陽炎に歪む景色の向こうにも
面影は探しあてられず
過去の熱は湯呑みの中の
揺らぎほどの手応えもない
冷え切った掌をあたため
触れるものの輪郭は
冬の手ざわり
指先はずっと
冬を焦がれていた
たよりなく一匹の蜻蛉
傷つき欠けた翅を震わせ
夏の終わりの黄ばんだ太陽を背負い
ひとすじに積乱雲に挑んでいく
はりつめた透明の薄ら氷
透きとおった翅は自らの熱にゆるみ
雷鳴に砕け散らされた
もう秋へと傾斜した
空から降りしきる夏の残骸
流れる季節に静かに漂う
ときの結晶
やがて雪のかけらとなって
りんりんと鳴りながら
私の底を白く照らせ