
掌編小説 未開封の段ボール
「みてみて、これ何かなー?」シゲル9歳
目の前に置かれた箱は45×35×27.5の段ボール
【ひみつ】の貼り紙。
「何これ?」トウコ17歳
「楓が奥にかくしてた!」シゲル9歳
「へー【ひみつ】って何だろう?」トウコ17歳
「開けてみよー」シゲル9歳
「やめなよ」トウコ17歳
「なんでー?」シゲル9歳
「良くないよー趣味悪いよー」トウコ17歳
「やめときな!」ヘイスケ79歳
「なんだよーおじじー」シゲル9歳
「わしらの秘密かもしれん」ヘイスケ79歳
「えー」シゲル9歳 「いやだ~」トウコ17歳
「楓だけが、三人それぞれの秘密を知っとる」ヘイスケ79歳
「なにそれ~」シゲル9歳
「……」トウコ17歳
「シゲルのいたずらとか、トウコの好きな人とか」ヘイスケ79歳
「いたずらしてないもん」シゲル9歳
「学校にジャック持っていって大騒ぎになったでしょう」トウコ17歳
「ジャックに学校を見せたかったのッ!」シゲル9歳
「カエルに学校が分かるわけがないじゃない!」トウコ17歳
「まあまあ。とにかく、この中にはシゲル、トウコ、わしの……」
ヘイスケ79歳
「……」シゲル9歳 「え~やだ~」トウコ17歳
「だから、開けん方がいい。楓がどこかで見ている」ヘイスケ79歳
「かえで~出て来いよ~」シゲル9歳
「やめなよ~三人がいる時は、楓、出てこないよ~」トウコ17歳
「そうじゃ。楓は怒らせないほうがええ。わしら追い出される」
ヘイスケ79歳
「ん~ん~ん~がまんできない!あける~」シゲル9歳
「あ~」トウコ17歳 「だめじゃ~!きよちゃ~んの~」ヘイスケ79歳
バンと扉があく。
「楓、何を騒いでいるの。……あれ、何?この空箱」
「なんでもない」
「……【ひみつ】って。また、三人を脅かしているんでしょ」
「してない!」
「だめだよ~シゲルちゃん、可哀想」
「ママは、シゲルちゃん、ひいきしている」
「そんなことないよー。楓も、シゲルちゃんも、トウコちゃんも、ヘイスケさんも大好き」
「……」
「ここ、片付けて。おやつ食べよう」
「おやつなに?」
「隣の、きよおばあちゃんから、もらったプリンだよー」
「……片付けて、すぐいく」
「早くね」
バンと扉が閉まる。
空箱のガムテープを綺麗にはりなおした。
【ひみつ】の貼り紙を丁寧にはがした。
【クーデター】と赤のクレヨンで書く。 楓5歳。
カタカナは覚えたて。
―了―
こちらの作品は
#拝啓文芸部の企画
#未開封の段ボールに
参加させていただきました。
―最後まで読んでいただき、
ありがとうございました―
画像:vector_corp - Magnific