
痕跡を消す
空気清浄機とオゾン発生器を買うことにした。
前々から必要だろうなとうっすら思っていたのだが、ついに買ってしまうことにした。
俺は長年、猫と同居してきた。だからいわゆるペット臭という奴にもある程度慣れていたと思っていた。だが違った。ここ最近、色々あった結果家中のあちこちで強い臭いを感じることが増えた。
流石にこれは色々と良くないだろうと決心して、上の2台を買ってみることにした。空気清浄機はリビングに、オゾン発生器はキッチンに置いてみた。
効果はてきめんだった。
一瞬で部屋の空気が変わった。空気清浄機から吹き出してくる風は驚くほどに無臭で、部屋のにおいをあっという間に書き換えていった。そして、キッチンのオゾン発生器はそこに滞留していた生ごみ臭をすぐに始末してくれた。
そしてもう一つ気づいたことがある。何というか、脳が楽なのだ。多分、無意識の間に部屋のにおいに割いていた分の集中力を使わずに済むようになったからだろう。買ってよかった。
だが、何となく寂しさもある。
においというものは、生活と記憶に直結している。生きた痕跡と言ってもいい。だが、それがあまりにも強すぎれば、色々な意味で現在の生活に影響を及ぼす。時には強硬手段を使ってでもそれを消さないといけない場合だってある。しかしそれは、生きた痕跡を薄める行為でもある。
今は俺の膝の上に、そのにおいの主が丸まって鎮座しているからいいだろう。部屋を脱臭したところで、すぐにこの子が痕跡を残すことになる。
だがもしこの子がいなくなったら、きっと俺はその時、あの強烈な臭いすら懐かしく感じてしまうのだろう。