
連載第6回|手法カテゴリ事典#3|"地味な1ポジEA"はなぜ最後まで生き残るのか ― 強さの正体は「最悪が読めること」
⚠️ 本記事はFXの売買手法に関する一般的な解説・検証であり、特定商品の性能や将来の利益を断定するものではありません。投資は自己責任で。
前回までと、今回
手法カテゴリ事典では、第1回(ナンピン)で「危険度は最大ポジション数で決まる」、第2回(スキャル)で「生死は取引頻度×利幅で決まる」と、いずれも"手法名でなく数字で見る"ことを自作検証で示してきました。今回は、その対極にある1ポジション型——同時に1つしかポジションを持たない、いちばん地味な型です。
地味すぎて、商品ページでも素通りされがち。でも結論から言うと、この地味さこそが、最後まで生き残る理由です。
「1ポジ型は退屈で稼げない」——本当に?
「1ポジション型=損切りで終わる・含み損で粘れない・派手に勝てない」。だから人気のナンピンやマーチンに比べて退屈、と見られがちです。
ところが、ゴゴジャンEA全4,963本から"危険な兆候の無い"堅実223本を選び抜くと、その47%(104本)が1ポジション型でした。複数ポジ・可変・ナンピンを抑えて、堂々の最大派閥です。たとえば健全度100点のインフィニティトロン(PF1.98・最大DD10.8%・SLあり・運用24ヶ月)やユーロ・タイム(PF1.89・最大DD9.2%)も、この地味な1ポジション型。派手さはないのに、長く崩れていません。
「退屈で稼げない」はずの型が、なぜ生き残りの主役なのか?
まず通説の半分は、データで崩れる
「1ポジ型=ドローダウンが小さい」と思われがちですが、これは正確ではありません。全EAで最大DD率の中央値を手法別に出すと——
1ポジション型:27.7%
複数ポジション型:25.1%
ナンピン型:28.7%
普段のドローダウンの深さは、どの型もほぼ同じなのです。「1ポジだから普段から安全」は誤解。では、1ポジ型の本当の強みはどこにあるのか。それは「普段」ではなく「最悪のとき」に出ます。
自作検証:年利を揃えても、"最悪のとき"はまるで違う
1ポジ+SL/複数ポジ/無限ナンピンの3手法を、勝率を調整して年利をどれも約12%に揃え、各4,000口座を3年間シミュレーションしました。揃えたのは「儲け」。比べるのは「最大ドローダウンの分布」です。

結果は明確でした:
〔手法(年利はどれも約12%で同じ):最悪DDの中央値/95%点(20回に1回)/破産率(DD50%超)〕
1ポジション型+SL:13%/23%/破産0%
複数ポジション型:18%/33%/破産0%
無限ナンピン:38%/80%/破産42%
同じ年利でも、1ポジ型は最悪でも23%で収まるのに対し、無限ナンピンは20回に1回は80%沈み、42%が破産します。1ポジ型の分布は左に寄って狭く、裾(最悪側)が破産まで伸びない。ナンピンは普段穏やかでも、裾が口座全損まで届きます。
強さの正体=「最大損失が、事前に確定している」
なぜ1ポジ型だけ最悪が浅いのか。答えはシンプルで、1ポジ+SLは、1回の負けが"SL幅"で確定するから。エントリーした瞬間に「最悪いくら失うか」が決まっています。だから資金管理(1トレード資金の何%まで)が計算どおりに効く。
ナンピン・マーチンは逆です。含み損やロット倍化で、最悪の損失が事前に決まらない(青天井)。だから「資金の2%まで」というリスク管理が、いざというとき機能しません。
地味さの正体=予測可能性。 1ポジ型は「派手に勝てない」代わりに「最悪が読める」。最悪が読めるから、資金を適切に張れて、破産を避けられる。これが47%の生存シェアの理由です。
だから、見るべきは「最大ポジション数」と「SL」(第1回と同じ結論)
1ポジ型を見抜くチェックは、第1回のナンピン編と表裏一体です:
〔見る数字:最悪が読めない(避ける)→ 最悪が読める(検討可)〕
最大ポジション数:5以上〜数十 → 1(または1〜4の制御型)
SL(損切り):なし(含み損で粘る)→ あり
1回の最大損失:事前に決まらない → SL幅で確定
資産曲線:なめらかだが、ある日断崖 → ギザギザだが、底が浅い
商品ページで勝率99%・DD極小・なめらかな右肩上がりに惹かれたら、いったん最大ポジション数とSLを確認してください。「なめらかさ」は最悪を隠しているだけかもしれません。 1ポジ+SLのギザギザのほうが、最悪は読めて安全です。
結論:1ポジ型は「最悪が読める」から生き残る
通説の訂正:「1ポジ=普段から低DD」は誤り(普段の深さは他の型と同程度)。強みは普段ではなく最悪のときに出る
本当の価値:1回の最大損失がSL幅で事前に確定=資金管理が計算どおり効く=破産しない。だから堅実223本の47%を占める主役になっている
判断の軸:派手な勝率・なめらかな曲線でなく、最大ポジション数(少ない)とSL(あり)で「最悪が読めるか」を見る
地味なEAは、稼げないのではありません。最悪が浅く・読めるから、退場せずに複利を回し続けられる。FXで最後に残るのは、派手なEAではなく「飛ばないEA」です。
次回の事典は、スイング/長期保有 ― なぜ"ゆったり安全"の裏で1発が効くのか(持ち越し時間というリスク)を、これも自作検証で扱います。
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