
竹之御所風 「たけのこの姿ずし」 卯月 筍をいただく一汁五菜
三月。
朝倉山椒にやわらかな若葉が芽生え始める頃、鹿児島県産の筍がスーパーに並び始める。
四月。
山椒に小さな小さな黄色の花が咲き、葉っぱも一日ごとに青々と育つ頃、スーパーの筍も竹林のごとく、それは立派な筍となってずらりと整列。
そうなると、孟宗竹の旬ですもの、今年も筍料理をいただきたくなるというもの。
筍ごはん、若竹煮、中華風オイスターソース炒め、筍のグリーンカレー!
まだまだガレットやそばにも筍!
しかしお高いわけです。
小ぶりでころっとしたお手頃価格の筍を買って、下茹でしていそいそと料理、旬の今だからこその筍を一通り楽しみ、ほっこり笑顔。
昨年冬、友人と武蔵小金井にある尼寺・三光院で長年の夢叶い、竹之御所流精進料理をいただいた。
丁寧に拵えられた料理を目を輝かせて味わい、食後にすすり茶をいただいたあと、大きな窓から境内の竹林を見ながら、西井香春先生と談笑、本で紹介されていた 竹之御所秘伝のたけのこの姿ずし の話になり、「あゝ一度いただいてみたいのですよね」と友人たちとも盛り上がった。
それから春になり、筍の旬を迎え、やはり忘れられない たけのこの姿ずし。
三光院で供される四月の精進料理の献立にあるのは たけのこのおばん で、それは筍ごはんのこと。
それならば本にレシピは載っているのだから、自分で作ればいいのだと気付く。
スーパーで、これぐらいの大きさなら大丈夫かしら?と筍を眺める日々。
そんなとき、郷里の友が今年も郷里の竹林の筍を、丁寧に下茹でまでして送ってくれた。
さすがに今年もよろしくね!と筍を催促するのはあまりにも図々しすぎると思っていたタイミングで届いた筍の神々しいことといったら!
届いた翌日、長い間の念願の たけのこの姿ずし を作ることに決め、献立を決めて材料を揃える。
夜、筍は昆布を敷いてお醤油と純米酒と塩で少し薄味に煮ておき、献立の一品のやはり三光院の精進料理の本にレシピがあった 卯の花 を炊いておく。
卯月に卯の花というのも粋というもの、卯の花に加える冬に三光院でいただいた銀杏も冷凍庫にある。
朝、卯月の筍を味わう一汁五菜の支度をする。

かわいらしい膳にしたくて明治伊万里色絵と赤い塗り物
(写真ではもう盛りつけていますけど)
🔸たけのこの姿ずし
朝一番で たけのこの姿ずし を作る。
米を炊き、合せ酢はほんの少しアレンジをして、ミルで細かくしたきざみ昆布を混ぜて酢飯にする。
それを筍にぎゅっと詰め、押し寿司型で押して、これで主役はOKとほっと一息。

重しには分厚い料理書を載せ、4時間弱置く

木の芽を摘んできてふわりと飾ります
❶米酢大匙 2と2/3、煮切り本みりん 大匙2、塩 小匙2弱で合わせ酢を作る
(砂糖を煮切り本みりんにかえて分量も少し減らしています)
❷米2合を炊いて➊を加えて酢飯を作り、ミルで細かくしたきざみ昆布 小匙2を混ぜる
❸前もって醤油と純米酒、塩、昆布、水で炊いた筍は酢飯を詰めやすいように中の節の部分を取り除いておく
(砂糖は加えず、純米酒を多めに加えました)
❹煮汁を切った➌の筍の内側に➋の酢飯をこんもりときっちりと詰め、ラップできつくぎゅっと包んで形を整えて、重しを載せて押しずしにする

筍をいただく一汁五菜
たけのこの姿ずし
若竹お味噌汁
アスパラガスのレモン酢味噌添え
卯の花
ぎせい豆腐
筍のソテー~蕗の薹の醤油麹和え添え
ラディッシュ糠漬け

・ぎせい豆腐
・アスパラガスのレモン酢味噌添え
・筍のソテー~蕗の薹の醤油麹和え添え
真ん中左から
・ラディッシュ糠漬け
・卯の花
最初の予定ではう巻き玉子にするつもりでしたが、やはり精進料理を意識してぎせい豆腐に変更、筍と木の芽と新玉ねぎの信濃揚げも急遽筍のソテーに替えました
【ぎせい豆腐】
❶木綿豆腐一丁を手ぬぐいに包み、2ℓのペットボトルを重しにして2時間おいてしめ豆腐にする
❷➊をボウルに入れ、醤油 小匙1と本みりん 大匙1 を加えて、ハンドブレンダーでなめらかにする
❸クッキングペーパーを敷いた角型に➋を入れて、180℃のオーブンで30分焼く
(自宅で二人で味わう料理なので砂糖はレシピより減らして砂糖ではなく本みりんを使っています)

❶アスパラガス4本(中サイズ)は根元をピーラーで皮をむき、お皿に並べて置き、ラップなしで600Wの電子レンジに40秒加熱、上下を返して10秒加熱して取り出す
❷➊を揃えて3~4等分長さに切り、器に盛る
❸麦味噌に煮切り酒とレモン搾り汁を加えてレモン酢味噌を作り、上からかける
(おもてなしのときには砂糖などを加えて少し甘く仕上げるといいと思いますが、夫婦だけの食事なのでどの料理も甘さはできるだけ控えめにしています)

おからに細かく刻んだ人参、生椎茸、隠元と銀杏が入ったほっとする彩りの卯月の卯の花です
出汁はレシピ本では昆布だしですが、私は混合節で取っただしを使いました
ごま油で具を炒め、おからを加えてだしと純米酒、醤油、塩で調味
最後にゆでて薄皮をむいた銀杏を混ぜます
12月に訪れた三光院でお土産にいただいた銀杏がキラリと華やぎを添えてくれます

わかめもやわらかくて香り高い季節です
筍の穂先とやわらかい部分を使い、昆布だしでさっと煮て、長期熟成させた田舎味噌と十割麹味噌を混ぜて溶かします
薬味は針生姜

献立を食べてみて、揚げ物じゃなくてソテーにして正解だったねと満足の一品
下茹でした筍をオリーブイオイルでソテーするだけ
器に盛って、蕗の薹の醤油麹和えを載せれば出来上がり
春ならではの組み合わせです

さてさて
いただきましょうか

卯の花に混合だしを使っているので完全な精進料理ではなくて限りなく精進料理に近い献立です
思えば「京都竹之御所風 おそうざい精進料理 三光院・祖栄禅尼の手づくり277品」という本を買ったのが四十二年前のことで、その中でも特に たけのこの姿ずし には憧憬にも似た感情を抱いていた。
月日は流れ、昨年西井香春先生の著作に出会い、暮れには友人たちと三光院で精進料理をいただき、人生の宝物だよねと感動を共有。
春が来て、筍が郷里の友人から届き、長年の憧憬を形にすることが出来たわけだ。
野菜を切ったり下拵えをしている時間は、ゆったりと料理に向かうことができ、ニュートラルな心持ちになれた時間でもあった。
私はレシピは人類のレガシーだと思うのです。
その憧憬を形にでき、味わうこともできる。
もちろんそこにはそれぞれの料理するひとの好みや暮らしに合ったアレンジだって加えていいのであって、だからわくわくするし、それらがそれぞれの癒しのレシピとなり、ずっと伝えられる。
レシピとは懐深く、包容力のあるものでもあるのです。
好きな古伊万里や西洋のアンティークの器を使った献立を考えて、ライブのノリで料理する。
なんて愉快なひと時なのでしょう。
🔸筍ごはん
こちらも大切な筍レシピ。

毎年作っている筍ごはんです
錦糸卵、実山椒の有馬煮、木の芽、自家製紅生姜で華やぐ筍ごはん
毎年これを作るために朝倉山椒の鉢植えも買ったのでした
*レシピは西井香春先生のこちらの本を参考にしています。私にとって大切な一冊です。
記事中のレシピです。
*送ってもらった筍は冷凍して、ゴールデンウィークに大好きな筍のグリーンカレーなどを作ります。