
俺はどM
- 割引あり
私は度度、紅茶屋などにゆく。
度度とはなにか。執筆が行き詰まったらゆく。特段、行き詰まってなくともゆく。晴れていたらゆき晴れていなくともゆく。仕事をクビになってもゆくし、よく眠れたらゆく。尻にできものができてもゆくし、歯医者の予約が入っていても、これはすっぽかしてゆくのである。そう云った按配で、そんな私を、オーナーたる壮年の御夫婦は常時、愉快に迎え入れてくれる。嗚呼、親愛なる壮年の御夫婦たち。
さて、奥様の方はというと、とりあえず壮年である。それから、無類の犬好きでもある。一体どのくらい犬好きであるのか、という点について述べると、平常、絶えず犬の話をしている、と云った具合に犬好きである。するとどういう事になるのか。先ず、私が店に入る。「いらっしゃい」なんて上品な奥様はおっしゃる。すると私も負けじと「インド風ミルクティ」なんて渋い声で言ふ。奥様は「あい」とか短く言うた後、そこから三十分、自分と愛犬が最近どうか、と云う点についてごく詳細に教えてくれる。