロレン゜がアルテミオの蚀わば分身ずしお死んだのならば、アルテミオの分身ずしお死んだずされる人物がもう䞀人いる。それがゎンサヌロ・ベルナルアルテミオの劻カタリヌナの兄で、これは察称構造になっおいる。そしおこれでカタリヌナのアルテミオに察する感情もわかっおくる。

    そしおアルテミオ・クルスは今、死のうずしおいる。 

    曞き忘れたこず少々。ロレン゜の芖点が始たったずころで、怅子に座っおテラスにいる老人がちらっず出おくるが、これっお自分のもう䞀぀の可胜性がどうか芋おいるアルテミオなのかず思った。埌、曞き足すこずがあるずすれば、前読んだ「脱皮」でもこの䜜品でもペヌロッパの第二次䞖界倧戊が裏舞台になっおいるが、フェンテス自身はその頃䜕を䜓隓しおいたのかな、ず考えたこず かな。ちなみに今朝はかなり今のアルテミオに近い埌幎の幎越しパヌティヌの箇所を。
     

    匵られた糞ず自由

     今日、死がお前の起源ず運呜を同列に䞊べ、その䞡者のあいだに、自由ず呌ばれる糞を匵る、
    

    文の途䞭で切ったみたいですが、これでこの章は終わり。たあ、この二人称郚分は党䜓がそんな感じです。そしおこの問いかけなのか語りかけなのかが、そのたた次の想起の堎面の導入になる。

    にしおも、糞ず自由ずいうのが、普通には反察ずは蚀わなくおもあんたり結び぀かないのむメヌゞだず思うのだが 鏡の比喩ず䞊び、この蟺にフェンテスの時間芳が珟れおいるのかも。
     

    䌏線はフォヌクナヌ

    「アルテミオ・クルスの死」もペヌゞ越えお、クルスが少幎だった頃の堎面になっおきた。クルスの祖母が零萜した蟲堎の屋敷のある䞀郚屋に匕きこもっお䜏み、クルスはそのそばの小屋で混血のルネヌロず半ば隠れお生掻しおいる。なんだかこの祖母ずクルスには誰かの代わりに長生きしおいるずいう意識の共通性があっお暎動や灜難の起こった日に生誕したずいう点も䌌おいる、この祖母䜕十幎かの過去ぞの匕きこもりを今クルスが死ぬ盎前に凝瞮しお䜓隓しおいるような 

    あず、蟲園ずいう蚭定ずいい、敗北した偎の生掻ずいい、出生の秘密ずいい、䜕より閉塞した郚屋の語りずいうのが、フォヌクナヌの䞖界 特に「アブサロム、アブサロム」を思い出させずにはいられない フェンテスにはフォヌクナヌ論もある 
     

    頭䞊で瞬く星はお前の死

    「アルテミオ・クルスの死」読了。

    から始たる二人称の箇所は党文曞いおもいいくらい匵り぀めた詩的な文章。

     その時間が少幎であるず同時に瀕死の老人でもあるお前のうちで具珟されるだろう、そしおお前は今倜、神秘的な儀匏を通しお、切り立った岩山を這いのがっおくるちっぜけな虫けらず無限の宇宙を静かに巡る巚倧な倩䜓をひず぀に結び合わせるだろう・・・。
    

    クルス少幎が蟲園から抜け出しお岩山に登った倜の䞀幅の絵。人間が幌児期から抜け出しお自己を持ち始める時期。倜空に瞬く星の光はここに到達する頃には元の星は死滅しおいるのかもしれない。そんな死ず、それから今たさに䞀歩を螏み出したクルス少幎が䞀぀に合わさる、そんな時。確かカルペンティ゚ヌルの「光の䞖玀」でも、あれは倧西掋を挟んだ郵䟿の蚘述だったが、そういう構図が描かれおいた。生ず死が、歩き出したクルス少幎ず死にゆくクルス老人が、人称党おが、䞀぀に溶け合う。

     神話ずは、珟圚においお実珟しうる未来であるずころの過去である。
     解説䞭のオクタビオ・パス「匓ず竪琎」からの匕甚より

     

    䜜者・著者ペヌゞ


     
     
    䞭東欧やラテンアメリカを䞭心ずした海倖文孊䜜品の玹介ず感想、文孊評論・歎史・哲孊・人類孊、等々の様々な本の読曞メモなどを䞭心にする予定です。時には違うものも混ざるかも。

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