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【大人ギフテッドの生還】全部を失った夫が、“人間”として生き返るまで

    📌前回のお話はこちら

    全部できてしまう彼

    夫は、本当に“なんでもできてしまう人”だった。
    複数の会社を立ち上げ、自ら営業の仕組みを設計し、それを完璧に回してしまう。

    会食やプレゼンの場では、人の感情や空気の流れを敏感に察知して、臨機応変に対応する。
    営業としてキャリアを積んできた私でも、到底マネできない“天才的な器用さ”を、当たり前のようにこなしていた。

    でも私が何より惹かれたのは、その能力以上に、
    人への配慮を欠かさない彼の「優しさ」だった。

    彼に見つめられると心を”きゅっ”と締めつけられる。

    あの魅力的な眼差しは「哀しみ」と「優しさ」から
    あふれ出ているものなんだと思った。


    「動物🐻」になった理由

    ある日、彼は悲しそうに言った。

    「人間として生きていくことに疲れた。」
    「これからは人間の毛皮を被って生きていく。」

    電車の中の視線、咳払い、隣の人のイヤホンから漏れる音。
    彼の感覚はそのすべてを拾い続けてしまう。

    まるで脳内センサーの電源ボタンが壊れて、常にフル稼働しているようだった。

    私も営業職時代、商談や接待の場では脳内センサーを駆使して人の表情や空気を読み取っていたから、彼の“疲れ”を少しは理解できる。

    けれど私はそのスイッチを、自分の意思でON/OFFできた。
    「今からON」と思えば、センサーが動く。
    「今日の任務終了したからOFF」と自分に命令を出せばセンサーは止まる。

    一方で彼は、どんなに願っても、それができなかった。

    「スイッチ、OFFにしたくてもできないんだ」

    と悲しそうに話す彼を見て、私は胸が締め付けられた。
    そして、どうアドバイスすれば良いか、もはや分からなくなった。


    “気を遣わないで”という私のわがまま

    せめて家では、気を張らずに夫には安心して過ごしてほしい。そう願っていた。
    彼が唯一、安心して過ごせる場所だから。

    だけど、彼の脳内センサーは私のちょっとした仕草にも反応する。
    夕食中、私が足を組み替えた瞬間、彼は無意識に立ち上がる。

    🐻「冷蔵庫から何か取ってこようか?」
    と、優しく声をかけてくれる。

    私🐥は「何も要らないよ。どうしたの?」

    夫🐻がこう続ける...。
    「🐥が立ち上がる前の“筋肉の動き”を感じて、何か取りに行くのかと思って…」

    その一言で、私は涙がこぼれそうになった。

    「お願いです。彼の脳内センサーのスイッチを止めてください。」
    「せめてお家にいる時だけは...」

    そう心で願いながら、でも、彼に悟られたくなくて、
    小走りで冷蔵庫にドレッシングを取りに行った。

    サラダを食べ終えてた私は、ドレッシングなんてもう必要ないのに。


    「再起動」に向けて私たちが取り組んでみたこと

    そんな彼と、私は少しずつ小さな工夫を始めた。

    ・真っ暗だったダイニングルーム
    彼と出会ってしばらくは、ダイニングルームが真っ暗の中、食事をする日々が続いていた。
    その部屋にぶら下がっていたのは、照度調整ができない照明だった。
    彼にとっては眩し過ぎる空間だった。

    なので、照度を和らげるシートを3重にして貼りつけた。

    今ではオレンジ色の温かい光を放つ空間でダイニングを楽しんでいます。

    ・苦手な外出
    彼は外出を極力避けている。
    私は無理矢理、彼を外に連れ出すことはしない。
    いつでもキャンセルできる予定を作る。
    さらに、外出先と予定滞在時間をあらかじめ決めておく。

    「お茶だけ飲みに行こう」
    「〇〇だけ行って、20分で必ず帰ろう」

    月に1回だけ、2人で外出する約束をしている。

    ・帰宅時は必ず玄関でハグ
    彼が職場から帰宅すると「おかえり。今日もお疲れさま。」とゆっくり言葉をかけながらハグをする。

    今では逆の立場になることも多くなり、私が帰宅すると夫は必ず玄関先で「おかえり」と甘えた声で迎えてくれる。

    まるで、母グマ👩‍🍼の帰りをずっと待っていたこぐま🧸のように。


    小さな変化、大きな一歩

    ある日、彼がキラキラした目で言った

    「今度、ここに一緒に行ってみたい」

    それは、本当にささやかな提案。
    世間では当たり前の会話かもしれない。

    でもそれは、彼が“外の世界に少し手を伸ばしてみよう”と感じられた、はじめの一歩だった。

    彼が見つけたその場所は、
    以前の私なら関心すら持たなかった
    “静かで刺激の少ない場所”。

    でもなぜか、彼の一言で、
    私の世界🌎も広がった気がした。


    もう一度、“人間”として生きるために

    彼はいまも敏感な感覚を抱えながら、少しずつ日常を取り戻そうとしている。
    クロワッサン🥐を買って、少し散歩して、帰宅する。
    それが私たちの“人間”として生きるための練習。

    動物のような防衛本能に頼ってでも、彼は「生きる」ことを決して諦めなかった。

    だからきっと、もう一度“人間として”生きられる。私は、そう信じている。

    いま彼と過ごす日常が、私たちにとっての「再スタート」。


    最後に...あなたにも“帰還の道”が見つかりますように

    どんなに”普通“を振る舞っていても、誰にも言えない不安や苦しさを抱えている人が、きっといると思います。

    でもあなたにも必ず、「安心できる場所」をつくれると信じています。
    つくれなければ、探せばいい。

    何度でも、いつでも、どんな形でも、“人間に戻る道”はあります。
    他人の目を気にせず、“らしさ”を保ちながら、あなたのペースで。

    環境が変わらなければ、抜け出せばいい。
    それは”逃げ”ではなく、"らしさ”を守るための手段。

    きっとその先にはあなたの”らしさ”を迎え入れてくれる場所があるはず。それが日本とは限らない。

    私たち夫婦は、日本とは遠く離れた居場所も探しに行こうと思っています。
    彼が望む場所であれば、私はどこでもついて行こうと決意しました。

    私たちがそうであるように、今日もその一歩を、あなたが歩めますように👼🙏。


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    いつも夫は「クロワッサンの匂いがいちばんの癒し」と言っています。 執筆をそっと応援してくださる方からのチップ💚で、今日も夫に一つ、おいしいご褒美🥐を届けられたらうれしいです。


     
     
    ギフテッドの夫と暮らす妻。社会に埋もれがちな“大人のギフテッド”のリアルを妻の目線から綴る自叙伝です。 大人になったギフテッドについて、ご質問などありましたらXにてDM受け付けております💁‍♀️📩 https://x.com/giftedbear2025?s=21

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