
夜は夜もすがら泣き悲しんでも
私は生きちゃってるのよ
生きているんじゃないの
生きちゃっているだけよ
少女はふとつぶやいて
さみしそうに微笑んだ
ほんとうは仲良くしたかった
ほんとうはケンカはイヤだった
ほんとうは楽しく過ごしたかった
ほんとうは親ともわかりあいたかった
ほんとうはともだちだってほしかった
ほんとうはやる気だって出したかった
ほんとうはあの学校にも行きたかった
ほんとうは….
ほんとうは….
私は襟を正しそっと耳を澄ませていた
少女のたくさんのほんとうのキモチに
彼女はおとな達に飼い慣らされて来た
問わず語りの彼女の遥かなる絵巻物語
その涙
その痛み
その苦しみ
そのせつなさ
その寄る辺なさ
この私には何ひとつ
ほんとうにはわかりはしないのに
涙も枯れ果てて生きちゃっているそんなひとに
この私風情がいったい何をしてあげられようか
この私風情がいったいどんな誠意を示せようか
深々とした闇で塗りつぶされて来たこのひとに
この私が届けられるたったひとつのまごころは
彼女の紡ぐパノラマに耳をそばだてて聴くこと
血の通った人間として彼女の命の証となること
そのとき私は色あせコトバを失って
魂の慟哭の叫びさえ胸に秘めながら
ひたすらひたすら聴かせていただく
生きちゃっているその涙を偲びつつ
少女から漂う深い闇の世界の果てに
彼女の人生の新しい朝陽が昇るよう
例え夜は夜もすがら泣き悲しんでも
朝日とともによろこびが来るように
私は切に祈りながら
真心こめて聴きながら
彼女のいのちが芽吹くよう
天が御業を現すときをじっと待つ
そう、私は天にゆだねて祈りながら
彼女が倖せを見出すまで待ち続ける
