メインコンテンツへスキップ
見出し画像

ショートショート てるてる坊主のラブレター

     雨男がいました。彼の周りには雨が降るのです。

     雨男の家族もまた雨男。一家は引っ越しをしてばかり。一度、雨男が駄々をこねて同じ街に止まったことがあります。5日間雨が降り続き、6日めの朝に川から水が溢れました。家族は大急ぎで街を出ました。ごめんなさいごめんなさいと謝りながら。

    「ヨーゼフ?」
     ある日雨男を呼ぶ人がいました。ひとりの女性でした。雨男にはすぐにわかりました。昔、洪水の街にいた少女です。彼女といたくて、雨男は駄々をこねたのでした。

    「生きてたのね」
     女性が言いました。それからカフェでいろんな話をしました。『川の水かさが増したぞ』どこかで声がしました。

    「長居をしたね」
     雨男は寂しそうに笑いました。ポケットから何か取り出して女性に渡しました。小さく手を振り、店を出て行きました。

     雲間に光がさしました。女性の手にはてるてる坊主がありました。
    「君の笑顔が永遠に曇ることがないように」
     街を背にした雨男が呟きました。

    ショートショート No.715

    たらはかにさんの毎週ショートショートnoteに参加しています。
    今週のお題は「てるてる坊主のラブレター」です。

    先週のお題は「祈願上手」。小粋でポップなヒスイさんも書いています!

    実は私が神社やお寺で他人の祈願しかしないのは「自分は運が悪い人間だ」って、人生経験上、いやというほど知っているからだったりするんですよね。勝負要素に運が入ると高確率で負けるんです。だから、お願い分は他人にあげちゃった方が効率がいいと思ってる。そうやって、自分の特性に沿って生きていくのが人生よなあ、なんてことを思ったりしています。

     
     
    小説(ショートショート)を書いています。オンライン文芸コミュニティhoshiboshi運営スタッフ(星々ラジオ担当)。

    あなたへのおすすめ