
日経平均の上昇は、ほぼ夜に起きていた——2010 年からの昼と夜を分けて数えた
結論(3 行)
日経先物を 2010 年から「昼(寄り→引け)」と「夜間(引け→翌朝の寄り)」に分けて累計すると、昼は −8%、夜間は +772% だった。
16 年強で日経平均が大きく上がったのは事実だが、その上昇は日本の取引時間ではなく、夜の間に起きていた。
年ごとに見ても、夜間が昼を上回った年は 17 年中 13 年。「日本株は寄り付きで値が決まる」という感覚は、数字で見るとかなり正しい。
通説
「日本株は朝の寄り付きで値が決まって、日中はあまり動かない」「夜に米国が上がれば翌朝は高く始まる」。株をやっている人なら一度は聞いたことがある話だと思います。
ただ、これが「なんとなくそう感じる」なのか「数字として本当にそうなのか」は別の話です。感覚だけで言うと、2024〜2025 年のように日中に大きく動いた日が記憶に残り、「日中も結構動く」とも思えてしまいます。
そこで、日経 225 先物(日経平均が将来いくらになるかを売買する商品。日中も夜も取引されているので、昼と夜を分けて測れる)の値動きを、2010 年から 1 日ずつ「昼」と「夜間」に切り分けて数えてみました。
確かめ方
データ: 日経 225 先物の日足と分足。2010 年 1 月〜2026 年 10 月、4,105 日分。
昼: 8:45 の寄り付き(取引開始の値段)から 15:45 の引け(取引終了の値段)まで。
夜間: 15:45 の引けから、翌営業日 8:45 の寄り付きまで。先物の夜間取引(ナイトセッション。17:00 から翌朝 6:00 まで)の値動きと、その後の朝までの動きを含みます。
それぞれの区間のリターン(値段の変化率)を毎日計算し、2010 年 1 月を 0 として積み上げました。限月(先物の決済月)は期近のものに乗り換えて 1 本の系列にしています。
手数料や売買のコストは入れていません。「この区間に相場が何 % 動いたか」を見るのが目的なので、取引した場合の損益ではありません。

分かったこと

累計すると、昼は 16 年強で −8%。ほぼ横ばいで、わずかにマイナスです。一方、夜間は +772%。日経平均そのものはこの期間に大きく上がりましたが、その上昇分はほぼ全部が夜間に積み上がっていました。
折れ線で見ると、青(夜間)の線は右肩上がりで、2013 年のアベノミクス相場、2020 年のコロナ後の反発、2023〜2026 年の上昇局面のどこを取っても夜間で伸びています。灰(昼)の線は 2010 年からほとんど動いていません。

年ごとに切っても同じ傾向です。17 年のうち 13 年は夜間のリターンが昼を上回りました。たとえば 2021 年は、昼だけ持っていたら −18.6%、夜間だけ持っていたら +31.3%。同じ 1 年で、昼と夜で 50 ポイント近い差がついています。
昼が勝った年も 4 回ありますが、差は小さく、「昼が強い年」というより「夜間がたまたま振るわなかった年」に近い形です。
なぜそうなるか
断定はできませんが、理由として考えられるのは次のようなことです。
日本株を動かす材料の多くが、日本の夜に出る。 米国の経済指標(雇用統計や物価の統計)、FOMC(米国の金融政策を決める会合)の結果、米国企業の決算、米国株の値動き。これらはすべて日本時間の夜から明け方にかけて出ます。日経平均は半導体株の比率が高く、米国のハイテク株との連動が強いので、「夜に出た材料を、翌朝の寄り付きで一気に織り込む」構造になりやすい。
昼は「夜の答え合わせ」になりやすい。 寄り付きで織り込みが終わっているので、日中は新しい材料が出ない限り方向感が出にくい。日中に大きく動く日はもちろんありますが、上げる日と下げる日が打ち消し合って、長い目で見ると累計がゼロ付近に落ち着く、という見方ができます。
急落の「戻り」も夜に起きる。 別の集計では、日経先物が 1 日で大きく下げた翌日は 3 分の 2 が上昇しますが、その戻りは主に翌朝の寄りまでの夜間に起きていて、翌日の昼は平均するとむしろ弱い(K-042)。「下げた翌日に戻る」も、やはり夜の現象でした。
効かなかった条件・反証
夜間が強いなら「毎日引けで買って翌朝売ればいい」と思いたくなりますが、そう単純ではありません。
条件なしの夜間は、1 夜あたりではほぼゼロ。 累計 +772% は 4,105 夜の積み上げで、1 夜に直すと平均 +0.05% 程度です。手数料や滑り(注文の値段と約定の値段のズレ)を引くと、無条件で毎晩買う戦略は旨味がほとんど残りません。夜間の優位性は「どんな夜か」でかなり偏っていて、前の晩に米国株が下げた翌夜に集中しています。この偏りの中身は、別の記事で扱います。
週末・連休をまたぐ夜は弱い。 金曜の引けから月曜の朝、あるいは 3 連休をまたぐ区間は、平日の夜間と比べて期待値が半分以下で、連休はマイナスでした。土日に起きるニュースは、買っている側に味方しないことが多いようです。
最近は逆の局面もあった。 2026 年 8〜10 月は、夜間が下げて昼に戻す日が 40 営業日ほど続きました。2015 年以降で見ても夜間の弱さは下位 10%、昼の強さは上位 5% に入る、珍しい時期でした。16 年の統計としては夜間が強いのは確かですが、3 か月単位では逆になることもある、ということです。
米国でも「夜間に上がる」統計は有名ですが、日本の朝に乗ろうとしても取れない。 日本時間の朝 6 時に米国先物を買って米国の寄りで売る形を試すと、統計的に意味のある差は出ませんでした。「夜の上昇」はその市場の人たちが眠っている間の現象で、別の時間帯から取りにいくのは難しそうです。
使うときの注意
すべて過去のデータで、将来も同じになるとは限りません。特に「夜間が強い」構造は、米国株が日本株を引っ張る関係が続いている間の話です。
累計の折れ線は複利で積んでいるので、後半ほど同じ % の動きが大きく見えます。「最近になって急に強くなった」わけではありません。
手数料・滑りを入れていません。先物を実際に毎晩売買すると、1 夜あたりの期待値は上で書いたように小さいので、コストで消えます。
先物の夜間取引には、昼より値動きが荒い時間帯(米国の指標発表の直後など)があります。夜に建玉を持つなら、昼とは別のリスクがあることは知っておいた方がよいです。
次に読む
「月曜は下がる」「Sell in May」「窓は埋まる」「SQ は荒れる」——4 つの格言を 16 年分で確かめた(次回)
急落の翌日はどうなるか——3 日続落、−3% の日、そして「上昇トップ 10 日」(次々回)
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※独自の調査結果によるものです。投資助言ではありません。取り扱いはすべて自己責任で