
謎の魚屋がやってくる水曜日
我が家の裏側に、
大きな空き地が二つある。
正しく言うと空き地ではなく、
よそ様の使っていないだけの土地だ。
私は勝手に
「第一原っぱ」「第二原っぱ」と呼んでいる。
そんな原っぱに、最近謎の行列ができるようになった。
水曜日の昼になると、
車で人が集まり、
適当な場所から勝手に列を作る。
クーラーボックスを持って、
何かを待っている。
それは――
軽トラックでやってくる、謎の魚屋だ。
ランニング一丁に、タオルのはちまき姿。
これまた謎のおじちゃんが、魚を売りにくる。
雨の日も、風の日も、
水曜日にはいつの間にか商売を始めている。
しかも、よそ様の土地である。
どうやら生魚で、
刺身やら切り身やらを売っているらしい。
首にかけたタオルで、
手も拭くし、汗も拭くし、包丁も拭く。
私はちょっと色々と抵抗があり、
まだ一度も買ったことはない。
が――
どうやら美味しいらしく、
日に日に行列は長くなっていく。
「あーら奥さん、
ここの魚食べたら他の魚は食べられないわよ」
なんて声も、小耳に挟んだ。
その魚屋さん、もともとは
第二原っぱで営業していたのだが、
どうやらどこかの誰かが、
その土地を駐車場として借り上げたらしく、
そこでの販売ができなくなった。
すると――
ちゃっかり第一原っぱへ移動。
もちろん、お客さんの行列も
そのまま第一原っぱへ移動。
たくましい。
どこの誰かはいまだに謎のままだが、
行列はどんどん伸びていく。
近所の話好きの奥さんは、
いつも先頭に並び、
あちらこちらとベラベラお話をしている。
その光景を見るたびに、
「あ、今日は水曜日か」
と思うようになった。
ちゃんちゃん