
あの虫は今。
先々週の日曜日、三重からの帰り道での話。
あれは沼津あたりだっただろうか。
パーキングエリアで休憩を終え、車に戻ってきた時、フロントガラスのあたりを小さな虫が飛んでいた。
最初はガラスの外側を飛んでいるのか、内側を飛んでいるのかよくわからなかったけど、ガラスの反射を見る限り、どうやら車内にいるっぽい。
多分、誰かが車のドアを開け閉めした時に、うっかり入り込んでしまったのだろう。
そいつは何度もフロントガラスにぶつかっていた。
めちゃくちゃ外に出たそうだった。
そうこうしているうちにメンバーが車に乗り込み、車は東京へ向けて出発した。
ここでふと思う。
人間にとっては、たかが沼津から東京への移動。
でも、あんなに小さな虫にしてみれば、とんでもない大移動。
本人にしてみれば、突然決まった引っ越しのようなものである。
もし虫界にも住民票というものが存在するなら、転出届に転入届、郵便局への転居届、電気やガスの契約変更なんかもしなければならないのだろうか。
しかも、本人の意思とは関係なく。
それよりも気になることがある。
もしあの虫に家族がいたら…。
沼津で普通に暮らしていたはずなのに、ある日突然、東京へ連れて行かれてしまう。
家族からしてみれば、突然の失踪である。
友達だっていたかもしれない。
あいつなりのいつものお散歩ルートがあったかもしれない。
いきなり知らない土地にやってきたあの虫。
東京でうまくやっていけるのだろうか。
東京は虫も冷たいのかな。
新しい友達はできるだろうか。
ちなみに、沼津を出発してからあいつの姿は見ていない。
正直僕ですら、
この記事を書いて以降、気にも留めない。
僕はこれまでの人生で、車内に虫が入り込んだ時に何度かこういうことを考えたことがある。
虫よ。
もし沼津に帰りたくなったら、
今度は東京から沼津に向けて走る人の車に乗せてもらえよ。