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#09 正しい重心移動のやり方とは? 22歳看護助手のスキルアップ


    重心移動の基本


    ボディメカニクスでは重心移動の基本は「横方向への移動」と定められています。それはつまり「持ち上げない」ということ。持ち上げる行為は本人はもちろん、患者さまやご利用者にもリスクがあります。

    最近では福祉用具や機器を用いての「ノーリフティング(持ち上げない)ケア」が推奨されています。

    しかし当時はそのようなものはなく、己の体のみが頼りでした。

    身一つで介護に臨む!
    愚かだと思いますか?

    いえ、そんなことはありません。
    むしろ持ち上げない環境が完備されていることの方が稀です。

    正しいやり方さえ習得すれば介護はぐっと楽になる。
    「最小限の力で最大の効果を発揮する」
    そんなワザを習得したいものですね!



    重心移動を人体力学的に考えてみる


    わたしの疑問
    「重心移動は横方向にと言いますが、実際に立ち上がって頂こうと思えば結局上に持ち上げないと不可能だと思うのですが?」

    Fさんの回答
    「横方向へ・・・この表現は色々なことを端折ってざっくり一言で述べているので、その意味が分からないと勘違いしてしまうかもしれませんね。

     料理で言うと、
    『食材を火の通りやすい大きさに切り、塩を適量かけ、中まで火が通れば完成』
    と言っているようなもので、元々料理のことを知っている人は分かるかもしれませんが初心者には説明不足です。

    なので、重心移動について細かく説明をしていきましょう」



    「まずは基本である座位から立位までの重心移動について説明します。
     この場合最も重心がかかっているのはお尻です。
     お尻が上がらないと立ち上がることができません。

     続いて重心がかかっているのが頭です。
     頭は体重の1割ほどの重さがあり5~6㎏くらいの重さです。
     ポイントはこの頭の位置です。

     この重たい頭が一番上にあるわけですから本来重心は不安定なはずです。そこを安定させるために頭を、身体の縦の中心軸の真上に据えるような姿勢をとります。

    立位であれば足の真上、座位であれば臀部の真上です。

    ということは頭の位置を動かせば重心は崩れるということになりますよね?」

    「つまり重心を横に移動させるというのは頭のことですか?」
    「半分正解です」



    頭部の移動をきっかけに重心全体が横移動する


    Fさんが続けます。
    「頭の移動はきっかけに過ぎません。
     例えば頭が前に移動すると、身体はその重さに耐えられず自然と前傾姿勢になります。
     これは脊椎が前傾し弓なりになっている状態です。
     カナエックスさんも自分でこの姿勢をとってみれば分かります。
     すでにお尻の後方が浮いているはずです」

    「あっ! 本当だ!」

    「脊椎の動きに連動し骨盤が前傾したからです。
     つまり重心が横に移動したわけです」

    「そういうことだったのか!」

    「このまま頭を前に前に動かしてみて下さい。
     頭が膝より前に出るくらいまで。
     すると最も重心がかかっていたお尻にはもうほとんど重さがかかっていないはずです。

     そこを我々が介添えし力を加えるとどうなりますか?」
    Fさんがわたしの両手を軽く引く。

    わたしは驚きました。
    「膝を基点に勝手に立ち上がりました!」

    「そうです。
     重心を横に移動させるというのはこういうことなんです。
     これならば必要最小限の力で立ち上がってもらうことが可能です」



    座位→立位の重心移動まとめ

    Fさんがこうまとめます。
    「今の動作は基本中の基本ですが、今後の全ての介助方法に応用が利きます。
     臥位の方にも活用できます。
     その時、その場面で重心がどうなっているかを見極め、その重心を移動させるにはどのように骨格にアプローチするか考えることが重要なんです。

     今回は重心である頭部が臀部の真上にある座位というシンプルなケースで説明しました。

     この場合は
    ①頭部を膝の方向へ誘導
    ②脊椎が弓なりになる
    ③脊椎の動きに連動し骨盤が前傾する
    ④臀部の重心が抜ける
    ⑤重心が膝よりも前方に移動する
    ⑥膝を基点に重心移動が起こる

    となります」


    確かにこの方法だと四肢麻痺の患者さんでも無理なく立ち上がらせることができるかもしれない。

    しかし関節が拘縮している方はどうなんだろう?
    例えば尖足(つま先が下を向いた状態で固まっていること)や膝関節が動かない人などは・・・? 

    Fさんに質問してみた。

    「結論として両足が地面に付かないと立位をとることはできません。
     下肢拘縮で関節が動かないケースも同様です。
     仮に立位がとれたとしても、その後の移動は非常に危険なものになります」

    Fさんの回答を聞き
    「やっぱりそうですか。
     となると結局1人で持ち上げるしか方法がないんですね」

    Fさんが呆れた表情でこう答える
    「カナエックスさんには聞こえのいい話ではないでしょうが・・・
     そういうケースの患者さんを1人で移乗しているのはあなたくらいのものですよ」

    「えっ!?」

    「男性スタッフがいない時は、2人もしくは3人で介助しています。
     それがそもそものルールなんです」

    「じゃあ僕の場合はなんで・・・?」

    ためらいながらFさんが答える
    「いいように利用されているからです」

    特別研修からまさかのF病院の闇に迫る展開になるとは思っていませんでしたが、この後わたしは自分の置かれている立場、そして看護師と看護助手の確執について知ることになるのです。



    カナエックス22歳のスペック

    ◆性別・・・男性
    ◆資格

    ・普通自動車運転免許
    ・ホームヘルパー2級
    ◆職歴
    ・マンガ家アシスタント
    ・交通誘導員
    ・居酒屋ホール&洗い場
    ・引っ越し作業員
    ・看護助手

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    介護事業を営みながら、介護の啓蒙を目的として創作活動をしております。 元漫画家アシスタント、講談社漫画賞受賞、人物画家、イラストレーターを経て介護マンガ「見習い介護士のミカちゃん」を制作しています。

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