メインコンテンツへスキップ
見出し画像
Photo byfairview_square

天声トラ語|永遠の33歳に捧ぐ

    1998年にとあるアーティストが亡くなった。当時の私はまだ子どもで、死という言葉は遠いものだった。テレビの向こうで、たくさんの人が泣いていて、花が溢れていていても。「何かが起きたんだな」とだけ小さく思っていた。

    あれから27年。私は彼の年齢を超えてしまった。あのときの彼より今の私のほうが年上だなんて。なんて理不尽な話だろう。あの笑顔も、髪の色も、ステージで暴れてた姿も。もう、それ以上にはならない。世界でただひとつの彫像みたいに、そのままだ。

    私といえば、疲れた顔で仕事して、寝て、起きて、また働いて。うまくいかないことばかりで、自分の才能も、未来も、時々信じられなくなる。それでも生きてる。息してるだけで、ちゃっかり年を重ねている。

    申し訳なく思うよ。彼と私の接点なんてひとつも無いけれど、私のような無価値がのうのうと生きて、才能があり皆から愛される彼が死んでしまったなんて…。

    なんて不公平なんだろう。だけど、この不公平の中で彼はまだ生きている。永遠に鳴り響いている。カセット。MD。CD。時代は何度も変わったけど、再生ボタンを押せば、いつでも彼の声がそこにいる。ずっとロックで、ずっと自由で、ずっと世界に向かって叫び続けてる。

    命は終わる。けれど、誰かの中で生き続ける命もある。あなたがこの世に存在したことを、私は一生忘れない。あなたが止まったあの年齢を、私は大切に抱きしめて、生きていく。


    (594文字)









    某新聞社の天声◯語をお借りして、603文字以内、6段という独特の語りをしています。

    hideはやんちゃな永遠の33歳。生きてれば還暦。カッコよかっただろうな。
    5/2に間に合わなかったのは愛が溢れすぎてしまったから。

    #天声トラ語

    前に戻る  |  次へ進む


     
     
    36歳プロ社畜。腰痛と四十肩。欲しいもの余白。 ダークファンタジーと恋愛、時々ホラー。 第三期サンクチュアリ出版正直レビュアー♡ 創作大賞2025中間選考通過/エブリスタRising Star選出/カクヨムコン11中間選考通過

    あなたへのおすすめ