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【#創作大賞2025#ファンタジー小説部門】マァァァァァム!15話

    14話はこちら

    次の村までかなりの距離……。そんな時に限って、野良オヤチャイやオチャカナの群れを見つけられない。もうすぐ備蓄用の干しオヤチャイがなくなりそうだ。内心の焦りを隠しながらボンは明るく振る舞う。

    「もう少しでダドのいる野戦病院だよ!」
    「マム、どうしてダドのいる病院は移動しちゃったのかな?」
    「怪我の人、大変だよね?」

    確かにそれはボンも不思議に思ってはいた。戦地でアグと一緒だったという男が、アグからの手紙と入院先の野戦病院の住所を伝えに来た時、ボンはすぐにそこに向かったのだ。しかし、ボンが到着した時、野戦病院があったとされる場所にけが人や病人は全くいなかった。

    「マムが行ったところは、仮の病院だったんだってさ。治療に必要な設備が整った病院に移ったと説明はあったんだけどさ……」

    そう子ども達に話をするが、ボンも納得がいってない。あの場所にいてくれれば、家族全員で旅などせず楽しく暮らしていただろうに。

    バキッ!

    「マァァァァァム!大切な荷車、なんで壊すの!」

    ユキに指摘され見てみると、荷車の持ち手がボンの手の中に。アグに怒りを感じた時に力が入ってしまったようだ。

    「ご、ごめん」
    「僕が直すけど、次の村できちんと修理してね」

    そう言いながらユキはさっと持ち手の修理をし始めた。

    「兄ちゃん……すげえ……」

    そんな兄をゾウは尊敬の念を込めて見つめている。

    4年くらい前まではユキが父親アグの手仕事をそういう風に見ていたな。

    ユキの器用さはアグ譲りだった。アグは手先が器用な男で、家の中のちょっとしたことを簡単に直してしまう。優しい性格同様、器用な面もボンは大好きだった。すっと寂しさがボンの心に入り込む。

    「クゥゥゥン」

    ペスが近寄ってきてボンの足を舐めた。幸い、子ども達はユキの修理に夢中でボンの気持ちには気づいていない。

    「ペスにはかなわないねぇ……」

    荷車のまわりにいる子ども達を眺めながらボンがペスを撫でていると……

    「誰だい!」

    ばっと後ろを振り向きファイティングポーズを取るボン。こんな人気ひとけのない場所で背後に立つ人間なんて野盗以外のなにものでも……すっと右足を後ろに引き、ボンは拳を繰り出す用意をする。ペスも小さな背中を逆立て「ウウウ……」と唸り声をあげた。

    「ちょ……ちょっと待ってくださいよぅ」

    背の高い男が慌てた様子で声をかけた。手を前に出し、自分は敵ではありませんとアピールするために、ブンブンと振っている。

    「野盗じゃないのかい?」
    「違いますってば!旅人です!」

    騒ぎを聞きつけた子ども達がわらわらとボンの側に走って来た。

    「お前!うちのマムは強いんだぜ!」

    ゾウが大声を出す。
    ユキは修理道具を構えている、が少し足が震えていた。
    サトはボンにしがみついている。
    ユタは「め!マムつおい!め!」と威嚇。

    その様子を見て、男は目を丸くし驚いた。

    「女性とお子さん4人!もしかして、あなたはボンさんですか?」
    「そうだけど?」

    いぶかしそうに男を見るボン。

    「アグさんの奥さんのボンさん?」
    「そうだよ!文句あるかい!!」

    何回も聞かれてプチンときたボンは瞬時に怒鳴り返したが、

    「え?なぜアグの名前を……?」

    とポカンとなった。

    「自己紹介が遅れました。僕はアグさんと同じ中隊にいたサクというものです。ご家族のことはアグさんから聞いていたので、もしやと思い……」
    「そうですか……」

    その答えにボンの警戒心が薄れる。

    「実はね、今、アグさんがいらっしゃる野戦病院に行くところで」
    「そうなんですか?私達もなんですよ!」

    弾む心を抑えきれず頬を紅潮させて叫ぶボン。

    「野戦病院が移転したと聞いて家族で夫を迎えに行くところなんです!」
    「それなら、僕もご一緒させてもらってもいいですか?」
    「ええ!えええ!大人の男性が一緒なら心強いですよ!」

    そう言って、喜ぶボンとは反対に、息子4人と1匹の表情は冴えなかった。

    「マァァァァァム……」

    16話に続く

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