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ビール好きの理学療法士が本気で調べた「ビールと体」の話

    ビールが好き。でも、ちょっと後ろめたい

    理学療法士として13年、病院やメディカルフィットネスで「体のこと」を仕事にしてきました。

    そんな私ですが、ビールが大好きです。
    仕事終わりの飲み屋で頼むキンキンのビールは格別で、正直やめられません。

    でも最近は、何を調べても「お酒は体に良くない」「少量でもリスクがある」という話ばかり。
    患者さんやお客さんに「体を大事にしましょう」と言っている立場として、どこか後ろめたさもありました。

    そこでふと思ったんです。

    「ビールって、麦とホップと酵母でできた発酵飲料だよな? 何かひとつくらい体にいいこともあるんじゃないか?」

    これを、ビール好きの言い訳ではなく、できるだけ研究データをもとに本気で調べてみました。
    結果は、うれしい話と、目を背けちゃいけない話の両方でした。

    先に結論を3行で

    • ビールの原料(麦芽・ホップ・酵母)には、腸や体にプラスに働きそうな成分が確かに入っている

    • ただしアルコールそのものには「ここまでなら安全」というラインがなく、少量でもリスクはゼロにならない

    • だから私の答えは「ノンアルと本物のビールを使い分ける」。本物を飲む日は、ロング缶1本まで

    ここから、ひとつずつ解説していきます。

    ① ビールは「アルコール」である前に「発酵飲料」

    ビールの原料は、ざっくり4つです。

    • 麦芽(大麦を発芽させて乾燥させたもの)

    • ホップ(苦味と香りのもとになる植物)

    • 酵母(発酵を担う微生物)

    • 水

    ヨーグルトや納豆と同じく、微生物の力で原料を変化させてつくる「発酵食品」の仲間なんですね。この過程で、原料の中に閉じ込められていた成分が液体の中に溶け出してきます。

    つまりビールは「アルコール+水」ではなく、植物由来の成分とアルコールが混ざった、ちょっと複雑な飲み物だということ。ここが今回のスタート地点です。

    ② ビールの「体にいいかもしれない」成分たち

    麦芽:ポリフェノールと食物繊維

    ビールに含まれるポリフェノールの7〜8割は麦芽由来です。代表的なのはフェルラ酸などで、体の中の「サビ(酸化)」を抑える働きが知られています。

    さらに麦芽からは、β-グルカンやアラビノキシロオリゴ糖といった水に溶けるタイプの食物繊維も出てきます。これらは消化されずに大腸まで届き、腸内細菌のエサになります。

    ホップ:ビールでしかほぼ摂れない成分

    ホップにはキサントフモールというポリフェノールが含まれていて、抗酸化・抗炎症などの働きが研究されています。醸造中の加熱で別の形(イソキサントフモール)に変わるのですが、これを日常的に口にできるのは、ほぼビールだけと言われています。

    もうひとつ面白いのがホップの苦味成分。腸にも「苦味を感じるセンサー」があり、そこが刺激されると迷走神経を通じて脳や代謝にシグナルが届く、という「脳腸相関」の研究が進んでいます。熟成させたホップの苦味成分で、体脂肪の減少や注意力の向上が見られたという臨床試験も報告されています。

    ※ただしこの分野は、ビールメーカーが関わる研究が多く、使われているのも「ビール」ではなく「成分を抽出したサプリ形態」が中心です。「ビールを飲めば痩せる」という話ではないので注意してください。

    酵母:ビタミンB群

    酵母はビタミンB群やアミノ酸をビールの中に放出します。特に酵母をろ過せずに残した「無濾過ビール」には、こうした成分が多く残っています。

    意外な成分:骨に関わる「ケイ素」

    個人的に一番「おっ」と思ったのがこれです。

    ビールにはケイ素(シリコン)が、体に吸収されやすい形(オルトケイ酸)で溶けています。吸収率は約55%とかなり高め。ケイ素はコラーゲンや骨の形成に関わるミネラルとして研究されています。

    ただ、整形外科・運動器を専門にしてきた立場から正直に言うと、骨のためにビールを飲む必要はまったくありません。骨を強くする本筋は、今もカルシウム・ビタミンD・タンパク質、そして骨に負荷をかける運動です。「ビールにもこんな成分が入っているんだ」くらいの知識として持っておくのがちょうどいいと思います。

    腸内細菌の多様性が上がった、という研究

    ビール好きとして一番うれしかったのがこの研究です。

    健康な人に1日330ml(小さめの缶1本)を4週間飲んでもらったところ、腸内細菌の多様性が上がったという報告があります。

    そして大事なのはここから。この変化は、アルコール入りのビールでも、ノンアルコールビールでも同じように見られたんです。

    つまり、腸にいい働きをしていたのはアルコールではなく、麦芽やホップ由来の成分だった可能性が高い、ということ。

    (参加者が少人数の研究なので、これだけで断定はできません。でも、この記事の結論につながる大事なヒントでした。)

    ③ でも、ここは目を背けられない

    ここからは、ビール好きとしては耳が痛い話です。でも、体の専門職として書かないわけにはいきません。

    「酒は百薬の長」の根拠が揺らいでいる

    昔から「少し飲む人のほうが、まったく飲まない人より長生き」というデータがありました。グラフにするとJの字のようになるので「Jカーブ」と呼ばれています。

    ところが最近の研究で、ここにカラクリがあったことがわかってきました。

    「飲まない人」のグループの中に、病気や体調不良でお酒をやめた人が混ざっていたんです。もともと体が弱っている人が「非飲酒者」に入っていたので、相対的に「少し飲む人」が健康に見えていた、というわけです。

    この影響を取り除いて、「生まれてからずっと飲まない人」と比べ直すと、少量飲酒で死亡リスクが下がる効果は見られなくなったという大規模な分析が出ています。世界の病気の負担を分析した研究でも、「健康への悪影響を一番小さくする飲酒量は0」という結論が示されました。

    がんのリスクに「ここまでなら安全」はない

    アルコールが体内で分解されるときにできるアセトアルデヒドは、国際的に「ヒトに対して発がん性がある」と分類されています。

    特に、飲むと顔が赤くなる人はこのアセトアルデヒドを分解する力が弱い体質で、食道などのがんリスクが高くなります。

    そして大腸がんや乳がんなどは、飲む量が増えるほどリスクも上がり、「この量以下なら安全」というラインがないとされています。

    睡眠の質も下がる

    「寝る前に飲むとよく眠れる」と感じる人も多いと思います。実際、飲んだ直後は深い眠りが増えます。でも夜の後半になると眠りが浅くなり、途中で目が覚めやすくなるなど、睡眠全体のバランスは崩れることがわかっています。

    数字で見ると、ロング缶1本で「上限」

    厚生労働省は、お酒の量を「何ml飲んだか」ではなく「純アルコールで何g摂ったか」で考えるよう呼びかけています。計算式はこちら。

    純アルコール量(g)= 飲んだ量(ml)× 度数(%)÷100 × 0.8

    5%のビール500ml(ロング缶1本)なら、500 × 0.05 × 0.8 = 20g

    目安を整理するとこうなります。

    • 1日20g程度(ロング缶1本):国が示す「節度ある適度な飲酒」の目安。女性はこれより少なめが推奨

    • 男性40g以上・女性20g以上/日:生活習慣病のリスクを高める量

    • 1日20g(週150g)以上を続ける:大腸がんのリスクが上がるとされる量

    • 1回で60g以上(ロング缶3本):急性アルコール中毒やケガのリスクが一気に上がる「一気飲み」ゾーン

    「ロング缶1本」が、すでにひとつの境界線なんですね。正直、これは私もショックでした。

    ④ 理学療法士として伝えたいこと

    痛風と「クラフトビール」の落とし穴

    整形外科にいると、痛風で足の親指の付け根がパンパンに腫れた方をよく見ます。あの痛みは本当に強烈です。

    ここで知っておいてほしいのが、ビールの種類による違いです。

    • 大手メーカーの一般的なラガー(よくろ過してある):プリン体 約5〜10mg/100ml

    • 酵母を残した無濾過のクラフトビール(ヘイジーIPAやヴァイツェンなど):15〜17mg/100ml前後になることも

    無濾過のビールは酵母由来の栄養やホップの成分が多い反面、プリン体も多くなるというトレードオフがあります。

    さらに大事なのは、アルコールそのものが尿酸値を上げるということ。体内で尿酸がつくられやすくなるうえに、腎臓から尿酸が出ていきにくくなります。なので「プリン体ゼロのビールなら大丈夫」というわけではありません。

    運動後の「ご褒美ビール」について

    トレーニングやランニングの後のビール、最高ですよね。気持ちはめちゃくちゃわかります。

    でも体の回復という面では、アルコールは利尿作用で脱水を進めてしまうので、運動直後の1杯目としては不向きです。

    そこで注目したいのがノンアルコールビールです。

    ミュンヘンマラソンの参加者を対象にした研究(BeMaGIC研究)では、レース前3週間と後2週間、ノンアルコールの小麦ビールを毎日飲んだグループで、

    • レース後の炎症の指標(白血球数)が約20%低かった

    • かぜなど上気道感染症にかかる割合が約3分の1に減った

    という結果が出ています。麦芽やホップのポリフェノールが、激しい運動後の過剰な炎症を抑えたと考えられています。

    またノンアルコールビールは、体に吸収されやすい濃さの糖と電解質を含み、アルコールのように脱水を進めません。運動後の水分補給にも理にかなっているわけです。

    (ただしこの研究で飲んでいた量は1日1〜1.5Lとかなり多めです。商品によっては糖質や甘味料も入っているので、成分表示は一度見てみてください。)

    ⑤ 私の結論:「ハイブリッド・ビアライフ」

    調べてみてわかったのは、こういうことでした。

    ビールの「いいところ」の多くは、アルコールではなく原料から来ている。

    だったら、全部やめるか、気にせず飲むかの二択じゃなくていい。
    いいところはノンアルでもらって、本物のビールはご褒美としてじっくり味わう。それが今の私の答えです。

    具体的には、こんなルールにしてみました。

    • 平日と運動後は、ノンアルコールビール

    • 本物のビールは休日の前日に。

    • クラフトビールは「量より質」。1杯をゆっくり、香りまで楽しむ

    • 顔が赤くなる人・尿酸値が高めの人は、さらに控えめに

    「やめなきゃ」と思いながら飲むビールより、「今日はこれを楽しむ」と決めて飲む1本のほうが、きっとおいしいはずです。

    おわりに

    ビール好きの言い訳を探すつもりで始めた調べものでしたが、結果的に、ビールとの付き合い方を見直すきっかけになりました。

    「お酒は体に悪い」で思考停止するのではなく、何が良くて、何が悪いのかを知ったうえで選ぶ。これは食事でも運動でも同じだと思います。

    同じようにビールが好きで、ちょっと後ろめたさを感じているあなたの参考になればうれしいです。

    ※この記事は一般的な情報提供を目的としたもので、特定の病気の診断や治療を目的としたものではありません。持病のある方、服薬中の方、尿酸値や肝機能を指摘されている方は、主治医に相談してください。20歳未満の方、妊娠中・授乳中の方の飲酒は控えてください。

    主な参考情報

    • 厚生労働省「健康に配慮した飲酒に関するガイドライン」

    • Global Burden of Diseases(GBD)研究 アルコールに関する分析(The Lancet, 2018)

    • 生涯非飲酒者を比較対象とした飲酒と死亡リスクのメタ解析(JAMA Network Open, 2023)

    • Scherrら:ノンアルコール小麦ビールとマラソン後の炎症・上気道感染(BeMaGIC研究)

    • アルコール入り/ノンアルコールビールの摂取と腸内細菌叢に関する介入研究

    • ビール中のケイ素(オルトケイ酸)の吸収と骨代謝に関する研究

    • 熟成ホップ由来苦味酸の脳腸相関・体脂肪に関する臨床研究

     
     
    理学療法士13年目(整形外科外来・入院7年/メディカルフィットネス5年)。臨床で得た知見と、職場の外で稼ぐ副業のリアルを両方発信中。カラダの悩み相談や現場の小ネタは有料マガジン・メンバーシップでも配信してます。まずはフォローして無料記事からどうぞ。

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