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Photo by伊藤若冲 / メトロポリタン美術館

絵はタテかヨコか、それが問題だ

    絵画の画面形式、横型と縦型についてつらつらと考えました。

    以前、とあるアーティストの方と話した時に「横長の画面には物語性が宿る」というような意味のことを言っていました。
    私はそれを聞いて、ハッとして「たしかに!」と納得しました。やはりそういう本質のところをつかみとる感性って、アーティストはすごいもんだなぁと思いました。

    西洋絵画は基本横型の画面が多く、人物画や静物画が縦型といった感じでしょうか。中国絵画や日本絵画では、縦型と横型の違いがもっと極端で、縦型となると画面が細長く縦に伸びた掛け軸、横型となると絵巻や画巻と呼ばれる画面がずーーーっと横につながっていく形となります。

    「横長の画面には物語性が宿る」という言葉は、この絵巻や画巻をイメージしてもらうと分かりやすいかと思います。
    特に物語絵巻のようなストーリー形式のものでなくても、絵巻、画巻、巻子などとよばれるものは横へ横へスライドしていくだけで、見る人はそこに何らかの時間性、物語の展開、ストーリー性を自然と感じ取るのです。

    絵巻とまでは行かなくても、横長の画面(日本画であれ西洋画であれ)を見る時、人は視線を水平方向に動かしながら、画面の中に何らかの展開があることを無意識に期待するような気がします。
    逆に、縦型の掛け軸を見た時に、モチーフが上下に重ねられていても、そこに距離的な奥行きや空間的な高さを感じることはあっても、横長画面のように時間や物語はあまり感じません。

    一体なぜでしょう。

    そもそも人の目が横方向の動きに慣れている、というのがとても大きいと思います。
    人の目は二つ横に並んでいますよね。
    そして眼球は上下に動かすよりも、左右に動かす運動の方が得意だと言います。というか、自分でやってみるとよくわかります。左右に視線を動かす速度と上下に動かす速度はだいぶ違います。
    また、文章は縦書きよりも横書きの方が、読書スピードが上がるという話もあります。じゃあ縦書きが基本の日本語はどうなのよ、という指摘もできそうですが、縦書きの日本語でも適度に改行しないと読みにくいですよね。その許容できる幅が横書きの日本語よりも狭いことからも、やはり目は横方向に動かすのが楽だということがよく分かります。

    スマホで動画を見ることを考えても、TikTokやYouTubeショート、インスタのリールなど縦長のフォーマットはありますが、これらはいずれも短尺動画ですよね。
    ある程度長尺の動画となると、やはり横型のYouTubeに落ち着きます。長時間縦型を見るのはきついのではないでしょうか。
    このあたりのアプリのUIなんて、人間工学を研究し尽くして作っているでしょうから(多分)、結局そういうことなんでしょう。

    車窓の風景ってみんな好きじゃないですか。近くのものは一瞬で、遠くのものはゆっくりと、どちらも水平方向に流れていくのを、人は旅情を感じながらじーっと眺めるものです。
    これも人間の目が横方向の動きには順応している、ということとつながります。
    もし、車窓の風景が水平方向ではなく垂直方向に流れていたらどうでしょう。想像しただけで疲れますね。1分もしたら気分悪くなるはずです。

    そう考えると、物語が横へ横へ展開していく絵巻というものはとても目に心地よいのだなぁとわかりました。
    これは想像ですが、長い歴史の中では、縦に展開する絵巻(というか超長い掛け軸)を作ってみた天邪鬼な絵師もいたはずです(きっと)。でも、結局残るのは理にかなったものだけなのでしょう。

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