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子どもが失敗しないよう先回りしてしまっていることに気づいた話

    小2の息子が、かけ算に目覚めた。

    我が家では、夕飯の後に、毎日の課題に取り組むことにしている。学校からの宿題があれば、それでもいいし、なければ、自習用のワークブックをする。

    時間にして、10分とか15分くらい。短い時間ではあるけれど、毎日ちゃんと座って自習することを習慣づけてほしいと、親としては思っている。

    小2の息子は、算数と読解のワークブックを交互にすることになっている。でもはたで見ていると、どうやら算数の方がやっていて楽しいらしい。

    「ボク、かけ算がしたい」

    数日前、息子が重大な決断をしたように、わたしの前できっぱりと宣言した。

    お、おぅ。

    算数のワークブックには、足し算と引き算しかない。これまでの反復練習で、足し算も引き算もほぼ問題なくできるようになっている。正確性とスピードを上げていくために、継続して練習する必要はあるけれど、こればっかりで飽きるという感覚もわからないではない。

    「九九は全部覚えたの?」

    とわたしが聞くと、息子は「あー…」と語尾を伸ばしたまま黙った。まだなのはママも知ってる。学校でもまだ全部の段は習っていない。まだ半分くらいだよね。

    それなのに、息子は、いきなり2ケタ以上のかけ算をしようとしている。

    「九九がぱっと頭に浮かばないうちは、かけ算するのは時間がかかって大変だよ。九九を先に覚えよう」

    わたしがそういうと、息子はみるみるうちにぶうたれた顔になった。言葉にならないうめき声をまき散らしながら、叶えられない思いをいらだちに変えている。

    「時間がかかってもいいの!かけ算がやりたい!」

    わたしは、その様子をみて、「あっ」と思った。

    せっかく息子が新しいことを学びたい気持ちになっているのに、わたしったらその思いを堰き止めるようなことをしている。

    そうだよ、時間がかかったっていい。2ケタ以上のかけ算をするのに、どんなスキルが必要なのかがわかれば、それでいいじゃないか。それだけで今日の学びとしては十分だ。

    やらないうちから、「君にはコレが足りない、コレを先にやりなさい」なんて先回りしたことを言われるより、自分でやってみた方がよっぽどよくわかるだろう。

    「オッケ。じゃあ、かけ算やってみよう」

    さっと方向転換したら、息子もさっと笑顔になった。切り替えがはやい。

    わたしは、2ケタ×1ケタから始めて、3ケタ×2ケタまでのひっ算のやり方を一つずつ説明した。

    息子は、頭の中をフル回転させながら、一つ一つのプロセスを攻略していく。まだ九九が完全には頭に入っていないので、ところどころ足し算を駆使して計算しなければならず、やっぱり時間がかかった。途中で嫌になるんじゃないかと思ったけれど、根気を絶やさずに最後までやれた。

    それどころか、一問解けるたびに、自分の書いたひっ算を眺めて、わあぁと顔をほころばせるのだ。未知のものを知った喜びが、内から湧き出ているのがわかる。ただの足し算や引き算とは違う、こんな複雑な計算をするようになった自分が誇らしかったのかもしれない。

    真横でその一部始終を見つめながら、わたしが思ったのは、

    「この芽をつぶさなくて良かった」

    ということだった。

    さて、かけ算をやってみてわかったことはなにかというと。

    ・難しそうなかけ算も、結局は九九の連続である。
    ・九九を覚えないでいちいち計算していると、恐ろしく時間がかかる。
    ・やっぱり九九は覚える必要がある。

    上出来

    「だから、九九を頑張って覚えような」

    最後にそう言って息子の頭をなでると、息子は素直に「うん」とうなづいた。

    (おわり)


    読んでくださってありがとうございます。
    育児は、いつだって試行錯誤の連続です。

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    アメリカ在住ライター。元国家公務員。アメリカ人と国際結婚し、渡米9年。日本とアメリカ、ふたつの社会を知るからこそ見える暮らし・子育て・文化について書いています。小学生二児の母。趣味はピアノとブラジリアン柔術。

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