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売れない作品がファイナリストになった

    メールが来た。英語なので読めない。
    『KADOKAWA ワールドマンガコンテスト』ファイナリストだと書いてあるようだ。カドカワのコンペには確かに出した。でも日本語で出したよ。
    なぜ英語でメールが来るのか?新手の詐欺か?

    サイトを確認したら、本当だったわ。

    KADOKAWA ワールドマンガコンテスト
    世界118の国と地域から合計1,959作品。最終選考通過は300作品だそうだ。

    ページ下の『最終選考作品』を開いて、自分の作品を探す。
    ……英語タイトルばっかりだな…

    あった!『天才の育て方』

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    嬉しいので証拠を残す🤣

    かなり下の方。応募順らしい。気を使ってるな。
    応募したこと自体、忘れてたよ。
    どうせ今回も…と思ったんだよね。

    この作品はお気に入りだけど、漫画出版社への持込では
    『もっとエンタメして』
    『うちの商業誌に合わない』

    否定評価強めの作品だったから。

    売れない作品は意味がない?

    なんのために描くのか?読者の為?読者とは誰?

    持込して、商業で売れないと判断されている。
    今のわたしの感覚だと、『売れない作品は意味がない』。
    刷り込まれてるように感じる。その価値観に対しては否定はしないし、そりゃ売れた方がいいよ!創作で生活できるようになりたい。

    でも、売れそうにないのに、作品としてはちょっと評価されたってどういうこと?読んだ審査員…一人だけちょっと引っかかったのかな?

    いただいた英語メールには、
    「We were highly impressed by your creativity, storytelling, and artistic skill.」

    あなたの創造性、ストーリーテリング、そして芸術的な技術に、私たちは大変感銘を受けました。

    褒め言葉の定型文ですね。
    でも、定型文はチョイスするもの。絵が突出してる作家にストーリーがいいね、とは言わないと思う。だから、この定型文の選びは、わたしには意味がある。

    「クリエイティブ」と「ストーリー」。
    これをまず評価対象にしていただいた!
    わたしはとても嬉しいのです。

    絵画と物語と映画

    私は長く、絵画で古典技法研究をしてきた人間です。
    「物語断ち」をして、絵を描く時間を捻出した。
    しかし、20年近く経って方向性に疑問を感じ、「物語断ち」を辞めました。
    乾いた喉に水をむさぼるように映画を観だしました。映画は物語と絵のコラボじゃないですか!
    美しく、笑えて、考えることもできる。
    最高です!
    物語を断っていた分だけ感動が大きいのかもしれません。なんでこんな面白いの!?

    物語を描きたい。
    物語と絵。
    それで、絵本や漫画に転向しました。
    しかし「物語作り」の苦手意識がずっとあった。
    最初は『風景とか水彩は上手いけど、物語は良くわからないね』
    こういう評価でした。
    だからこそ、今回の「物語いいね」評価は嬉しいのです!

    『エンタメ』概念は見えない敵

    物語作りに手ごたえを感じるようになってから、ときどき漫画編集部に持込しています。 毎回言われるのは、
    『話はわかりやすい』
    『絵は今風じゃないね』
    しかしなによりも 『もっと商業エンタメしなきゃね』。

    これがツライ。
    『エンタメ』って何じゃ!?

    『エンタメ』とは、話のわかりやすさじゃなくて、その先の読者の求めるもの。見ることで読者は楽しみたい。それを提供する。
    それは、求めるものの価値観を共有し、共通の文化を持つことだと思ったのです。

    以前、youtubeでアクセス数いいね数が多い動画がありました。
    しかし、わたしには面白さがぜんぜんわからないのです。
    なんでだろう?

    その動画、実は外国のテレビの大スターのものだったんですね。
    わたしは彼をぜんぜん知らなかった。そのバックボーンとキャラの性格、話の展開の要素がわからないと、その動画の面白さはわからないのです。

     漫画エンタメ文化にも、そういう共通認識があると思います。
    しかし、わたしにはその素養がない。
    テレビをぜんぜん見ていなかったわたしは、今でもテレビのバラエティがわからない。 編集部が言うエンタメが馴染まないのは、こういう共通認識が欠如してるからかもしれない。 

    努力しようとはしてるのですが。
    努力すると言う時点で、興味がないのがありあり。 
    ないのにあるとかいう変な文章だな、とにかく非常に困った。

    映画もハリウッドはぜんぜん見ていない。EU映画や古い映画ばかり見てる。 音楽はクラシック、もっと古いバロック。
    描く作品も、下知識がないと面白がれないような外国歴史もの。
    これが今のわたしが面白いと思うものだけど、価値観超マイノリティだなと。

    じゃあ、エンタメとして売れない作品は、編集部に見せる意味はない?
     
    作るのは勝手です。
    好きな作品を作りたければ、同人作家になればいい。
    じゃ、そうしよう。
    でも作品を作ったら、大勢の人に見て欲しいな。
    でもでも、エンタメじゃないから、見てもらう価値はない。

    こんなループに陥ったわたし。
    疲れていたのかもしれない。

    彼らの文化圏に入れない。
    だからわたしの作品は、大勢の人に見せる価値はない。そんなループ。

    先ほどのKADOKAWAワールドマンガコンテストに応募してみようと思ったのは、こんな気持ちでした。
    このコンクールは、エンタメの価値基準が、少し違うのではないかと。

    ファイナリストという言葉、ティトゥスへ

    メールが来た時の第一印象は、英語の、

    After careful review by our judges and editorial team, your work "天才の育て方" was selected as a finalist in the competition.

    あなたはファイナリストに選ばれました!!

    おぉ、なんかカッコよくないですか?
    ファイナリストなんて言葉、ショパンコンクールみたいだよ!

    日本語だと、「あなたの作品は最終選考作品に残りました」ですが、英語だと、「受賞はしなかったけど、あなたはファイナリスト、誇っていいのよ!」的な。もう、すごくいい気分になってしまいました。

    わたしはファイナリスト!
    物語が評価されたこと、
    違う文化圏ではエンタメとして成立できてるのではないかという妄想たぎって、これはやる気出ちゃうですよ!

    いま、ショパンよりも更にマイナーな、ショパンの友だちをテーマに描いてます。
    19世紀ポーランドの、農奴制、領主と農民の可能性を調べながら、こんな時代があって今に繋がるんだ~~とかうなりながら。でも、わたしが描きたいのは時代背景の説明じゃなくて、この時代のこの人はこんなことを考えていたのではないかという再解釈。
    きっと共通文化圏の人はほとんどいない。
    わかるわかる~っていう共感は得られない。

    …いや、違うな。
    少し、います。
    いるよ。いる!
    忘れちゃダメ!

    コメント欄にひとことふたこと、感想くれる方に対して、わたしはとても大事なものを受け取ってる。
    ありがとう!いつも勇気づけられてるんだよ!

    その、数は少なくても、少しだけでも興味を持ってくださる人に向けて、わたしはやっぱり描きたいなと。
    疎外感ばかり感じたとしても、それもまたなにか意味もあるのではないかと。逆に、価値観ど真ん中にいて有利に見える人でも、その価値観への疑問が生まれないという危うさはあるわけで。

    評価されることでしか、自分を評価できない脆弱さもありますが、素直に今回は喜ぼうと思います。

    読んで下さった方には多大な感謝を。
    ファイナリストに残してくださった審査員の方も。
    最後まで読んで下さってありがとうございます。

    ありがとうございますー!


    ファイナリスト!『天才の育て方』

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