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辞めるか、言うか。迷っているうちに、どちらもできなくなっていた

    今の職場やチーム、あるいは長く使っているサービスについて、心のどこかで引っかかっていることはないだろうか。会議で決まる方針にどうも納得がいかない。担当しているプロジェクトの進め方に違和感がある。よく使っているアプリの新しい仕様が使いにくくなった。そのとき、あなたが取れる行動は、実はそれほど多くない。おおむね、二つに一つだ。黙って離れる(離脱)か、留まって声を上げる(発言)かのどちらかである。第三の道として「何もせず我慢し続ける」を選ぶ人も多いが、それは離脱と発言のどちらも先送りにしているだけで、いずれ限界が来る。

    多くの人は、この二択のどちらも選ばずに、ただ迷い続ける。転職サイトのブックマークを増やしながら、上司に不満を伝えることもしない。数ヶ月、数年とその状態が続くうちに、離脱するにはしがらみが大きくなりすぎ、発言するには「今さら」という気後れが強くなりすぎる。気づけば、辞める勇気も、言う勇気も、同時に失っていた。周りからは「あの人は特に不満なく働いている」ように見えているかもしれないが、本人の中では、二つの選択肢がどちらも静かに閉じていっただけだったりする。

    不思議なのは、離脱という選択肢が用意されている場所ほど、発言が起きにくくなることがある、という現象だ。すぐ辞められる環境ほど、かえって不満を我慢して黙って去る人が増え、組織の側は何が問題だったのかを知らないまま同じ失敗を繰り返す。逆に、簡単には離れられない事情がある人ほど、留まったまま声を上げるという、しんどいが建設的な道を選ばざるを得なくなる。転職市場が活発になり、副業や独立という選択肢が広がるほど、組織にとっては「辞めた理由」が見えにくくなるという、皮肉な副作用も起きやすくなる。この一見逆説的な関係を、半世紀近く前に理論として整理した経済学者がいる。

    このnoteが向いていない人

    • 不満があるなら黙って辞めるのが一番賢い、と最初から結論づけている人

    • 発言することの難しさより、離脱のしやすさばかりを重視したい人

    • 経済学の話は数式やグラフでないと読む気になれない人

    この記事で扱う3つのこと

    • 不満への反応が、なぜ離脱と発言という二つの型に整理できるのか

    • 離脱が簡単すぎると、発言そのものが育たなくなる仕組み

    • 自分の不満を、離脱と発言のどちらに振り分けるべきかを考える視点

    アルバート・ハーシュマンはどういう人だったか

     
     
    プログラマー・SE歴10年。PC・Excelのつまずきと、小さな店・ネット販売・イベント・ひとり仕事の「数が合わない」を、手順と記録表にして書いています。無料で最初の一手、有料で完全版。迷ったら固定表示のガイドへ。

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